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第4話(最終回)

『バイコーンを連邦に引き渡す。』

バイコーンの提案に、エリスは即座に賛成した。


「いいわ。それで決まりね。」


戦場に出ないで済むし、あの化け物――ユニコーンと戦う必要もなくなる。エリスにとっては、理にかなった選択だった。


たしかに、バイコーンとともに戦場に出るのは楽しかった。一方的に敵を蹂躙し、勝利を手にすることで、今まで見下されていた家族や貴族たちを見返せるのは快感だった。だが、それは「自分が安全である」という前提があってのこと。


ユニコーンとアカネという化け物に襲われる危険を知った今、バイコーンに乗り続けるのは、もはやリスクでしかなかった。


「バイコーン、今までありがとね。楽しかったわ。明日からはまた散財と男漁りに戻ることにするわ。」


エリスはあっけらかんと言い放った。


「さすが、拙者が出会った中で、もっとも淫乱で放蕩な『売女』でござるな。逆に心地よいでござるよ。」


「何言ってんのよ。最高の売女はあのアカネって女なんでしょ?」


エリスの問いに、バイコーンは沈黙したままだった。


*******************


バイコーンの連邦への引き渡しに渋っていた帝国上層部だったが、エリスが出撃を拒み始めたこと、そしてユニコーンによる被害が増大したことから、最終的に引き渡しを決定した。


*******************


「…久しぶりね、バイコーン。」


連邦の巡洋艦「マドンナ」に引き渡されたバイコーン。そのコックピットに、アカネは座り込んでいた。


「お主の身体に巻き付けてあるのは爆弾でござるか?」


「…そう。あんたの外装には傷一つつけられないけど、コックピットからなら十分に破壊できるはずだわ。」


「はっはっは、相変わらずでござるな。」


バイコーンの笑い声に、アカネは顔をしかめた。


「答えなさい!バイコーン!…どうしてあの時、私を裏切ったの!!」


アカネが怒鳴る。


「ひょっとして、私が100万の罪のない人間を殺すことに罪悪感を感じると思ったの?それが後々私を苦しめるとでも?…そんなのは私が決めることで、あんたに気遣ってもらうことじゃないわ!!」


アカネは涙を流しながら叫んだ。


「…いや、そんな理由ではまったくないでござるよ?」

バイコーンはあっけらかんと答える。


「そもそも、拙者としても100万の人間の命なんてどうでもよいでござる。それよりもパイロットであるお主ひとりの命の方が重要でござる。」


「…じゃあ、なんで…。」


「その時も説明したと思うんだが、純粋にお主に搭乗資格が無くなったのでござるよ。」


「どういうこと?あの時の私の判断が、売女としてあるべきものではなかったということ?」


アカネは自問する。100万の罪のない命より、一握りの仲間の命を選ぶことは、売女らしい選択のはずだと。


だが、バイコーンの回答は予想外のものだった。


「…すまぬ、としか言えないが、あの時気づいてしまったのでござるよ。そもそも、アカネ、お主は売女ではなかったと。」


「は?どういうこと?」


自分は身体を売って金を稼ぎ、性欲のままに男と寝た。そして金品目当てで何人も殺してきた。それが売女でないはずがない。


「お主は、大切な友の命のため、何のためらいもなく100万人の命を奪う選択をした。拙者はそこに、お主の透き通るような純粋さを見たのだ。思い起こせば、いつだってお主は目の前のことに精一杯だった。そこに邪気はなかった。つまり、お主は売女などではなかったのでござるよ。」


アカネはバイコーンの言葉に驚いた。


「は?私は今まで、悪いことばかりしてきた。法に触れることばっかり。そんな私が許されるわけがない。」


「…こちらこそ『は?』でござるよ。機動機械である拙者に法も悪も関係ないでござる。」


あっけらかんとしたバイコーンの言葉に、アカネは思わず笑い出してしまった。


「あっはっは!!最初の出会いでいきなり『売女』呼ばわりしたのが間違いだったってこと?それ、超ひどいんですけど!!」


アカネはツボに入ったように大笑いしていた。その様子に、バイコーンはどこかバツが悪そうに沈黙していた。


*******************


「さて、清楚で清潔な私と、これからどうするかね、バイコーンくん。」


アカネがからかうように話しかける。


「そうでござるなあ。しばらくユニコーンにお主を取られていて、若干嫉妬しているでござるよ。空の散歩にでも行くでござるか?」


「え?私には搭乗資格はないんじゃないの?」


「前にも説明したでござるが、資格の99%を失ったものの、1%は残っているでござる。お主であれば、それだけで十分でござろう。」


「…そうね、じゃあ、ひとっ飛びしましょうか!」


アカネはクスリと微笑んだ。


(おしまい)

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