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5章 リューナ=イヴォルの女王 〜導入〜
その街には、年に一度祭りがあった。
『騎士狩祭』。狩人達が騎士に挑み、覇者を決める伝統的なお祭り。しかし十年もの間狩人は優勝しておらず、観戦に来る貴族達の要望により、伝統は崩壊寸前だった。
街の名は、イヴォル。危険な魔物が多く生息する地域と隣接する、大壁で隔てられた境界都市。その内側は、領主のシーザーの栄光を目指して励む騎士と腕自慢の狩人が大勢暮らすーー騎士団の本拠地で女帝が座する北部で最も強い街。
フラウの父、シーザーに会うためにイヴォルに着いたレノン達は、祭りの危機を知る。参加するかどうか悩むレノン達だが、優勝者に与えられる栄誉を知りーー
笑顔の商人、冷徹な貴人、お忍びの要人。祭りを見守るそれぞれは、何を目当てにここに来た。イヴォルに来たなら何を為す。
ーーさて、今一度お伺い致します。この国で一番偉いのは、誰ですか?




