表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワタシ死ねないみたいです。あと○○になる方法、探してます。  作者: マナマナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/36

あの日

 相楽が元気になったことであの日のことは封印したつもりでいた。

 なのに天文台の一件で鮮明に思い出してしまった。


 本当に北風が強い日だった。時間の感覚が狂いそうになる程。


 空は暗く雲は低く垂れ込めていた。やがて誰もが予想したように雪が舞い始めた。


そんな時だった。相楽から連絡が入ってきたのは・・・


『天文台で待っている』


 たった一言。なんでそんなところに?


 確か。一回家に戻ってそれからまた具合が悪くなって再び入院したということを担任の沢渡先生から聞いたばかりだった。

 相楽の噂はかなり広まっていた。それは誰が聞いても信じたくない内容だった。信じたくない。でも実際学校に長い間来ていないことが確信として後押ししてくる。会いに行きたかった。俺に出来ることがあるとは思えないけど、傍にいてやりたかった。

 でも面会はできなかった。他人に伝染るような病気じゃないことは分かっていたが相楽自身が拒否をしていた。


「どういうことだよ・・・」


 簡単に返信をして支度を始めたところで今度は電話が鳴った。

「もしもし。・・・先生?何の用ですか?急いでるんですけど」

 沢渡先生からだった。

「日下部。相楽のこと何か知っているか?」

 先生の声は少し緊張しているように感じた。

「相楽がどうかしたんですか?今アイツから連絡が来てこれから出掛けるところです」

「本当か?場所はどこだ?」

「天文台です」

「分かった。俺も今から向かう。相楽が病院から抜け出したと両親から連絡をもらった。お前の方が先に着くだろうから相楽に病院に戻るように言ってくれ」

「わ、分かりました。アイツ・・・何で・・・」

 先生の方が先に電話を切った。俺は急いで家を後にして全力で天文台まで走った。


 風が強くて冷たくて肌が切り刻まれそうなくらい痛い。それでも俺は走った。体温を奪われる方が早くて身体は一向に温まる様子はない。肺に吸い込む空気にむせ返りそうになった。


 天文台の麓まで来てようやく身体が温まってきた。後はここを登れば相楽が待っている。こんなところで一体何やってんだよ。みんなに迷惑かけてよ・・・・・


 雪の強さはさらに増している。ほとんど横殴りに近い。雪の粒が顔に容赦なく当たるし視界も良くない。それでも一歩一歩俺は登ってゆく。

分かっていたことだが天文台の天辺には人の姿なんてなかった。相楽は本当にいるのだろうか。


「おい。相楽」


「来たぞ。どこだ?」


 自分の声が風で掻き消されてしまわないように限りなく大きな声で叫んでみた。右側、左側、自分を中心として全方向に向けて声を張り上げて相楽のことを呼んだ。


「・・・ホントにいんのかよ。聞こえてんならいい加減出て来い」


 そうしている内に先生がやって来た。その後ろには相楽の両親の姿もあった。


「日下部、相楽はどこだ?」

「先生・・・おじさん、おばさん・・さっきから呼んでいるんですけど返事がなくて」


 しばらくみんなで相楽のことを呼ぶ。そんな時雪と風が弱くなって静寂が辺りを包んだ。



 ・・・「拓哉」・・・・・・



「相楽!どこだ」

「待ってたよ」

 声の方を見ると相楽の姿があった。それは街を一番見渡すことの出来る欄干の上だった。

「お前・・・危ないだろ。そこから降りるんだ、いや、そこまで行く。だから動くな」

「どっちなんだよ。でも待ってる。動くのしんどいから」

 欄干の先は崖になっている。いくらなんでもそんなところから落ちたら怪我では済まないはずだ。こんなことして何になる。みんな悲しむだけじゃないか。

「ああ、今行く。動くなよ。俺に任せて下さい」


 先生と両親はその場で待ってもらって俺はゆっくりと歩き出す。さっきまでとは違って今は自分の足音がはっきりと聞こえる。薄らと積もった雪と砂利の混ざったような音が響く。


