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ワタシ死ねないみたいです。あと○○になる方法、探してます。  作者: マナマナ


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今を楽しんでいる?

 全員の自己紹介が終わると明日からのカリキュラムの説明云々いろいろあってやっとホームルームは終わりを迎えようとしていた。

 なんとなく最後まで落ち着かない空気がクラスの中を漂っていた。


「明日から早速授業がある。今日はここまで」

「起立・・・礼」


 挨拶が終わって先生が教室を出たと同時にそれぞれが席を立ち帰り支度を始めたりしている中、当然昔から知っている奴らは相楽の元に行った。

 机を取り囲んで何かをしきりに聞いている。こっちまで声はハッキリとは聞こえないけど話している内容はなんとなく推測できてしまうのがなんとも嫌な感じもする。

 だってあいつらは俺が聞きたいけど聞けないことをストレートに聞いているはず。意識しなくても自然を耳に神経が集まる。

 俺は相楽にああ言っておきながら結局は興味津々じゃねえか。自分自身の意思のブレに嫌気が差してくる。所詮は同じ穴のムジナと言われても反論なんてできないよな。


 相楽は笑って答えているように見えるがやっぱりどこか嫌だ、面倒だ、という感じも受ける。かつての記憶が無いのに質問に的確に答えるなんて俺にはできそうにない。それはきっと相楽だって同じことだろう。

「おい。そろそろ終わりにしよう」

 俺は群がっている連中に声をかける。一人が振り返るとみんな一斉に俺のことを見る。俺と相楽の関係を当然知っているはず・・・なのにどこか攻撃的な感じのする視線がある。

「なんだよそれ。お前だって、っていうかお前が一番気になってんじゃねえのか?」

 確かにそう思ったこともあったがそんないきなりいろいろ聞くなんて急過ぎるだろ。

「俺は相楽の事情を知っている。今はまだ深堀するな。相楽だってほとんど答えられないんだ」

「なんでそんなこと分かるんだよ」

「知っていると思うが俺達は幼馴染みだ。だからコイツの言っていることは信じている」

「どうだかな。ま、そんなことどうでもいい。日下部、お前には関係ない話だ。それに俺は正直ずっと思ってたんだ。ちゃんと女のカッコしてたら相楽って絶対可愛いって。昔の相楽のことはもういい。俺は今の相楽がいい」

 そんな言葉・・・コイツらはずっと相楽のことをそんな風に見ていたのかと思うと正直腹が立ってくる。中学の時は相楽のことを男として接していたと信じていた。


 今と昔は違う。そういった話を親から聞いたことがあった。

 昔は相楽みたいな存在はまだまだ世間に受け入れられていなかった。言葉は悪いがいわゆる『変態』的な言葉で差別の対象になっていた。

 けれど今の時代はトランスジェンダーなんて言葉が存在してそれなりに社会にも浸透していると思っている。でも言葉が世界中にあったとしても身近な現実はこうだ。

 相楽はずっと生き難いのを我慢して毎日を過していたのかもしれない。やはり男は男、女は女という図式を変えることは無理なんじゃないかとすら思ってしまう。キリがない。こういう話にはキリがない。結論だってきっとないだろう。


「相楽、行くぞ。俺と昼飯食うんだろ」

 ちょっと強引だったかもしれないけど相楽の腕を取って行こうとすると

「早速抜け駆けか?」

「やめろと言った。その話は終わりだ。相楽だって困惑している。それに病み上がりでもある。だから今は触れるな。まだ静かにさせておいてくれないか」

 俺はみんなのことを牽制してから相楽の腕を強引に取る。その腕はあまりに細くて華奢だった。相楽は何も言わずに立ち上がった。

「大丈夫か?」

「・・・うん」

「行こう」

 教室を出ると後ろから文句や嫌みにも似た声が聞こえてくる。そんな言葉は無視だ。

 問題は明日からだ。きっと同じようなことが起こるに決まっている。


 そんなことを考えながら廊下を歩いている俺はずっと無口のままだった。相楽もずっと黙ったまま隣りを歩いている。俺はコイツのことを守ってやらないとならない。親友として。今はどんな言葉をかけたらいいのだろう・・・何か喋らないと・・・沈黙が空気を重くしている。

