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ワタシ死ねないみたいです。あと○○になる方法、探してます。  作者: マナマナ


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21/36

俺は・・・何を言っている

 部屋の中に入ると鼓動はさらに速くなった。

 まずドアを開けたところからあの時とは違う。何が違うって、匂いだ。女子特有の匂いがする。

 その香りに俺は顔を熱くさせた。なんとなく入ることに躊躇する。

 それに寒色で纏められていたカーテンやベッドのシーツは淡い暖色系に纏められている。さらに壁に貼ってあったポスターが無くなっていた。それを見て

「・・・サッカーはもう眼中にないってことか」

 言葉に出したらなんだか急に寂しくなる。相楽がすごく遠くに行ってしまったような気がしたからだ。すぐ傍にいるのにとても遠い。


「お待たせ。って何突っ立ってんの?早く入ったら?」

「あ、ああ、いいのか?」

「は?何言ってんの。重いんだから早くして」

 俺は押されるように部屋の中に入れられた。あらためて思う。ここは今の相楽の部屋なんだ。ここにはもうあの頃の欠片はどこにないと思っていたのに

「・・・ボール」

 本箱の上にサッカーボールが飾られていた。それを見ただけでホッとしている自分がいた。

「あれね。なんか気になっちゃって。だから置いているんだけど。とりあえず座ってよ」

 勧められるまま視線の先にある床に置かれたクッションに座る。やっぱり空気が動く度に女の子の匂いが鼻を翳める。

 俺は同級生の女の子の部屋に来ている。そんなことをチラッと思う。その相手が親友の相楽なのだから、こんな日がくるとは露とも思っていなかったな。

「はい。どうぞ」

 置かれたのは紅茶だ。炭酸ばっかだったのに今は紅茶なんて飲むんだ。それも自分で淹れて。

「ああ、サンキュウ」

 良い匂いだ。紅茶なんて滅多に飲むことなんてない。せっかくだ。一口飲んでみると

「・・・うまい・・・紅茶って美味いんだな」

 俺の顔をじっと見ていた相楽は笑顔だ。俺の感想が嬉しかったのだろうか。


「それで?一体何の用だ?」

 相楽も紅茶を一口飲んでから溜息を静かについた。

「いや、ちょっと忘れ物っていうか、失くしたっていうか。自分でも帰り道を探してみたんだけど道にはなくて・・・後は学校だけなんだよね、探してないの。でももう下校時刻だったし、ちょうど校門のところに佐々木君達が居て引き返したの。私服だったし」

 やっぱり佐々木は相楽に対して自分をプッシュし始めている。俺の忠告なんて何の役にも立たなかったか・・・俺が視線で話の続きを求めると

「・・・最近なんかいろいろ話しかけてくる。正直、面倒っていうか。だから顔を会わせたくなくて。それで拓哉に代わりに探してもらおうかなって思って電話したんだ。でも帰るとこだったから無理だって」

「なるほど、俺を都合よく使おうとしていたと。別に構わないけどわざわざ家で話すことかって思うが」

「ごめん。でも今は拓哉にしか頼れない。それに電話じゃない方がいいのかなって思ったの」

 よく分からない話だ。それに俺は何を喜んでいる?緩む口元を隠すために紅茶を飲みながら相楽の言葉の続きを待った。

「それでね、明日、もし見かけたら確保して置いてもらいたいかなって」

「明日にあるか分からんが、それは見たら分かるのか?」

「うん・・・えっと・・・」

 相楽は言葉を繋ごうとしている。けれど上手く言葉が出てこない。

「あれ・・・おかしいな」

「どうした?」

 まるで空中にその言葉があるのか、どこか遠くに視線を合わせている。

 でも見つけることが出来なかったのか、小さな溜息を付くとカップに残っていた紅茶を飲み干した。

「・・・ごめん、分かるんだけど、いざ言葉にしようとすると言葉か消えちゃう・・・なんでだろ」

 相楽は本当に困った顔をしている。

 そんなことってあるのか?自分が失くしたモノは分かっているのに言葉が出てこないなんて。


「ここまで出てるんだよ。四角いもの。色は赤なの。でもダメみたい・・・」

 赤い?四角い?まさか

「もしかしてお前が失くしたモノってこれか?」

 俺は鞄の中に放り込んだ拾った真っ赤な封筒を出して相楽の目の前までもってゆく。それを見た瞬間相楽の表情が変わる。

「・・・これ・・・そう・・・・・・真っ赤な・・・封筒!」

 相楽に渡してやるとホッとしたみたいな溜息をついていた。

「・・・よかった」

 その様子を俺は黙って見ていた。それが一体なんなのか?よほど大切なモノだったのだろうか?


