第六話 退院
「章くん、準備終わった?」
看護師さんが様子を見に僕の部屋まで来た。
「もう僕は退院するんだからわざわざ心配して見に来なくても大丈夫ですよ。」
やれやれ、今までだって大丈夫じゃなかったことなんてなかっただろうに…
「もう、章くんはまたそんなこと言って…いい?治ったからって調子に乗ってるこの時期が実は一番危ないんだよ!」
「はーい、もう100回は聞きましたよっと…」
ふぅ、これで準備完了!
「退院準備終わりましたー」
「はーい、お母さんももう来るからそれまでにみんなに挨拶しておいで」
あいさつ、あいさつかー、
「挨拶しに行くか〜、じゃあ、そこにいるみんな以外に挨拶する人いたっけ?」
看護師さんの後ろにぞろっとみんなが並んでいる。
「あ~、バレちゃいました?」
「そりゃね!てか、隠れようとしてたのそれ…」
〜2時間後〜
「うわ~、疲れたー」
「お疲れ様〜、なんか大変だったね」
「ホントですよまったく、」
まぁ、楽しかったからいいけど…
「まぁ、楽しそうだったしいいじゃないですか。」
「むっ、心でもよんだの?」
こんなくだらない会話もこれで最後。
「章、ほらもう行くよ、おばあちゃんたちも来てるんだから。あ、先生、どうもありがとうございました」
そう言って、頭を一度下げたら二人並んで病院を去る。
この光景だけは、何度見ても喜びと寂しさのまじる不思議な時間だ。
私はそう思いながら手を振り続けた。
入院生活は今回で最終回になります。
最後まで見ていただいた皆さん本当にありがとうございました。
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