「あ、あの」

「あのさ」

 同時に出た言葉だ。しばらく顔を見合わせてから

「なんだ?」

「そっちこそ」

 少しだけ気が抜けて思わず笑ってしまった。

「なんで笑ってるのかな?」

「あ、いや、悪い。なんだか昔を思い出してた」

「その感覚、私にもなんとなく分かる、かな」

 相楽の笑顔もどこかホッとしているように見える。

「それで?」

「あ、ああ、そうだな・・・相楽から先でいい」

「なにそれ。まあいいけど」

 相楽は軽く頷いて俺のことを見上げる顔はいつもと同じ距離にあるような気がした。

 背が伸びたのはお互い様ってところなのだろう。


 いたずたっぽく笑う顔は前の相楽のことを思い出す。それは今の状況を楽しんでいる時によくやる笑顔だ。それなのにここにいるのはかつての自分を忘れた相楽だ。

 今のお前も楽しんでいるのか?俺は黙って耳を傾ける。


「大体予想してたんだ、こうなるってこと。実際はもっと凄かったけど。それにしてもみんなが私のこと可愛いって・・・照れるよね」

「照れてる場合か?明日からどうするんだ?また今日みたいなことになるぞ」

 相楽は左手の人差し指を顎の下に当てて何かを考えている。その仕草は前の相楽でもよく見ている。何かちょっとしたことを考える時のお決まりにポーズだ。

「そのポーズは変わらないんだな」

「そう?特に意識してなかったけど」

「それで?どうするんだ?」

「うん。なんか実際こう質問攻めにあって少し気が楽になった」

「楽に?なんでそうなる」

「だって今の私を受け入れてくれたから言ってくれたんだよね。もし昔の方が良かったって言われてたら落ち込んでいたかもしれないから」

 ここにある相楽の笑顔は俺も知らない女の子の笑顔だ。今のコイツは本当に今がいいんだな。

「ずいぶん前向きなんだな」

 俺の心配を余所に、という言葉は飲み込んだ。

「言ったでしょ。私はこのまま生きてゆくの。それで?拓哉は何を言いたかったの」

 俺はお前の親友。その笑顔・・・動揺するだろうが

「俺はもう言った。明日からのこと」

「そっか、心配してくれたんだ。昔からそういうところ優しいよね。昔の私にも今の私にも」

 相楽は俺の一歩前を行って正面に立つ。

「ありがとう。親友」

 俺の目の前にいるのは果たして本当に親友なのだろうか。それとも・・・みんなが言っている可愛い女の子なのだろうか。俺は親友で居続けることが出来るのだろうか・・・この先

「ああ・・・俺はずっと親友だ」

 そう言っている自分の中で何かが引っかかってスッキリとしない。でも俺は決めたじゃないか。そう思い直して

「じゃ、本当に飯に行くか」

「うん。じゃあ・・」

 相楽が全部話し終える前に校内放送が入る。


『一年三組 相楽美有さん 至急職員室まで来てください』


 二度繰り返される。

「え?私?・・・なんだろう?ごめん拓哉、私行かないと。じゃね、また明日」

「呼び出しじゃ仕方ないか。ああ、また明日」

 相楽は軽く手を振って職員室に駆け足で行ってしまった。スカートから見える足・・・あんなに色が白かったっけ?

『廊下を走るな』ってこれも以前の相楽によく言ってたな。

 明日もまた会える。不思議と心が奮えているような気がする。俺は間違いなくアイツの親友であるべきなんだ。自分の気持ちをもう一度再確認して学校を後にした。

そろそろ師走です。

読んでいただきありがとうございます。

お餅はスーパーではなく近所の和菓子屋さんで予約しようかと・・

少しずつ新年に向けて準備を始める時期です。

しかし、私はなぜ年末ギリギリまで仕事があるのだろう。

そして合間を縫ってアップをする。

きっと今は楽しいのでしょう。これからもずっと楽しければいいな。

次回も読んでいただけること願っています。

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