「どこで拾ったの?」

「校門。うっかり蹴飛ばして気がついた。じゃなかったらきっと見えていなかった。その封筒みたいに夕陽が真っ赤だったから」

「そうなんだ。でも拾ったのが拓哉でホント良かった。他の人だったら絶対戻ってこないと思う」

 相楽は少し落ち着いてきたのか、お互いのカップに紅茶を注いだ。

「これも食べて」

 それはお茶と一緒に持ってきたバウムクーヘンだった。部活疲れで甘いものが欲しかった。

「ああ。いつ勧めてくれるか待ってたんだ」

 丸い輪っかは一口齧っただけでアルファベットのCになる。この甘さは相楽の作ったたまご焼きとは違う甘さがある。それから紅茶を一口。血糖値が上がったおかげなのか妙な緊張がなくなってゆく。

「紅茶と合うな、これ」

 相楽も同じように食べると同じような感想を言う。向こうは向こうでホッとしているみたいだ。

 それからバウムクーヘンを食べ終わるまでたわいのない話をした。今の自分のこと。学校のこと。それからこれからのこと。


「ねえ拓哉」

 相楽の目にはさっきとは違う真剣な眼差しが込められている。

「なんだ?」

「これから先のこと。私はずっと今の私でいられると思う?」

「俺は医者じゃないから分からないが、それってお前がずっと望んでいることなんだろ」

「・・・そうだけど。もしってあると思うの」

 コイツはいつもその考えて真剣に悩んでいるんだろうな。きっと悩み過ぎて眠れない夜だってあるのかもしれない

「もしかしてあまり眠れないことあるのか?」

 今朝の欠伸のことを思い出す。あんなに決意が固いのにその反動なのか心配する気持ちも大きいのだろうか。どうしたらその悩みを拭うことが可能なのだろう。俺にも手伝うことができるのだろうか?

「・・・夢見が悪かったって言ったよね」

「夢?」

「・・・うん。どんな夢だったか覚えてない。でも今はその封筒のことは思い出した。私は夢の中で選んだんだ」

「よく分からんが?」

「だから、選ぶように言われたの夢の中で・・・起きたら現実にそれがあった・・・怖いよね」

 冗談でも言っているのだろうか。夢と現実が連動しているなんてこと、そんな話今まで聞いたことなんてない。でも相楽の顔には確かにあったことだと仕草が物語っている。本当だとしたら俺だって怖いだろう。

 相楽は眉間にシワを寄せている。昔と同じだ。信じたくないけど信じないとならないという困惑している時の表情だ。


「なあ相楽」

 俺は自分の眉間に指を当てて

「眉間にシワ。癖になってもいいのか?」

 相楽は慌てて両手で眉間をマッサージしてから鏡を出すといろんな角度から見て確認をしている。

「気をつけなきゃ」

 鏡をすぐ取り出せるところにあるなんてどう見ても女子だよ。

「で、その封筒って何が入っているんだ?」

 話を進めるために敢えて突っ込んでみた。ホントなら相楽の意思で言って欲しかったが今は自分の顔に夢中になっているからこれは仕方のない処置だと自分自身に言い聞かせた。


 相楽は鏡を置いて今度は赤い封筒をテーブルの上に置く。ちょうど二人の真ん中辺りだ。


「私も何が入っているか知らない。今、ここで開けようか」

「俺は関係ないけどいいのか?」

「だって一人で開けるの・・・怖いよ。だから開けられなくて。それに机の引き出しに入れたのに、帰る時に鞄の中に入っていた時はビックリした。まさかって思った。だから一秒でも早く家に帰って確かめたかった。ホントはなくなっていた方が良かったのかもしれない。記憶だって曖昧だし。やっぱり気のせいだって。でも部屋に戻ると引き出しにも鞄の中からもなくなっていたの分かったら、なんかすごく嫌な気がして、慌てて探して、それで今に至るってことなんだけど。実際は拓哉が来るまで忘れかけていた。もう・・・変なことばっかり。これもみんな満月のせいかもしれない」

