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ワタシ死ねないみたいです。あと○○になる方法、探してます。  作者: マナマナ


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私の中の私

 今日は日曜日。天気は良いのに誰かと約束をしているわけでもない。

 ということは私は一人自由の身ということになる。


 朝ご飯を終えたばかりの私の目の前には今までの私が記録されているアルバムが収められたDVDがある。それを机の上に年代順に並べて置いてみた。

「結構、量ある・・・思ったけど今の私の写真って多分退院した時とか高校の入学式くらいしかないんじゃないかな。比べたら歴史が全然違う」


 とりあえず先に写真だけでも見ておこう。これが終わったら動画を見る。運動会とか誕生会とか、他にも私には興味ないけどサッカーの試合とか。お父さんは前の私のこともちゃんと気にかけてくれていた。娘を愛する父親だよね。


「先ずはこれかな」

 手にしたのは幼稚園の年中から卒園までのディスクだった。

 ノートパソコンを開いて外付けのドライブをセットするとディスクは音を立てて廻り出す。やがて画面にアイコンが現れてカーソルを合わせてクリックするとフォルダーがたくさん出てくる。ちゃんとタイトルと期間が記されている。私は年代の古い方から開いてゆく。


「髪・・相変わらず短いなぁ・・・あ、隣りに映ってるのって拓哉だよね。面影あるっていうか今をそのまま小さくしたみたい・・・なんか可愛い」


 映っているのはお遊戯会の時の集合写真みたい。お芝居でもしていたのかな?このカッコってもしかして桃太郎?ってなんで桃太郎が何人もいるんだろう。猿もキジも犬もみんな複数いる。

 ちなみに私と拓哉は鬼だろうな。頭に角付いてるもんな。みんな自分が演りたい役に着くからこんなカオスな状況になる。多分親の意見がかなり繁栄されているんだろうな。桃太郎が五人もいるとは。

 まあ幼稚園だからいいのかな?あらためて見ると変な世界観だよね。実際の桃太郎は当然一人なのにね。


 それからは流してザッと見る。同じような写真が多いし特に面白そうな情報もあるようには思えなかった。さらに先に進むと幼稚園じゃなくて普段の写真も出てくる。

「これ・・・サッカーボール」

 買ってもらったのだろう。満面の笑みで映っている姿があった。それから近所の公園でボールを蹴っている姿。これって私が見ても男の子と勘違いしそう。顔は勇ましいというか凛々しいというか。こんな表情私にはできない・・・と思う。

 たまに拓哉も映っていて一緒にボールで遊んでいる姿があった。ほんと幼馴染みって言葉が似合いそうな二人だ。

 またスクロールして・・・一瞬だった。気になる写真が通り過ぎていった。

 

 ゆっくりと一枚一枚確認しながら見てゆく。

それは拓哉と並んでいる写真だ。場所は公園。二人共なんだか悲しそうな顔をしている。一体何があったのかな?

 

 私が注目したのはそこじゃない。

 

 写真の私はなぜ拓哉の服の端を握っているのだろう。拓哉は正面を見ているのに私は拓哉のことを見ている。

 その視線が私には引っかかる。なんでそんなに切ない視線を送っているのだろう。


私の見間違いじゃなければ・・・写っていたのは

男の視線じゃない・・・・女の視線があった。


「・・・これって・・・どういうこと?」

 私には分かる。この写真の私は拓哉のことを女の目を通して見ていること。

一体何があった?何があったらこんな視線になるの?


 私はもう一度最初から見直してみた。けれどこの写真はこれ一枚きりだ。

気持ちはモヤモヤして落ち着かない。誰に聞いたら分かるのかな?お母さん?お父さん?それとも拓哉は覚えているのだろうか?やっぱり私自身に聞くのが早い?

 鏡を覗き込む。

「何があったの?聞いても・・・答えてくれないよね」

 鏡の中の私は何も答えてくれない。けど分かる。きっとその瞬間に私は女の心になった。それは本当に一瞬だった。写真はそんな貴重な時を切り取ったんだ。

 

「もっと・・・探さなきゃ・・・見つけなきゃ・・私のこと。そうでしょ?それを見つけて、あなたは私に何かを求めている。そう感じるから。私がこうして生きている理由が少し見つかったような気がする」

 私は私に微笑む。映っている顔は私が想っている以上に微笑んでいるのは気のせい?いや気のせいなんかじゃない。

「任せておいて。絶対見つけるから」


 さて。当面の私自身の目標ができた。もちろん今の生活だって充実させてみせる。そう決意するとなんか落ち着かない気分になる。体中からやる気が満ちてゆくみたい。気合いを入れてアルバムの続きを見る。

 

 思ったんだけどパソコンって私個人のモノだよね。今は前の私が持っていたものを何気なく使っているわけだけど。これってさ、私の個人情報が満載されているのでは?

