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第3話

アカネは気づくと、見知らぬ場所にいた。

周囲には乾いた血痕と焦げた肉片が散らばり、鼻を突くような人肉の焦げた匂いが漂っている。その場に立った瞬間、アカネは嫌でも理解した。ここはユニコーンのコックピット。そして、この惨状はかつてのパイロット、シャルロッテ姫の最期の残骸だった。


「穢れし乙女よ。神聖な我が懐に何の用だ。」

突然、機械の声が響いた。ユニコーンだった。


アカネはその言葉に毒づいた。「何が神聖よ。このスプラッター映画みたいな状況で、よくそんなこと言えるわね。」


「我はただの機械ではない。我はユニコーン。神聖なる存在であり、純潔を守るもの。だが、今は傷ついている。お前の願いに応えるには時期尚早だ。」


アカネは息を吐き、静かに言った。「私の願いはただ一つ。バイコーンへの復讐よ。力を貸しなさい。」


ユニコーンは一瞬沈黙し、続けた。「その純粋な願い…受け取った。しかし、傷ついた今の我には十分な力がない。まずは再起を図らねばならぬ。」


そのままユニコーンは起動し、連邦の巡洋艦「マドンナ」に向かって飛び立った。


********************


戦局は変わり始めていた。

帝国は帝都を守ることに成功し、連邦の艦隊に大打撃を与えた。しかし、帝都防衛に戦力を割いたことで、連邦を壊滅させるまでには至らなかった。一方、連邦もついに「機動機械」の開発に成功。圧倒的な国力を背景に、じりじりと勢力を盛り返していった。


********************


帝国が接収したバイコーンには、新たなパイロットが選ばれていた。

それは、シャルロッテ姫の妹であるエリス皇女。清楚で高潔な姉とは正反対の性格で、淫行と快楽を好み、家族や貴族から蔑まれていた存在だった。しかし、戦局が硬直する中、帝国を単騎で追い詰めたバイコーンの力が必要となり、その適性を持つエリスが選ばれた。


「前のパイロットには感謝したいわね。おかげで気に入らないお姉さまを片付けて、こんな素晴らしい機械が私のものになったんだから。」

戦場で無数の連邦機動機械を蹂躙しながら、エリスはバイコーンに語りかけた。


「拙者も驚いたぞ、お主もまた優秀だったのだからな。お主は100年に1度現れるかどうかの極めて淫乱な売女だ。」

「それ、誉め言葉と取っておくわ。」


エリスは次々と敵を撃破し、圧倒的な戦闘力で戦場を制圧した。だが、その帰還途中、バイコーンが警告を発した。


「来るぞ。」

真っ白で高潔な機体が空を舞いながら近づいてくる。それはユニコーンだった。


「ユニコーン!?あの機体が実戦投入されてるなんて…!」エリスは驚愕した。

さらにバイコーンが続ける。「間違いない、あれにはアカネが乗っているぞ。」


********************


アカネの操るユニコーンは圧倒的だった。エリスが放つ攻撃はことごとく回避され、逆にユニコーンの精密な銃撃がバイコーンを追い詰めていく。


「ちょっと、攻撃が全然当たらないじゃない!どうなってるのよ、バイコーン!」

「当然でござるよ。お主は100年に1度の逸材だが、あちらは過去、未来を含めて最も優れたパイロットでござる。」


「そんな…でも、あいつも売女なんでしょ?どうして清楚の象徴であるユニコーンを動かせるの?」

「ユニコーンは10%の性能も発揮していない。その証拠に絶対装甲が機能しておらぬ。銃撃を当てれば一発で破壊できるぞ。…当てられればな。」


「うっさいわね!」エリスは全力で攻撃を仕掛けるが、ユニコーンはそれをすべて回避し続けた。対照的に、ユニコーンの攻撃はバイコーンの装甲を確実に削り取っていく。


「やるではないか、エリス。アカネ相手にここまで善戦するとは。さすが100年に1度の売女だ。」

「それ、褒めてるの?貶してるの!?」


エリスは疲労と焦りを感じながらも、最後まで戦おうとした。しかし、勝機が見えない状況に、バイコーンが静かに告げた。


「そろそろ引き際だと思うぞ。」

「言われなくてもわかってるわよ!」


味方の援護を受けながら、エリスは命からがら前線を離脱した。その背後には、未だ無傷のユニコーンが静かに漂っていた。


********************


エリスは困惑していた。

まったく勝てるビジョンが浮かばない。おそらく、次に戦場でユニコーンに出会ったなら、自分は間違いなく殺されるだろう。


「どうしろって言うのよ、あんな化け物!!」


戦闘前に感じていた優越的な気分など、どこかに吹き飛んでいた。

そんなエリスに、バイコーンが静かに語りかける。


「解決する方法ならあるでござるよ。」


その一言に、エリスは反応した。


「…あいつに勝てるの?」


希望を求めるような声だったが、返ってきた答えは冷たかった。


「いや、勝つことはできん。少なくとも、お主にはな。」


その言葉に、エリスはまるでバカにされたような気分になり、操縦ハンドルに思い切り蹴りを入れた。しかし、バイコーンは気にも留めずに言葉を続ける。


「アカネの純粋な意志…『拙者を破壊したい』という強い願い。それがユニコーンを動かしているのでござるよ。」


エリスは眉をひそめた。「それがどうしたの?」


「つまり、拙者を連邦に引き渡せば、アカネとユニコーンは無力化するでござる。」


バイコーンの言葉に、エリスは目を見開いた。



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