第63話 経済の国に到着
「ベルク様、冷たくて気持ちいいですね。どうしたんですか、後ろを向いて」
「いや、何だか気恥ずかしいなと思ってな」
翌朝――もとい翌昼、結局俺たちは朝まで楽しんでしまった。
数時間ほど眠り、汗を流すために近くの小川へ。
異世界の川は綺麗なので、服のまま入浴していた。
ついでに汚れも取ろうという横着っぷりだ。
しかしレナセールの服が透けてしまって、ピンク色の突起物が見えていた。
「なぜ……つけてないんだ?」
「え? あっ!? 昨日外して、そのままでした。でも、ベルク様しか見てませんよ?」
「それはそうだが……」
外で見ると、とてもいけないことをしているようだ。といっても、昨日はそれ以上の事をしていたが。
すると後ろから、むにゅりとレナセールが身体をつくっつけてきた。
「ほら、洗いっこしましょう? 私が、綺麗にしてあげますから」
女性は柔らかい。だがレナセールは凄く柔らかい。
エルフだからだろうか。これは、神秘的だ。
「ベルク様、出発前にぴゅっぴゅっしますか?」
「どこで覚えたんだ?」
◇
「見えてきましたね。壁、すっごく高くないですか?」
「確かに。経済の国とは聞いていたが、金銭的に余裕があるのだろう」
出発後すぐに山賊か盗賊みたいな輩に襲われたが、残りは順調だった。
途中、乗り合いの馬車に乗せてもらってうとうとしながら到着。
入国の審査を待つ間、外壁を眺めていた。
レナセールの言う通り、恐ろしいほど高い。
まるでビルだ。街はいくつかあるが、俺にとっては人生で二番目の国となる。
驚いたのは、煉瓦にモルタルのようなものを敷き詰めていることだ。
素材が何かはわからないと思っていたらレシピが浮かんできた。
上級の魔法素材が組み込まれている。
これで防御力を底あげしているのか。凄いな。
「王都よりも精巧な魔法防御を貼っていますね。凄い術者がいるのでしょうか」
するとレナセールがそんなことを言った。
俺は魔力を見極めることができるが、彼女は魔法の方程式まで見極めることができる。
「かもしれないな。しかしどこも同じなんだな」
「同じ? 何がですか?」
「金がある所に人は集まる。チェコから教えてもらったが、世界中の富裕層が集まるらしい。税金が高いとも聞いている。その分、色々と金回りがいいんだろう」
異世界は貧富の格差が激しい。ステーキを食べている屋敷の裏で泥水をすすっている家族がいたりする。
王都は寛容な国だが、この国は違う。良い意味でも悪いでも人を選んでいる。
俺とレナセールも錬金術師でなければ門前払いだっただろう。
「お待たせしました。入国の許可が取れました。滞在は一週間となりますが、期限を延長したい場合は国所にお申しつけください。――ようこそ、ゴール国へ」
親切丁寧な兵士――どこかお役所仕事のような男性が、俺とレナセールに声をかけてくれた。
間違いなく入国できるとは聞いていたが、それでもほっと胸をなでおろす。
門は厳重にな二重扉になっていた。
レナセールは少し怖かったのか、俺の右腕に抱き着いてきた。
こういったところで頼りにしてもらえるのは、なんだかんだで嬉しい。
「……凄いな。これが、経済の国か」
「はい。びっくりですね……」
一歩足を踏み入れると、思わず声を漏らした。
街中を鉄道が走っていたのだ。どこかスチームパンクな雰囲気が感じられる。
機械が多いと聞いていた。錬金術師としては見逃せない場所も多そうだ。
国が違えば風土も、人も変わる。王都と違って亜人はほとんどいなかった。
空を見上げれば気球が飛んでいる。なるほど、これは楽しそうなところだ。
ちらりとレナセールに視線を向けると、見たこともないほど目を輝かせていた。
彼女は欲張りな事を言わないが、俺と同じで知識欲も知的好奇心も高い。
そして――。
「まずは腹ごしらえといこうか。実は事前にチェコから美味しい店を聞いたんだ」
「そうなんですか? えへへ、楽しみです」
食べる事が何より大好きだ。
今俺たちは対等な立場でここにいる。主人と奴隷ではなく、同じ錬金術師として。
同じ気持ちを共有できることが、なによりも嬉しい。
初旅行。存分に楽しむとしよう。
少しでも面白いor期待感があると思っていただけたら、ぜひ評価と☆☆☆☆☆をお願いします( ;∀;)
ブックマークもポチッと押せば超簡単にできます。
ランキングに乗りたいんグ!!