 あと10歩で相楽の身体に触れる。


「ストップ。拓哉、それ以上は来るな」

「お、お前、ふざけてんのか」

「ううん。至って真面目。ここからなら拓哉にしか聞こえない。だから動くな。もし動いたら落っこちちゃうかもしれない」

「悪い冗談はよせ」

「言ったよな。真面目だって。冗談言うために呼んだんじゃない」

 相楽の瞳は真っ直ぐ俺だけを見ている。それが冗談ではないことはすぐに分かった。なんたって俺達は幼馴染みなんだからな。ちょっとした仕草で分かる。


「それで?何を聞かせてくれるんだ?」


 俺はいつでも飛び出せるように身体を緊張させて相楽の言葉を待った。病院を抜け出したのは相楽の着ている服で分かる。病院の入院着。色は白くてそれが悪い方に考えを巡らせる。


「ホントはとびっきりの服を用意していたんだけど生憎家にあるんだ。戻る余裕なかったから仕方なくこの格好のままなんだ」

 よく見ると裸足だ。

「お前、寒くないのか?」

「寒い?そうかもね。でもそんなこと今は関係ないよ」

「なら早くしろ。そして帰ろう」

「どこに?」

「どこって病院だろ」

「戻らないよ」

 相楽の位置が少し後ろに下がったように見える。それは俺が少し動いたせいなのか?あくまでも今の距離は取るという証みたいに。


 再び風が吹き始める。合わせるように雪も混ざってお互いの顔を見え難くさせた。。


「また声が聞こえなくなると嫌だから」

 相楽は大きく深呼吸して

「拓哉・・・初めて会った時から感じていたんだ。お前とはずっとこのまま死ぬまで一緒にいるんだって。もっともっと近づきたくて俺は俺になったんだ」

 そこまで一息で話すとまた呼吸している・・・なんだか辛そうに見える。やっぱり体調が良くないことを示唆している。でもまだ動くわけにはいかない。タイミングを見誤ってはいけない。

「ずっと好きだった。いろんな意味で。いろんな感情で。これがホントの気持ちだと思う。最後だから俺の・・・・・・私の本当の気持ちだから・・・叶わない願いってこんなに悲しい気持ちになるんだね。私、ずっと自分を偽ってた。でもね幸せだった」

 さっきから何を言っている?風が邪魔をして聞き取るのが難しい。

「俺は今から神様に文句を言いに行く。バイバイ拓哉」


 一瞬風と雪で視界を遮られた。次に見た時相楽の姿はもうそこにはなかった。


 俺は走って欄干の下に向かって声の限りに相楽のことを叫んだ。返事なんてあるはずもない。みんなも欄干まで駆け寄って先生は急いで警察と救急に電話を入れた。相楽のお母さんはその場で泣き崩れてしまった。お父さんも欄干の下を言葉を失ってしまったように黙ったまま覗き込んでいた。

 心臓が破裂しそうなくらいバクバク脈打っている。血液がもの凄い勢いで全身を駆け巡っている。体中が震えを起こして欄干に手を置いて立っているのがやっとなくらいだった。

「・・・相楽の話を聞くまでもなく俺が飛び込んでいれば」

 後悔の言葉ほど虚しいものはない。いくら悔やんだって元に戻ることなんてできない。そんなこと分かっているのに・・・・俺は自分に言い訳をしている。情けない、悔しい、やりきれない、そんな言葉が絶えず頭の中を廻っている。

「さ〜が〜ら〜・・・・・・バカ野郎」

 俺の言葉は風がどこかに持っていってしまったように感じたが思いっきり叫ばずにいられなかった。

昨夜は今年最初の新月でした。

読んでいただきありがとうございます。

朝が来て自分に何か変化があったのだろうか?

特には・・・いつもの私か・・・

最近は調子がいい。いろんなことが。

変われるだろうか?変わらないとならないのだろうか?

今は流れに身を任せています。物語も登場人物に任せています。

どんな展開になるのか・・・私は受け取って書くだけ。

次はどうなる?それは私にも分からない。←無責任なだけ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