 一旦ここで区切って相楽は再びカップの中に紅茶を淹れると半分くらいはイッキに飲み干して喉を潤す。

「今はまた記憶がはっきりしてる。拓哉が拾ってくれて良かった、というか繋がっているみたいな気がするの。だから一緒に見てもらいたいって。もしかしたら拓哉のこと巻き込んでいるかもって。そんな迷惑かけたくない。今ね、そんな風に思ったの。どう?・・・嫌ならこのまま帰ってもいいけど」


 俺の答えをずっと待っている視線にはどこか憂いのようなモノが浮かんでいる。そんな視線は正直反則もいいところだって本人に直接言ってやりたいのはヤマヤマだが、もしこれを拾ったことで相楽の言う迷惑になるというなら・・・なにがある?それは今のお前と昔のお前と関係しているのか?

 それは本当のお前のこと知るきっかけになるのか?


「迷惑なんて思っていない。お前がいいなら付き合う。でも繋がってるって一体何のことだ?」

 ちょっとだけ考える。その仕草はいつものように。

「私にも分からない、ただそういう風に思うの。無理になんて言わない。もう一度考えてから答えて欲しい」

 言われた通り考えてみる。けれどそんな分からないことは分からないと答えなんて出ない。

 俺は相楽の提案を受け入れる。それくらいなんてことはない。俺はお前を知りたい。それだけだ。

「さっきも言ったがお前がいいなら。俺なら平気だ」

 俺の答えをあらためて確認した相楽は封筒をひっくり返す。

「分かった。じゃあ開けるね」

 相楽はしっかりと封をされているシーリングスタンプをゆっくり剥がしてゆく。

 そして封筒の中から同じように真っ赤なカードを取り出した。

「・・・・・・」

 カードを見ている相楽は言葉を失くしている。俺にはカードの裏側しか見えていない。一体何が書かれている?

「ない」

 次に出てきた言葉だった。ないって?その意味は?

「何も書いてない」

 相楽は言って俺の方にカードを差し出した。受け取って俺がそのカードを見た瞬間

「な、なんだ?」

 急にカード自体が熱くなってくるのが分かる。辛うじて手で持っていることはできる。


『お前は本当は誰なんだ。誰だ。誰なんだ』


 そんなこと言いたくないのに勝手に口がそう語る。俺は慌てて手で自分の口を塞いだ。


 相楽は目を大きく開いている。身体全体が細かく震えているように見えた。

「・・・な、なに・・それ・・急に・・私・・・私って・・誰?・・そんなの、そんなの・・・一体・・なんなの?拓哉も思ってたの?やっぱり昔の私の方が良かったんだ・・・」


 急に立ち上がると部屋を飛び出して行ってしまう。それはあまりにもあっという間のことだった。俺は後を追おうとしたがそこから動くことができなかった。それに相楽のことを呼び止めようをしたのに声も出すことができない。

(・・・・こ・・これは)

 さっきまで一文字もなかったカードにじんわりと文字が浮かび上がってきた。俺は目で追ってみる。


「・・・『本物の願いを叶えるのは私』?」


 たった一言、それだけだ。

 声は元に戻っていた。読み終わると今度は端から火がないのに炎で焼かれるように霧散して俺の手から完全に消えてしまった。


 『本物の願い』それを『叶える』・・・『私』?


 混乱する頭を抱えやっと動けるようになる。俺は急いで相楽のことを追った。

鋭い上弦の月が澄んだ夜と朝の中間に浮かんでいます。

読んでいただきありがとうございます。

だんだん眠りが浅くなっている私です。(歳のせいと世間は言う)

こんな目醒めが毎日です。

せっかく早起きした(早過ぎ)のだから物語を進めよう。

でもその前にお茶を淹れよう。ついでにパンも焼こう。

朝に書いているといろいろな景色が重なっていきます。

それを正確に文字にするのは難しいです。

こんな私ですが次も気にしていただけた励みになります。

よろしくお願いします。

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