第36話 ぴゅっぴゅっ
「ベルク様、おはようございます」
「ああ、おは――」
「んっ、ちゅっ……あぁっ……好きです。大好きです」
目覚めのキスは、日に日に激しさを増していた。
エルフの耳は感じるとぴょんぴょん動くのだが、これがまた可愛らしい。
腰に手を回すと、レナセールの華奢なくびれが服の隙間からあらわになった。
真っ白い肌。
俺と同じ石鹸だけにもかかわらず、とんでもないほどすべすべだ。
うーむ、羨ましい。
……たまには仕事をさぼってこのまま――。
「えへへ、すみません。朝ご飯食べましょうか」
「……だな」
よし、頑張ろう。
◇
「設置できました……!」
「ドキドキだな。スイッチを押してみてくれ」
「はい!」
食事を終えて、レナセールお手製の自動水やり機を庭に配置した。
まずは何もない所で試運転だ。
一日動かしてみて、問題ないのかを調べる。
サーチは、まるで見張りかのように俺たちを見ていた。
彼女は、ドキドキしながらボタンを押す。
初めは何もなかったが、やがて魔力がしっかりと媒体したのか、水が出始めた。
それは、レナセールの錬金術師としての始まりも意味していた。
「出ました。出ましたよベルク様! ぴゅっぴゅっって!」
「お、おう。出たな」
「はい! 出ました! ピュッって!」
感動も冷めやらぬうちに、まさかの擬音で思わず戸惑ってしまった。
レナセールは嬉しそうにしている。
水だけに、水を差すのはやめよう。
「ベルク様、ぴゅっぴゅっ出てます!」
「あ、ああ、出てるな」
「凄い……いっぱい出てる」
もしかして、わざとやってないか……?
しかし彼女は、満面の笑みだった。
「よし、今日は土を少し耕して終わりだ。残りは翌日にしよう」
「はい! このクワって結構重たいですね」
そう言いながらも、彼女は軽々しく持ちあげた。
ちなみにめちゃくちゃ重たかったが、何でもないふりをした。
小さなプライド、死守。
二人でクワを持ち上げ、土を柔らかくしていく。
畑もそれほど大きくないので、丁寧にしても一時間もかからなかった。
この世界にも農作物はあるので、肥料は簡単に手に入った。
明日にでも撒いておけば、少しずつ楽しみにすればいい。
ふと視線をレナセールに向けると、頬が土で汚れていた。
そういえば、エルフがクワを持った姿を初めてみた。
案外……悪くないな。
「どうしました? ベルクさ――きゃああっああ」
するとそのとき、自動水やり機がなぜか暴発した。
水が思い切りレナセールに降りかかり、白いシャツが空けて――え?
「術式を少し間違えたかもしれません……びちょびちょだ」
「かもな。それより……なんで付けてないんだ?」
「え? あ、あああっ!? わ、忘れてました。すみません!?」
ピタピタのシャツ、白い肌が透けていて、突起物があらわになっていた。
恥ずかしそうに頬を赤らめる。
「ぴゅっぴゅっ、しないようにしないように術式書き直さないと」
今日のレナセールは、言動も姿も、いつもの五倍はえっちだった。