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第0章 プロローグ

初めまして、日野萬田リンと申します。"花火"をテーマにして異世界人との交流を描いたハートフルストーリー(予定)です。

 大きな音とともに夜空に咲く一輪の花。

 

 仕事の手が止まる。家族のだんらんが止まる。時が止まったかのように、町の人々は夜空に咲く花に目を奪われる。それは彼女も同様だ。この花を見て彼女は何を感じ、何を思っているだろうか。


 確信する。きっと俺がこの世界に来た意味は、この瞬間のためだったのだと。そして、夜空に手を伸ばし宣言した。


 「異世界で、ドカンと一花咲かせましょう!」





 俺の名前は九条(くじょう)(ひかる)。○○高校に通う普通の高校生。確か、俺は学校が終わって家に帰る途中だったはずだ。オーケー、記憶ははっきりしている。


 俺の前には一人のたくさんの書類を抱えた男性が立っている。見ない服装だ。周囲を見渡してみる。どうやら、石造りの建物の中にいるようだ。


 もしかして……、誘拐?


 目の前の男性が手に持っていた書類を落とす。おいおい、書類がばらばらになっちまったぞ。拾うの面倒なんじゃないのか?


 男性は眼鏡をはずして、レンズを丁寧に拭いてから再び眼鏡をかけてこちらを見る。まるで未確認生命体を見たような表情だ。


 「し……。」


 「し?」


 「しっ、知らせないと!!」


 その男性は俺の手を取って走り始める。訳が分からないが、引きずられるわけにはいかないので、俺も慌てて足を動かす。というか、この人足めちゃくちゃ速い。ほとんど引きずられるように俺は一つの部屋まで連れていかれた。


 男性は重々しい扉を勢いよく開ける。中では丸いテーブルを囲むように、険しい表情をした男が数人座っていた。そのうちの一人、初老の男性がしゃべりだす。


 「おい、パスカル。今は国政に関する会議中だと分かっていただろう。それを邪魔するとはどういう了見だ。」


 「王よ、緊急事態です!召喚の魔法陣が急に発動し、この男が魔法陣の上に……。」


 「何?」


 俺を連れてきた男性はどうやらパスカルという名前らしい。それに話しているもう一人の男性は王だという。なるほど、これは映画の撮影か、一般人を巻き込んだドッキリの可能性が濃厚だ。一般人が急に異世界召喚されたらどんな反応を示すのか、面白がったテレビ局がやりそうなことだ。随分と手の込んだドッキリではあるが。


 「お主、一つ質問がある。余は何語をしゃべっている?」


 「え、日本語でしょう。」


 「ニホン語とな。ううむ、間違いないようじゃな。」


 質問の意図がさっぱりわからない。しかし、この人の口にする"日本"という言葉は随分と片言に感じるな。姿も日本人っぽくないし、外国人なのだろう。その割に日本語が上手だ。


 「驚かずに聞いてほしい。お主はどうやら異なる世界から召喚されたようだ。こちらの世界にニホンという国はない。」


 「でも、あなたも日本語を話しているじゃないですか。」


 「それは異世界から召喚された者が言語で不自由しないように、自動的に言語が翻訳されるようになっているらしい。しかし、こちらの世界にない言葉はうまく翻訳されず、そのまま伝わるようじゃ。この国はハイゼンベルグ王国。話している言語はハイゼンベルグ語だ。」


 本当によくできたドッキリだ。そんなところまで設定を作りこんでいるとは。


 「そして、余はハイゼンベルグ王国第35代国王のデーツ=ハイゼンベルグだ。ふむ、一度いろいろ検査しなくてはならんな。パスカル、任せてもよいか?」


 「分かりました。」


 何やら検査されてしまうらしい。しかし、俺にはそんな時間はない。さっさと家に帰りたいのだ。


 「あの、家に帰りたいのですが、どこから帰ればいいんですか?」


 全員が口をつぐむ。ただ一人、王様だけが重々しく口を開いた。


 「魔法陣により召喚されたものを元の世界に返す方法は分かっておらぬ。そもそも異世界から人を召喚するなど、人の力だけでは為せぬもの。我々ではどうすることもできぬ。」


 「は?」


 俺はその場で大声で喚き散らし、大きなテーブルに駆け寄り思い切り拳をたたきつける。最終的には駆け付けた騎士に取り押さえられることとなった。





 今、俺は王城の客室の一つを与えられて、そのベッドに倒れ伏している。信じたくないが、俺はどうやら異世界に召喚されてしまったらしい。おまけに元の世界に帰る方法すら分からないと来た。


