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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

作者: ~〇〇~

この物語を読んであなたの頭には、どんな光景が浮かび上がるでしょうか。また、あとがきは物語の解説のようなものになっています。

『 君たちに目についての質問をしよう』

そう言った中年の男の前には3人の若者がいた。

若者達はどこか面倒くさそうな表情でいる。

『 君たちは目をなんだと考える?』

若者が言う

『 なんだって言われてもそんなの考えるどころか意識したこともないっすよ』

突拍子もない質問に対して自然な回答であった。

しばらくの沈黙が続き、男は言う。

『 では、目の役割とはなにか、答えなさい』

若者の1人が少し考えてから答える。

『 それは、さすがに分かりますよ。周りを見て視界の情報を脳に送る。ですよね』

若者の回答は正解である。しかし男の顔はずっと曇っている。

『 普通なら正解だが、1つ前の質問を聞いただろう?なら不正解だ』

『 それなら、答えを教えていただきたいです。』

若者が食い気味にかかって言う。

男はさらに顔を曇らせた。だがそれは若者の態度に対してのものではなかった。

『 その答えが私にも分からないから困っているんだ』

若者達は更に困惑した顔をする。

『 私は今とても困っている』

『 それは、私達もですよ』

中年の男はゆっくりと話し始める。

『目の役割が周りの情報を送っている、それはそうなんだがここにもう1つの問題がある。』

『 それは?』

男は重々しく口にする。

『 私の目はその役割を全うしているのか、という問題だ』

若者達は分かったような分からないようなもやもやとした気持ちになる。

『 つまりどういうことなんすか』

イライラしたような口調で若者は男に詰め寄る。

また男は俯いて黙り込み、そしてまた口を開く。

『 順を追って話していこう。まず君たちは何人でここに来た?』

『 2人です』

『 それではここまではどうやって来た』

『 それは歩きで登ってきたしか無いでしょう』

若者がそう答えると男はまた頭をかかえる

『 君たちは登ってきた。ちなみに私は下ってきたんだ』

そう、この会話をしているもの達は全員登山をしていた。しかし不運にも猛吹雪に遭い遭難している最中だった。若者は男の話を聞いている。

『 私も先日までは私と部下の2人だった』

若者は表情を変えずに、男に聞く

『 ちなみにその人はどこに?』

男は迷わず、答えた

『 山から落ちて亡くなった』

『 だが問題はここにもある。私はそいつが死んだという事を理解しているつもりだ。実際、遺体も見てしまった。だが今私の目の前には彼の姿が見えるどころか声まで聞こえてくるんだ。』

若者達は周りには誰もいないことを分かっていたが視界を動かすのを止められなかった。

若者は、

『私達以外に人はいませんよ?』

と言うが、男もそれはわかっているつもりであった。

しかしそれを男の目、更には脳までもが否定しているのであった。

『 いいか?君たちと私は遭難し、歩いているうちにこの小屋へたどり着いた』

『 そうですね』

『 そしてこんな話をしているのは死ぬまでの時間つぶしであると』

『 残念ながらその通りです』

『 今君の目には何が映っている?』

『 え?あなたと一緒に山を登っていた彼氏だけですけど、、、』

若者はピクリとも動かない死体を目にしながら言った。

『君も私と同じだな』

男は目を閉じ、笑って言った。その笑いにはもはやなんの感情も乗っていないだろう。

『もういないと理解はしていても私達の目が、そして身体全てが同じ勘違いをしている』

男は諦めたような口ぶりで言葉を絞り出す。

『 そうだな、結局私の言いたいことは何なのか、、、』

そう呟く男の眼前には若者などはいない。

いや、既に居なくなっていたというのが正しいのであろう。

男の目には今や恐ろしく、猛々しい熊の姿しか映っていない。

その熊は腹を空かせておらず、男を食べることはまだ考えていないだろう。

『果たして私の目に見えていたものは真実なのか、、、』

ここ数日間何も食べずにいた男の目には生気などとうに無くなっていた。

次第に男の体から力が抜け、意識は深い暗闇にとけていった。

これまでに出てきた若者達は実在したのか、男の部下の死の真実、それらの真相は実際に目にした者にしか分からない。たとえ、その目が壊れていたとしてもそれは本当でしかないのでは無いだろうか。なぜなら、嘘か誠かを判断する目も壊れているかもしれないからだ。

解釈1. 中年の男とその部下が猛吹雪に遭い遭難し小屋と呼ばれる洞穴に入る。約1日後男の部下がその中で死亡。

遭難時から約2日後若者2人組が男のいる場所へたどり着く。その2日後若者のうち1人が死亡。

遭難時から約6日後若者2人目が死亡。その1日後男が衰弱死。

文中には熊が出てきているが、実際にいたのかは不明であり、中年の男が最も長く生きていたこと、若者のうち死亡した1人目が男性であり、食料を彼女に渡していた可能性、その1日後すぐに残された女性もすぐに死亡したことなどから、様々な可能性が考えられる。

どう解釈するかは、読み手に託されているということだ。上記の内容はあくまでも可能性のひとつで、中年の男が生きることに必死であった世界線の話であるだろう。

他の解釈の仕方として、中年の男以外の人間が熊の餌となることで男が長く生きのびたというのも考えることが出来るが、気がかりな点は出てきてしまう。

是非、読んだ方の頭の中で物語を作り、この話を長く楽しんでいただきたいです。

また、時間軸に関しても正解は多々ありますので自分なりの正解を見つけてください。

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