表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/85

第23話:小さなことからコツコツと

 提出品の締め切りは、冬の終わりと春の終わり頃。

 前期と後期に分けられ、俺は後期に参加する。


 錬金術師の参加だけではなく、一般人も可能らしい。

 二級錬金術師以上は、申請すれば他の人の閲覧も可能らしく、ギルドを通じて頼めばいいとのこと。


 時間を作って、レナセールと見に行く予定だ。


「ベルク様、これくらいですか?」

「もっと細かくだな。悪いが、念入りに頼む」

「かしこまりました」


 エアコンのレシピは、当然だが頭の中に浮かんでこない。

 だが、いくつか使えそうなものがあった。


 まずは冷却魔法の結晶を作る。

 それから加工した金属の筒状のものを魔法で定着させ、外気を取り込んで循環させる。


 結晶と合わせて中に魔法陣を作れば、理論上でいえば永続的に可能だろう。

 空気循環装置のようなものだ。


 暖かいものを取り込み、冷たい空気にして排出する。

 もちろんその逆も必要だ。


 一定以上の高温を外に吐きだす装置もいる。


 問題はいくつもあった。

 まず素材がとんでもなく高価だということ。


 俺の物作りスキルは失敗も成功みたいなものだが、その分費用がかさむ。

 優勝すれば賞金が出るとのことだが、参加賞なんて優しいものはない。


 つまり、絶対に勝たねばならない。


 レナセールにも見てもらう為、ザッとレシピを書きだしていく。


 ・魔法の氷結晶 (ひとまずはスライムの欠片で代用)

 ・魔法のエネルギー供給器 × 1個

 ・魔法円描画具材料(魔法のインクや特別なペン)

 ・魔法の空気循環装置部品 (代用品なし)

 ・安全制御魔法装置 (代用品なし)

 ・冷却水素結晶 (レナセールの魔法で定着させる)



「まずは上から順番にやっていこう。魔法を使ってほしいが、身体はどうだ?」

「基本的な元素であれば問題ないと思います」


 レナセールは毎朝、毎晩、魔力を高めるために瞑想をしている。

 S級ポーションはあくまでも身体の治癒のみで、身体が整ったわけじゃない。


 精霊との対話といっていたが、一度説明されてもよくわからなかった。

 集中力はすさまじく、声をかけても気づかないこともある。


 俺の仕事や護衛で今後必要だとわかっているのだろう。本当にありがたい限りだ。

 

 俺ができることと彼女が出来ることは違うので、スライムの欠片を細かく結晶化させることを頼んだ。

 実に根気のいる作業で、丁寧でなおかつ綺麗に砕いていく。


 ふうと息を吐くだけでとんでしまいそうなので、マスクをしてもらった。


 王都では見慣れないものだが、彼女に似合っている。


 朝食を作り、昼食を作り、夕食を作り、仕事を手伝いながら愚痴の一つも零さない。


「このくらいで、どうでしょうか?」


 不安げにスライムの結晶を見せてくれたが、とても良い出来栄えだった。

 自分で判断しているのではなく、能力に頼っているので、ダメなときはダメだと言ってしまうのが申し訳なかった。


 しかしレナセールは、額の汗をぬぐって微笑む。


「えへへ、良かったです」


 優勝すれば俺の知名度も上がって、更に給与も増えるだろう。

 今の家は気に入っているが、レナセールと住みはじめ、サーチも来てから少し手狭に感じる。

 

 メインストリートからも遠く、治安も少し不安だ。


 まだ伝えてないが、優勝できたら一軒家を借りようと思っている。

 買う、とまではさすがにまだ言えないが。


「レナセール、頑張ろうな」

「はい!」


 彼女の笑顔を見るたび、より力が入った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