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第1話

アカネは戦災孤児だった。

初潮を迎える前から娼婦として働き、飢えを凌いでいた。14歳になる頃には身体はボロボロで、路上で客引きをするも、貧乏人の男しか釣れない。いつしか、寝た男の寝首を掻き、身包みを剥ぐようになっていた。


今日も、血糊のついた財布の中身を確認していた。そのとき、部屋の外から爆音が響く。

どうやら、この街は戦場と化してしまったようだ。窓の外には、巨大な機動機械たちが激しい銃撃戦を繰り広げている。


「…ああ、これで私の人生も終わりか。まあ、地獄みたいな人生だったから、楽になっていいわ。」


アカネは自嘲するように呟きながら、天井を見上げた。その瞬間、突如として黒く禍々しい機動機械が窓の外に現れた。異形のシルエットが爆炎を背にして浮かび上がり、機械から声が響いた。


「拙者の名前はバイコーン。淫らな売女だけが乗ることを許された機動機械だ。拙者に乗るでござるか?」


アカネは目を見開いた。「…売女、ね。」乾いた笑みを浮かべ、続ける。「失礼な奴。でも、間違っちゃいないわ。」


バイコーンは動じることなく返した。「その通りでござる。お主のような者こそ、拙者と共に戦う資格がある。どうするでござるか?生きるか、死ぬか。」


アカネは一瞬迷った。だが、すぐに深呼吸し、決意を込めて言った。「死ぬのなんて退屈よ。あんたに賭けてみる。」


すると、バイコーンの胸部が開き、内部のコクピットが露わになった。無数のコードが生きているかのように蠢きながら、アカネを誘う。


アカネは足を踏み入れた。瞬間、コードが彼女の身体に絡みつき、冷たい感触が肌を包み込む。そして、頭部に接続された瞬間、バイコーンが驚愕の声を上げた。


「これは…!今までで最高の才能、いや、今後現れることもないほどの才能でござる!」


「何よ、それ。ただの売女の何がそんなに特別なの?」アカネが訝しむ。


「お主の闇、その濃さ、その深さ。そのすべてが拙者の力を極限まで引き出す燃料となるでござる!」

バイコーンの声は興奮に満ちていた。


アカネは冷ややかに笑った。「変わった機械ね。でも、褒められるのも悪くない気分だわ。」


「さあ、行くでござる。お主の力、見せてもらうでござるよ!」


その瞬間、バイコーンが赤黒い光を放ち、周囲の空間が歪む。アカネの心の闇がエネルギーとして機械に流れ込み、戦場の中心へと突進した。


********************


わずか数分で、戦場は静寂に包まれた。周囲には、バイコーンによって殲滅された機動機械たちの残骸が散らばっている。アカネは初めて自分が力を持ったことを実感していた。


「これが…私の力?」アカネは小さく呟いた。全身を駆け巡る力の余韻に震えながら、視線を前に向ける。


「否、アカネ。これが『我らの力』でござる。」バイコーンの声が誇らしげに響く。「お主と拙者が一つになれば、この程度の敵など、取るに足らぬでござるよ。」


アカネは一瞬目を閉じた後、決意のこもった目で言った。「そうね。だったら、地獄の頂点を目指してやるわ。あんたと一緒に。」


「よろしいでござる!」バイコーンが歓喜に満ちた声を上げる。


赤黒い光をまとったバイコーンは、次なる戦場へと歩みを進める。その姿はまるで破壊の神のごとく、圧倒的な威圧感を放っていた。


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