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第10話:私の生きる意味がありませんから

「脱いでたほうがいいぞ。後で寒くなるからな」

「いえ、今日はずっと着けておきたいんです」


 服屋で買ってあげた白いマフラーを付けながら、レナセールが微笑んだ。

 安物で申し訳ないが、ここまで喜んでもらえると嬉しい。


 扉を開けて冒険者ギルドに入る。

 直後、一階の食堂兼酒場から、叫び声のような雑談が聞こえた。


「がはは、あいつ結局死んだのかよ!」

「でよお、情けなくてピーピー泣いてたんだよな」

「クッソだせえな」

 

 全員がそうではないが冒険者は荒くれものが多い。

 命をかけた戦闘を日々こなすには、あれくらいの度胸が必要なのだろう。


 受付までまっすぐ進んで、名前と登録証を見せ、依頼の引き取りを行う。


「お待たせしました。ご依頼は完了しておりますので、お引渡しをさせていただきます」


 眼鏡をかけた女性に丁寧に案内され、依頼していた素材を確認、箱に詰めていく。

 

 毒草×50。

 麻痺草×50。

 石化草×50。

 眠草×50。

 

 一つ一つ丁寧に確認していくが、足りないものがあった。

 いちばん大事な薬草だ。

 依頼書を確認してみたがどうやら俺が書き忘れていたらしい。


 これがないとすぐに試作品を作れない。

 また、単品依頼だと料金がもったいない。


 ひとまず引き取りだけ終え、近くの椅子に座った。


「帰りに商人ギルドによっていきますか?」

「いや、あそこは大口じゃないと買えないんだ。商店で買ってもいいが……たまには自分で獲りにいくか」

「大丈夫……なんでしょうか?」

「魔除けの効果もあるから、薬草がある場所に魔物がいることはめったにないよ。それに自信はないが、低級の魔物程度なら戦える。この世界に来てから身体が軽いんだ」

 

 これは本当だ。何度か魔物と戦ったが、低級くらいなら問題ない。

 といっても随分と前だが。


「レナセールは一足先に戻っていてくれ。夕方までには帰る。暖かいスープでも用意してくれていると嬉しいな」

「いえ、私も付いていきます」

「ダメだ。まだ身体が万全じゃないだろう」


 エルフ族は魔法に長けている。

 レナセールも基本的なものは使えるといっていた。

 ただ、魔法には杖が必要だが、高すぎて今は買えない。


 それでも一緒に付いてきてくれると助かるが。


「それでもベルク様を危険からお守りできる可能性はあがります。いえ、むしろこの命がなくなっても、あなたをお守りしたいのです」

「……ありがたいが、死ぬのは絶対になしだ。大きな声では言えないが、いずれまたS級ポーションを作る。俺がもし怪我をした際、助けてくれる役目がいるからな」

「……わかりました。約束します」


 といってもレナセールなら俺を守る為に無茶するだろう。

 それはそれで嬉しんだがな。


「魔力探知はできるか?」

「大丈夫だと思います。ありがとうございます。ベルク様」

「礼なんていい。危険な場所に連れて行くだけだぞ」

「いえ、ベルク様が死んでしまっては私の生きる意味がありませんから」


 流石に言いすぎだと思うが眼は真実だと語っていた。

 レナセールはどんな時も俺の傍からはなれない。

 俺が寝るまでずっと起きていて、朝は俺より先に目覚めている。


 奴隷といえども流石に仕えすぎだと思うが、好きでやっていますからと言われた。


 俺たちは一度家に戻ると、しっかりとした準備と確認をしてから門の外へ向かった。

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