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第19話:ラザーニャ姉妹

 礼儀作法は習ってないが、元日本人なら大丈夫だろうとタカをくくっていた。

 だが貴族の屋敷は想像以上の豪華なもので、中は金がふんだんに使われており、執事やメイドは何十人もいて、緊張しはじめた。


 中に入って案内されると、豪華な応接間のソファに案内される。

 机には高級そうなクッキーとコーヒーが置かれていた。


 レナセールに食べていいぞというと、嬉しそうに頬張りはじめる。


「ギルドの依頼からとはいえすんなり話が通って良かったな」

「んっ、ふぇすね。ベルク様の知名度もあったからじゃないでしょうか?」

「だといいがな。話が早くて済む」

「んっ、このクッキー凄い美味しいですよ」


 屋敷の前で、そういえばレナセールは貴族に酷い事をされたと言っていた。

 もしかして嫌な気持ちになってないだろうかと考えたが、どうやら杞憂だったらしい。


 やがて現れたのは、俺の想像していた厳格そうな彫の深い男性――ではなかった。


 透けるような銀髪が揺れ、人形のような顔立ちをした女性。

 肌は白く、黒と白のコントラストが綺麗な、スタイルが強調される服を着ている。


「よろしくお願いします。二級錬金術師のベルク・アルフォンです。こちらは、助手のレナセールです」


 思わず立ち上がり握手を求めるが、爵位を持たない私ごときがするのは失礼だとハッとした。


 しかし――。


「丁寧にありがとうございます。エルミック・ラザーニャです。どうぞ、掛けてください。――隣のお嬢さんもね」


 そんなことは気にしないらしく、レナセールに対してもニコリと微笑んだ。

 奴隷だということはギルドから伝わっているはずなので、随分と性格も良いのかもしれない。


「それより驚きました。二級だと聞いていたので随分とお歳を召した方だと思ってましたが、こんなに若い方だなんて」


 錬金術師にも、冒険者と同じランクがある。


 五級からはじまり、売り上げや品質、ギルドに頼まれたものと評価で決まるのだが、俺はすぐに二級に上がった。

 一級ともなると、ほとんどがお爺ちゃんで、二級でも多い。


 何かあるってわけではないが、信用度はけた違いだ。


「自分の性に合ってみたいで。さっそくですが、魔虫について聞かせていただけますか?」

「そうですね。発生したのは二週間前くらいでしょうか。中庭に突然と現れたんです」

「中庭? 厨房やゴミ捨て場ではなく?」

「不思議ですよね。こういったことは普段、使用人に任せるのですが、ちょっと場所が場所でして……」

「と言うと?」

「ほら、エリカ。おいで?」


 エルミックさんが手をこまねくと、現れたのは可愛らしい女の子だった。


「こちら私の妹なんです」

「妹、さんなんですか?」

「はい。両親は外交で忙しくて、私や使用人で面倒を見ているんです。で、魔虫の場所ってのが、エリカの部屋の前なんですよ」


 言われてみれば物腰は丁寧だが、エルミックさんはかなり若そうだ。

 俺と年齢はそう変わらないかもしれない。


 妹は奥手らしく、モジモジとしていた。


「今日はまず確認だけになりますが、よろしいでしょうか?」

「もちろんです。エリカ、ご挨拶なさい。こちら、二級錬金術師のベルクさんと助手のレナセールさんよ」

「……よろしくお願いします」


 随分とお姉ちゃんとは違うらしい。

 その後、誘導されて中庭へ移動するも、やけにレナセールが静かだった。


 そういえば依頼人が女性だとは知らなかった。

 いつも俺への愛が重すぎるので不安を感じていたが――。


「あら、お姉ちゃんに懐いたの。すいません、たぶんエルフ族を見るのが初めてで」

「とんでもないです! すいません、私なんかが……」


 すると、エリカちゃんがレナセールのスカートの袖を掴んでいた。

 レナセールの耳はピンと長く、まるで人形みたいだ。

 もしかすると、それのおかげかもしれない。


「そんなこと言わないでください。差し出がましいようですが、私はどなたにも敬意を払ってますので」

「……ありがとうございます」


 まだ依頼を受けるか決まってないが、俺はこの言葉を聞いた後、絶対に何とかしてあげようと思った。

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