 パスカルさんがいろいろな検査を行ってくれた。その途中でいろいろ教えてもらったこともある。パスカルさんに教えてもらったことを心の中で反芻する。


 まず、召喚について。本来異世界からの召喚は、世界が危機に瀕した際に勇者を召喚するために、神の力を借りて行われるものらしい。神が勇者を不要だと判断していた場合、魔法陣はうんともすんとも言わず、誰も召喚することはできない。


 では、俺は勇者として召喚されたのか?この質問については、検査の結果でノーと判断された。というのも、俺には特別な力が一切備わっておらず、身体能力もこの世界の平均以下のようだ。正真正銘、元の世界にいた時の俺のままだということが分かり、勇者として召喚されたわけではないと判断された。


 そうなると、俺はなぜ召喚されたのか?パスカルさんにこの質問をしたところ、帰ってきた答えは「分からない。」だった。そもそも、以前勇者を召喚したのは千年以上前のことで、記録としては残っているが誰も勇者召喚を行おうなどと思っていなかった。何なら、魔法陣の存在すらも忘れている人も多く、改めて見たところ、ほこりが大量にたまっていたとのこと。

 たまたま通りがかったパスカルさんが、魔法の光を見て扉を開けたところ、召喚直後の俺とご対面というわけだ。


 そして、帰る方法。現時点では(・・・・・)ない。さすがに急に召喚された俺を追放しろなどという薄情な輩はおらず、国としては最大限帰還の方法を探してくれるそうだ。それには神の力が不可欠とのことで、教会にも協力を要請するらしい。しかし、神はめったに人の呼びかけに答えないので、時間がかかってしまう可能性が濃厚とのこと。

 こんな時くらい頼むから仕事してくれ、神様。


 「じいちゃん……、心配してるかな……。」


 俺は幼いころに両親を事故で亡くしている。俺を引き取ってくれたじいちゃんは男手一つで俺をここまで育ててくれた。急に行方不明になってきっと心配しているだろう。しかも、帰る目途が立っていない。もしかしたら今生の別れとなってしまったのかもしれないのだ。もう会えないかもしれないと考えると、涙がこみあげてくる。


 「きっと夢なんだ。ここで寝ればきっと家の布団で目を覚ますはずだ。」


 そう自分に言い聞かせ、俺は布団にくるまり目を閉じた。





 扉がノックされる音で目を覚ます。入ってきたのはどうやらメイドさんのようだ。夢ではなかった、という事実に改めてショックを受ける。


 メイドさんは朝食を持ってきてくれたようだ。手早く、部屋に置かれていたテーブルに皿が並べられる。そう言えば、召喚されてから何も食べていなかったことを思い出した。俺はありがたく、用意された朝食をいただくことにする。少し味が濃いが、食事に関する文明レベルはそこそこ高いようだ。そして何より驚いたのは()の存在だ。ヨーロッパ風の世界だからパンばかりだと思っていたが、どうやら稲作も行っているらしい。朝は米派なので助かる。


 メイドさんから今日の予定を教えられる。どうやらこの世界のことをいろいろ案内し、説明してくれるそうだ。そのために一人案内役がこの後に来ることになっているらしい。


 俺は用意された服に着替え、案内役が訪れるのを待つ。


 待つこと数十分、部屋がノックされる。扉が開かれた先には、同い年くらいの女の子が立っていた。


 「初めまして、異世界のご客人。私はウェスタン公爵家長女、フィーア=ウェスタンと申します。本日よりあなたにこちらの世界を教える役割を任せられました。」


 そう言って恭しく礼をする。公爵令嬢ってかなり身分高いんじゃないのか?そんな人が案内してくれるとは、国としては俺のことを割と問題視しているのかもしれないな。


 貴族の礼節など一切知らないため、不恰好な礼をする。


 「えっと、九条光です。よろしくお願いします。」


 異世界での新しい生活が今日から始まる。

第0章いかがだったでしょうか。夏と言えば、"花火"。今年の夏は花火を見に行きたいです。


基本的には不定期更新になります。書けたらかけた分だけ投稿していきますので、気が向いたときに読みに来ていただけたら嬉しいです。ただ、この夏はできる限り頑張って1章は絶対に終わらせます。

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