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ワタシ死ねないみたいです。あと○○になる方法、探してます。  作者: マナマナ


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写真。撮っていい?

 放課後。

 いよいよ部活を決めるための私の旅が始まろうとしている。


「また遊びに来てね」

 今井さんはそう言うと部活に行ってしまった。

 さて、どこから廻ろうかな?


「拓哉ってもう出たんだ」

 ひとこと言って旅に出ようと思ったのに何も言わずに行くなんて酷くない?

 どうせ後で顔を会わせるけどさ。


 とりあえず帰り支度は後回しにして体一つで教室を後にした。

 廊下を歩いても玄関ホールを通り過ぎても窓から校庭を見ても、どこもかしこも賑わっていた。みんな部活を楽しんでいる。そんな中、私一人がみんなから取り残されているみたい。私だけみんなと空気が違う。

 でも。

 私は今を変えるためにこうしている。先ずはどこから見ようかな。足は自然と校庭を目指していた。


「拓哉。見に来たよ」

 拓哉はボールを倉庫から出しているところだった。

「早いな。まだ練習の準備中だが」

「うん。早い方がいいかなって。だって練習始まったら話とかできないし」

「まあ、そういうこともあるかもしれないけど、俺達はまず基礎訓練して後は先輩の指示で動くからな。それより他は見てみたのか?」

「お昼の時に写真部だけ。放課後はここが一番乗り」

「そっか。一応部長にはお前のこと伝えてあるから、え〜と、ゴールポストのところにいる人がそうだ」

「ああ、あの人ね。分かった。ちょっと挨拶してくるね」

 拓哉は『ああ』とだけ答えて再び準備に戻る。私は部長を目指して歩き出す。


 この場所はサッカー部専用になっていて一面緑色の芝が整備されている。そんな中を歩くと芝の柔らかさが靴の底から伝わってくる。足音なんてほとんどしない。


「あの、見学に来た一年の相楽です」

 お邪魔にならないように自己紹介。

「前に来たことあったな。日下部から聞いてる。マネージャー候補。しばらくそこにあるベンチに座って見ているといい。俺は部長の湯浅だ。よろしく」

「はい。よろしくお願いします」

 部長さんは拓哉より背が高い。それに良く日焼けしている。短い髪はほとんど坊主頭に近い。あと頭の形がいいなぁ。なんて思ってみていると


「今日はウチのマネージャー、休みだから詳しくは説明できないが引き受けてくれるとありがたい」

 ずっと他の部員の動きを見ているせいか表情が固い。練習の邪魔になっちゃいけないよね。

「結論はまだできませんけど、見させてもらいます」

 お辞儀をしてベンチに腰掛けた。木製のベンチはゴールポストの裏にあってそこからグラウンドがよく見える。それにいろいろな声も聞こえる。ここあるのは青春という一度しか通過しない貴重な時間だ。私もその中に入ることができるのだろうか。


 空は雲一つない青色。時折吹く風はまだ冷たい。けれど運動部の人達には心地良いんだろうな。

 正直私にマネージャーなんてできるのかな?

 なんてこと思っていると拓哉達一年生はグラウンドの周りをジョギングし始めていた。なんとなく分かる。前の私も同じように走っていたんだろうな。そんな光景が記憶の中に垣間見えた。


 練習メニューが本格的に始まると学年関係なく同じように練習してゆく。

 たまに私の足元にこぼれ玉が来ると手で投げ返したりもした。ホントは蹴った方がいいんだろうけどこの間のこともあるけど今は制服。スカートだよ。転んだりなんて絶対にできない。


 練習風景を見ていると、なんだろう・・・どこか懐かしく感じる。それって前の私の記憶が懐かしがっているんだと思う。そう感じると前の私は私のどこかで静かに息づいているって実感があるし、彼女の呼吸だって聞こえる。今は眠っているようのとても静かだけど。


 水休憩になると時拓哉が私の元にやって来た。

「どうだ?」

「どうって・・まだ決められないよ。あのさ」

 拓哉は水筒を傾けながら私のことを見る。

「見てたらさ・・・なんか懐かしく思った。私、ホントはサッカーやりたいのかな」

 思っていることを正直に答えた。拓哉は特に表情をかえることなく

「そっか」

 とだけ簡単に答える。


 今はそれ以上の言葉は私には見つからない。懐かしいって思ってもこの感情は今の私の本当の気持ちじゃないから。拓哉もそのこと分ってくれているみたいに何も言わなかった。

「私、そろそろ行くね。他も見たいし」

「そっか。分った。結果はどうあれ後で連絡してくれ」

「うん。分かった。それじゃ」

 私は拓哉に手を振ってから部長さんにも同じような挨拶してグラウンドを後にした。


※※※※※※


 下校時刻になる。

 教室に戻って帰り支度していた頃には正直疲れのピークに達していた。


 どの部も魅力はそれなりにあるけれど、ここだ、っていう決定打がない。

 みんな見学には熱烈歓迎でいろいろな説明もしてくれた。おかげで全部どころか三分の一も廻れていない。


 今は私一人だけ。目を閉じて静かにゆっくりと深呼吸してから再び目を開ける。


 静か過ぎる誰もいない教室って別の世界にいるみたいに感じる。

 でも不思議と嫌いではない。むしろ懐かしさすら感じているとドアが急に開いた。ちょっとビックリ。


「あ、相楽さんだ。まだいたんだ」

「今井さん?・・・今井さんこそどうして?」

「うん。ちょっと忘れ物して。部活も終わってもう帰るところだけどね」

 机からポーチを出すと今度は私の正面に立つ。

「なんか疲れた顔してる。部活、全部見れたの?」

「まあ、そうかも。全部なんて一日じゃ無理。それに見てきた部もなかなか決め手がなくて」

 