「なんで気付かなかったの」

 一旦アルバムは置いといてデスクトップ画面にする。でも期待した気持ちとはウラハラに必要なシステムしか残っていなかった。私個人に繋がるフォルダーはなかった。自分で全部消去したんだろうな。


 溜息。

期待した分だけ落胆も大きい。

「誰にも知られたくないことがあった。だから全部消したってことだよね」


 どこかに隠しフォルダーとかあるかもしれないと思って画面中アイコンを動かしてみてもヒットするものはなかった。やっぱり完璧に消している。


「あ、これ生きてる」


 それは音楽ファイルだった。前の私は一体どんな音楽を聞いていたのかな。クリックしてソフトを立ち上げる。しかしその中には誰の音楽も入っていなかった。

「これもか・・・詰み?・・・あっ・・・」

 何もないと諦めかけた時

「なんだろう・・・」

 曲名もアーティスト名も記されていないデータを一つだけ見つけた。

「・・・聞いても平気・・だよね。いいよね」

 私は自分に断りを入れてから音量を上げてカーソルをファイルに乗せてクリックした。


 ガサガサした音が聞こえる。ノイズにも似た音しかないのかな?やっぱりこれも何もなしってことか・・・って思ったところで


『・・・・あ〜・・えっと・・これでいいのかな?』


 これ・・・私の声。わざと低めに喋っているみたいな感じがする。だけど自分の声だということは確信がある。やっぱり前の私だ。


『・・・こんな記録残しても誰かに聞かせたいわけじゃないし、誰か他の人に聞かれることもしたくない。これを聞けるのは俺だけ・・・・いや私だけ』


 わたし、ワタシ・・・私・・・と言うには慣れていないように感じる。一体何の告白?


『え〜これからは元の声で話す。結構疲れるんだよな』


 微かに咳払いがあって・・・・・・静かな声が聞こえてくる。


『今部屋に帰って来た。もう病院にいても無駄だって。言葉は違うけど私にはそういう風に聞こえたんだ。だからきっともう長くはないってこと。まだ十五歳なのに・・・こんな人生ってある?本当ならこの先には未来がたくさんあるのにもう私はそこに行くことができない・・・・・・・・・・』

 

 病気だったってことは本当のことだったんだ。


 泣いているのかな?息づかいでそんな感じが伝わってくる。その想いに反応したのだろうか私の胸も締め付けられる。

今は文句なしで元気だ。元気に生きている。だからお願い・・泣かないで。


『・・・もっと・・・素直になれば良かった。私がこうしていればずっと一緒にいられると思っていた・・・・もう叶うことないけど・・・あと何日・・・生きていられる?一年?半年?三ヶ月?それとも一週間・・・・神様なんていない・・・』

 

 神様・・・・・・こんな人生あんまりだよ。文句が言えるなら私だって言いたい。


『・・・・・・俺が文句言ってやるよ』


 え?声の調子が変わった?・・・・どういうこと?

 その後は何も録音されていなかった。画面を見てもファイルの再生は終わっていた。もう一度聞こうと思ったのにファイルは自動消去されていた。

「うそ・・・ちょっと、そんなのあり?」

 履歴からもう一度再生出来ないか試みてみたが画面にはファイルの存在がないというメッセージしか表示されない。


 諦めてベッドに横になる。なんか疲れちゃった・・・前の私のことが分かったのはホントに少しだけだった。

 

 『私』と『俺』の存在。

 

 使い分けているようには思えない。目を閉じるとふとこんな言葉が頭を過った。

・・・二重人格・・・・まさか・・・でもそう考えた方がツジツマが合う?


 時間を見るとお昼にはまだある。それにしても気分は未だモヤモヤしたまま。

せっかくの日曜日なのに。こんな気分のままなんて嫌だ。どうやったらスッキリする?それさえ思いつかないよ。


「一体何なの?全然分かんないよ。私の中の私、教えてよ」


 ベッドに寝転んで思いっきり手を伸ばした時、壁に思いっきりぶつけてしまう。

 その衝撃で棚の上に置いてあったサッカーボールが顔面に向かって落ちてきた。


「・・・痛・・・・・・信じらんない」

 鏡で顔のダメージをチェックする。

良かった。大したことはなさそう。

 

 一安心して脇に転がっているボールを手に取る。一瞬ボールに八つ当たりしそうになったのにボールは思ってた以上に手にしっくりくる。

やっぱり好きだったんだ。もっと私を知りたいなら


「今の私で良ければ一緒に遊ぼうか」


 モヤモヤした時は身体を動かす。これが一番気分転換になるよね。

 私は二度と触ることがないと思っていたボールを手に取って近所の公園に向かった。

本日は閻魔参りという行事があるそうですね。

読んでいただきありがとうございます。

天国や地獄って本当にあるのかな?

死んだものだけが知る境地なのでは?

生活の何割空想が占めているのでしょう。

私は今日も空想します。物語を紡ぐために。

次も私の空想にお付き合いしてくださいませ。

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