いろいろな月が私を悩ませる
夜遅く。
そろそろ寝ようと思っていたところに元から連絡があった。
『今日は知り合えて良かった。試合も勝った。サンキュー』
『そうなんだ。良かったね。またこっち来たら遊ぼうよ』
と返信。
『ああ。拓哉にもよろしく。じゃまた』
『うん。伝えとく。じゃまた。おやすみ』
スマホを置いて窓を見る。
お風呂上がりの顔がガラスに映っている。見ていてあらためて思う。
私は私に生まれて本当に満足しているってことに。いろいろ問題あるけど今という貴重な時間をそんなことで悩みたくはない。時間はどんどん流れてゆく。体力だって美貌だって今が最高潮なんだろうな。
最近。お母さんが化粧しているの見ていると私なりに一つの結論が見えてくる。これがきっと化粧という行為の最終形態なのかもしれない。
女の人にとって化粧は自分を美しく飾るもの。
なのに年を追うごとに美しさではなく若さを求めている。それってつまり『若さイコール美』という公式が出来上がっているよね。
あまり若過ぎると幼い感じもする。だから高校生の今がやっぱり最強だと思う。
人によってはもうちょっと上なんていう意見もあるかもしれない。でもそれって本人の基準が全てだよね。幼過ぎず大人過ぎず。そう考えると今が一番輝いているよね、私。
微笑んでいる自分の顔に正直メロメロなのはそれだけ今が充実しているということ。
ちょっと変なのかな?ううん、そんなことないよね。
女の子はみんな自分の顔好きだよね。だからメイクだって髪型だってこだわるんだ。
私のこと可愛いって言ってくれる人がいることも遠巻きに耳に届いている。
これってさ、自信持ってもいいよね。
外見は神様に感謝するとして、さらなる充実を求めるのなら内面を磨くことなのかな。
だったら何をしたらいい?
勉強?勉強を頑張って将来なりたい職業に就く?
でも今の私はまだそこまでの人生設計はない。なら何をしたらいい?
映っている自分に聞いてみる。じっと見ていると
「・・・部活」
そうか。部活か。
未だ帰宅部の私は家に帰っても特にやることがない。習い事もしていないし、塾にだって通っていない。
これって端から見たらボッチじゃん。時間を無為に消費しているに過ぎない。
そんなのは嫌だ。私自身が輝いていない。
「よし」
私は私に向かって誓いを立てる。拓哉だって元だって部活やってるんだ。私だってやりたいこと一つくらいあるよね。明日になったらいろいろ見て回ろう。
一つ目標が決まると大きな欠伸が出た。
そろそろ寝よっかな。目を擦りながらベッドに向かおうと振り向いた瞬間
「え?」
急に誰かに肩を引っ張られるようにまたガラスに引き寄せられた。
「な、なに?・・・なんなの?」
手の感触が確かに肩に残っている。部屋の空気が急に重くなる。怖い・・・誰が・・誰かいるの?
見回した。自分の見える所全部。
部屋には私しかいない。全身が小さく震え始める。髪の毛もだが全部の毛が逆立っているように感じる。肌がピリピリとして落ち着かない。肌の表面はサブイボが展開している。おまけに背筋には寒気まで感じてくる。
私は次に備える必要がある。何がある?何が出てくる?呼吸の音も聞こえないくらい神経を集中する。
どれくらいこうしていた?5分かもしれないし1時間かもしれない。
時間の感覚が狂っている。廻る、廻る、時間が廻る。
・・・・ビシ!
「え?」
自分が映っている窓ガラスが急にそんな音を立てる。同時にヒビが入る。
「え?」
それ以上言葉が出てこない。なんで割れた?誰か石でも投げたの?でも誰が?
・・・『あなたは誰?』
声というよりは心に直接話し掛けられている。
・・・『返して』
返して?何を?それって・・・まさか。この身体のこと?
・・・『私の身体』
急になんなの?この身体は私のモノ。あなたこそ誰なの?
・・・『私は私』
私だって私なの・・・・もしかして・・・・・・・・・・前の私?
・・・『私のモノ』
そんなこと・・・そんなこと急に言われても・・・・・・・じゃあ私は誰なの?
身体は金縛りにでもあったみたいに動くことができない。
目の前にはヒビの入ったガラスに映った私の顔。
・・・・・・・なんか違う。私はそんな表情していない。
ちょっとの困惑と理解出来ない怒り。そんな気持ちが入り交じったような顔。
だって今の私は絶対に困惑と恐怖の表情のはずだから。
やがて映った私の瞳の色が変わってゆく。青くなってゆく。それは月明りのせいなのか?
確か今日は半月のはず。月がちょうど半分になる夜。
光と影の境界が同時に浮かんでいる。
『私は・・・・・・まだ・・・不完全な・・・刻が来たら出て行って・・・半月・・・話せる・・・・・・眠りに就く・・・・・おやすみ・・・み・・う・・・』
一筋の汗が頬を伝う。
何も言えないまま金縛りは急に解ける。そのまま私はその場に座り込んでしまった。
「・・・・・・動ける」
怖いけどもう一度立ち上がる。さっきのが前の私の意識なら今度はこっちから聞きたいことある。
「あれ?・・・ない」
あんなに激しく入ったヒビがどこにもなかった。手で触ってみても痕跡すら一切なかった。
夢?
ううん。そんなことない。もう一度自分の顔を覗き込む。映っているのは今の私の顔。瞳の色だって青なんかじゃない。
しばらく見ていても何も変化が起こらない。
「・・・半月」
また一つ気になることが増えた。満月・・そして半月・・・もしかして新月も何かあるのだろうか?
カレンダーを見る。あと一週間で新月がやってくる。一応身構えていた方がいいのかもしれない。
カレンダーに赤ペンで大きく丸で囲う。
私の周りには分からないことだらけ・・・でも本当は私が私自身のことを分かっていない。
そんな想いが頭の中を駆け巡っていた。
ふと思う。自分にとって特別ってなんだろう。
読んでいただきありがとうございます。
書くことも好きですが、小説読むことも好きな私です。
やっぱり好きなことをしている時が特別なことなのかな。
好きな人と一緒にいることだって特別だと。
人生って特別の塊なのでは?
今こうして投稿していることも私には特別なこと。
皆さまに読んでもらえることも特別なこと。
あ。キリがありませんね。
次も私の特別に付き合ってもらえたら嬉しいです。




