リスタート
「やぁ坊主。目覚めたかい?」
気がついたら、ここにいた。まるで深海のように真っ青な空間に。
「女神って実在したんだな。」
とりあえず冷静を偽る。俺の目の前には、髪の長い、天輪が頭上にある、女神と言うよりかは天使に近い女が、理科室とか美術室にあるような背もたれのない椅子に足を組んで座っている。そいつの約5メートル前に、俺があぐらをかいて座っている。
「おいおい少年、冷静を偽ったってここでは無意味だぞ?君は既に死んでいるからな。」
"死んだ"という事実が、脳を支配する。何度も死のうと試みた自分が映る。異世界転生系の物語を読んで、死んだら最強になってやり直せるんだという根拠のない嘘に縋って、寿命という限られた時間の中で独り、楽な死に方を模索した。死に値する苦痛に耐えれば死ねる。それが最終的な結論で、楽な死に方なんてない。俺は苦痛に耐え、嘘を信じた結果ここに来た。
「混乱するのもおかしくない。ここは天界。下界で死んだ者が一時的に訪れる場所だ。」
「なぁ、お前は女神なんだろ?俺を最強にしてやり直させてくr…」
「お前は命をなんだと思ってる?次があるかも分からないのに何故自身の命を捨てる行為ができる?お前の母がどんな思いでお前を産んだか考えてみろ。どうしてそんなに大きく成長出来たか考えてみろ。全部、両親の愛じゃないか。0歳の誕生日プレゼントをああも容易く捨てられた親の気持ちを考えてみろ。そんなことも考えられない人間を誰が生き返らせる?」
ぐうの音も出なかった。俺は、ここまで育ててくれた親に、何かお返しできただろうか。…今考えたってもう遅かった。時間は戻せない。俺は静かに涙を流すことしか出来なかった。
「貴様に死の宣告を告げ」
「まて。」
突如、上から人が…いや、神が降りた。
「その失敗を踏まえて、もう一度やり直す勇気が君にはあるかい?」
それは神にしては幼く見えた。…俺の考えはもう決めていた。
「…もう、いいんだ。親に感謝すらできない奴が今更やり直したって…」
「いい加減にしろよ。」幼い神は俺の胸ぐらを掴んで言った。
「君のその台詞から、反省の意が見えた。反省できたのは評価しよう。問題はそこじゃない。反省したなら償えよ。心の中でごめんなさいして、それで終わりだと思うな。…ここで選べ。永遠の無、終わりのない"死"か、もう一度"やり直す"か。」
俺は2度も神を怒らせた。その事実が、事の重大さを物語ってる。
_もう、覚悟は出来た。
「"やり直す"」
「本当に、いいんだね?」
「ああ。二言はねぇ。」
「…はぁ。」
呆れた顔で神は言う。
「もうこれ以上、失望させないでくれ。…」
「…、………。」
俺は、これから生き返る。さっきから女神は口を開かないが、それだけあの神は偉いんだろう。まぁ、今の俺には関係ない。
__次は、真っ直ぐ生きようと、神に誓ったから。
次話もよろしくお願いいたします。