 言われて気付いた。

 自分の疲れた顔なんて想像できないし見たくもないけど・・・でもどんな顔しているかは気になる。


「じゃあ相楽さんもこれから帰りだ。ねえ相楽さんの家ってどこら辺なの?」

「私んちはここから歩いて十五分くらいかな。今井さんは?」

「うわ〜近くていいなあ。私、電車通学だから。ここから三十分はかかるんだ」


 教室の中にも夕焼けの色が入ってくる。赤に近いオレンジ色。

 教室もだけど私も今井さんも同じようにオレンジ色にいつしか染まっていた。


 今井さんは私のことをじっと見ている。そしてカバンからカメラを出して

「ねえ、相楽のこと写真撮ってもいいかな?」

 そう言ってレンズのカバーを外す。これってもう撮るつもり満々だよね。


「急に?なんで?」

 今は疲れた顔している。そんな顔・・・写真なんて・・・困っていると


「今の相楽さん夕陽に染まってキレイだなって思ったから。早くしないと夕焼け終わっちゃう」

 今度は実際にカメラを向ける。ちょっと待って。せめて鏡くらい見せてよ。


「撮って気に入らなかったら廃棄するってことでどう?お願い、相楽さん」

 なんでそんなに撮りたいのかな?でも・・・私は絶対駄目な理由が思いつかない。こんなにお願いされているのに拒否したら失礼になるのかな?


「・・・じゃあ・・一枚だけなら・・」

「やった。ありがとう。それじゃ早速。相楽さんこっち向いて」

 カメラのレンズに視線を合わせる。でもさ、どんな顔したらいいのかな?

「あ、あんまり表情作らないで。力を抜いて」

「それだと笑顔じゃないし、ホント疲れた顔してる。そんなの私、嫌だな」

「いいのいいの。それが。無理に作った表情の方が絶対後悔するって」


 そんなものなのかな?

 今井さんがそう言うならそれでもいいような気持ちになってくる。

 そう思うのは今の夕焼けのせいなのかもね。それに一枚だけって約束だし。

 あと、早く帰りたいって気持ちもあった。


 私は無駄な力は抜いて今の私の気持ちのまま顔をレンズに向けた。


「いいね。じゃいくよ」


 シャッターの音だけが教室に響いた後にはもう夕陽は色を変えていた。夜が始まる。


「ありがとう相楽さん。時間取らせて。現像まで時間掛かるからできたら言うね」

「ううん。そんなことないよ。うん。楽しみにしてる」


 下校時刻を知らせるチャイムが校内に響き渡る。


「帰ろっか。そうだ、朝言ったこと覚えてる?」

「私のこと。でしょ。そんなにたくさん喋れることないと思うけど」

「まあ、私の好奇心。周りに相楽さんみたいな経験をした人いないし。ちょっと珍しいって。でもさ、ホント断ってもらっていいからね」

 今思ったけど、今井さんってなかなか押しの強い人だよね。なのに強引な感じは受けない。こういうのって人柄って言うのかな、やっぱ。


「まあ、答えられないこともあるし、答えたくないこともある。それでも良ければ」

 私にだって答えることができること、できないこと、言いたくないこと、それがあまりにも混沌としている。それでも今井さんはもの凄く喜んで

「ありがとう。ねえ時間ある?少しお茶していかない?お茶一杯分だけ。そしたらもう聞きたいなんて言わないから」

 そんな時間でいいの?だったら

「いいよ。私も甘いもの食べたいって思ってたんだ」


 私達はすっかり暗くなった教室を後にした。他にもまだ生徒はチラホラといたけれどみんな下校するところだ。校門には用務員さんがいて門を閉めるタイミングを見極めていた。

 空を見上げると半分以上姿を隠している月が浮かんでいた。


 ・・・・あと少しで新月がやって来る


 また私は自分の知らない記憶の中を彷徨うことになるのだろうか・・・


 今はまだ推測の中。知りたいの?知りたくないの?もちろん知りたいに決まっている。


「どうしたの?月?」

「・・・うん。あと少しで新月なんだって」

「新月?相楽さんって月のこと詳しいんだ」

「詳しいとかじゃなくて・・・今はなんか気になる存在ってだけ。自分でもよく分らないけど・・・」


 ふと言った言葉に今井さんの興味はさらに引き上げられたようだ。そんなキラキラした目で見ても私には何も答えられないのに。


「ねえ、そのことも聞きたいな」

 やっぱり。もしかして誰かに聞いてもらったら少しはスッキリするのかな?


「そうだね・・・ねえ、どこに行くの?」

「駅前に可愛いカフェあるんだ。割とお気に入り」

「当然甘いものあるよね」

「もちろん。いろいろ実食済。今なら季節のパフェか季節のパンケーキかな、オススメは」

「どっちも『季節の』ってつくんだ」

「だってその方が美味しそうでしょ」

「確かに。いいよ。行こっか」


 季節のスイーツ。なんかテンション上がってきた。私の足が早くなると

「待ってよ相楽さん」

 今井さんはまた私の腕を掴む。やっぱりこれって拉致だって。

 でも今はなんだか心地良く感じていた。

寒い朝が続く今日この頃です。

読んでいただきありがとうございます。

一段と冷えた朝を迎えています。

こうなると朝ご飯は温かいではなく熱いものが欲しくなります。

なので最近はお茶漬けなどが多いです。

普段はパンなのですがトーストはすぐ冷える。

しかし。冬も終わりが近いと感慨深いです。

もう少し冬を楽しもう。散歩に行ってきます。

次回もよろしくお願いします。

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