第五話 病院にサンタさん
「もうすぐクリスマスですね~」
看護師さんが話しかけてきた。
「ですね〜、花菜さんは彼氏さんと一緒に過ごすんですか?」
ちなみに僕は病院にいる看護師さんとお医者さん全員の名前を覚えている。
付き合っているか否かも。
「も~、章くん!私に彼氏いないの知ってて言ってるでしょ!」
あ~あ、禁句になっていたようだ。
「え?いやいや知りませんよ〜、だって花菜さん美人ですし!」
と、とりあえず話題を変えよう、そうしよう。
「こ、今年もサンタさん来るの…」
そこまで行って気づいた、花菜さんまだこの病院来て1年経ってなかった。
「え、サンタさんが来るの?病院に?」
ほーら、(あ~、サンタさん信じてるんだ〜)って顔
してますよこの人
「はい、プレゼント渡しに来るんですよ。去年は陽太くんがサンタさん見て泣いちゃって大変だったんですよ~、本当は斎藤先生なのに…」
おっと口が滑った。
僕の病室が個室で良かった。
子供の夢を壊しちゃ悪いからね♪
「なんだ、章くんが信じてるんだと思ったのに」
あ~あ、露骨に残念そう。
おねーちゃんムーブしたかったのかな?
「いやだって、斎藤先生がサンタ衣装脱いでるとこ見つけちゃったし」
「あー、それは斎藤先生が悪いわ」
次の日に患者全員がサンタさんに頼む物を書いた。
物に限定したのは最近で、前までは元気な体とかたくさんのおかしとか頼まれて病院側が対応に困ったのだという。
ちなみに、おかしが困る理由は食事制限が一番の理由らしい。
〜12月25日〜
いつも味気ない病院が今日は輝いている。
クリスマスの装飾だ。
この病院には多くの子供がいる。
一見元気そうな子から、カテーテルをつけて車椅子で移動する子まで様々だ。
だから、中には夜絶対に起こしてはいけない子もいる
そこで、ここの病院では25日、クリスマスの日に、全員分のプレゼントを持ったサンタさんが来てプレゼントを渡してくれる。
自分で歩けない子は部屋までサンタさんが来てくれる。
「お兄ちゃんは何もらうの?」
今日は子供たちが一段と元気だ。
病院なのに、
「う~ん、秘密!」
まぁ、別に言ってもいいんだけどなんとなく秘密にすることにした。
そういや、俺がプレゼントを誰かに教えたことなんてほとんどなかったな、
「え〜?、お兄ちゃんまた秘密なの、去年も秘密だったじゃん」
ウィーン
病院にサンタさんが入ってきた。
「ほら、サンタさんが来たぞ…」
「サンタさんだ~、プレゼントちょうだい!」
みんなすぐにサンタさんのもとに向かう。
「俺いい子にしてたよ」とか、「私もいい子にしてた」とか言ってる。
こうして普通にしているだけで、俺の順番は最後になる。
そうして、みんな自分のプレゼントを貰い自分の病室に戻っていく。
さ~て、僕もサンタさんにプレゼントを貰うとしますか。
「あ、おーい章くん。」
貰いに行く前から来てもらえた。名前言っちゃってるし、
「え!、サンタさんなんで僕の名前知ってるの!?」
とりあえず驚くか、
「あー、いや、俺のこと気づいてるでしょ?」
俺には演技してくれないそうだ、残念。
「あ、はい。お勤めご苦労様です」
まずは、労っとこう。
「お勤めって、まぁいいや。はいこれプレゼント。」
む~、なんかさ~
「僕のときだけ雑すぎません?」
「いやだって、恥ずいじゃんバレてんだし」
うーむ、一理あるな。
「まぁ、それもそうっすね。プレゼントありがとうございます。」
「あぁ、こっちこそありがとな。みんなにバラさないでくれて。」
「バラしませんよ。てか、めっちゃ嬉しそうだったしバラせませんよ。」
先生は僕を鬼だとでも思ってるんだろうか?
「わりーわりー、そんじゃ、メリクリ」
「はーい、先生も彼女さんと楽しく過ごしてくださいね。」
「えっ、なんで知ってんの?」
「えっ?だって先生隠し事下手なんですもん。」
そうして呆けた顔をした先生に手を振りながら病室に戻った。
みなさん、メリークリスマスです!
いかがでしたでしょうか?
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楽しいクリスマスをお過ごしください




