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天才魔女との憑依同盟  作者: アサオニシサル
4章 邂逅の悪魔と幻の竜
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88話 願いへと続く道(後編)

「では、名残惜しいですが……お別れですね」


 一晩休んだ朝、巫女は僕達を前に寂しそうに言った。


「昨日の宿も含め、最後の最後まで良くして頂いてありがとうございました。お陰で私達の仕事に専念出来ました」

「イリューゲの事、宜しくお願いしますね!」


 セレーナの別れの言葉に帰る全員が礼をした。それに僕が付け足した。


「任せろ。俺もバロンもいるし……その、巫女様もいらっしゃる。悪いようにはならないさ」


「兄ちゃんこそ鎧着てないし、もっと頑張ってよ?」

「あはは……そうだよね……」


 イリューゲの不意打ちには苦笑いしか出来ない。


(鎧なんか良いわ。なくても我が弟子みたいに強くなれるもん。それより大分良くなってきたみたいだし、また魔法の練習しなきゃね)

(セレーナさんが許可を出してくれるか分からないけど……師匠もいるし、教えてもらえないかもう一度頼んでみるよ)

(私がいるんだから無理とは言わせないわ)

(頼りになるね)


 是非ともお願いしたいものだ。いつも強引だから師匠が可哀想な気がするけど。


「レノン」

「何でしょう?」


 声をかけたザックは僕の側まで歩み寄り、


「しっかり獣王様に謁見出来るメイジスになったじゃんかよ」


 背中を叩いて声をかける。


「ザックさんーー」

(そう言えば間違えて森に入っちゃった時に、そんな話もしたわね)

(うん。覚えてくれていたんだね)


 いつか僕もそんな人になりたいって、話をした。まだ守護騎士どころか、騎士にもなれていないけど。


「どうだった? 我らがティマルスを守護する獣王様はーー」

「ーー慈悲深くて、民を守る事を考える、とても偉大な方でした」


 ザックは笑って、


「まさかとは思っていたが、お前は果たしちまったーー次は守護騎士だな」

「はい! 頑張って目指します!」


 僕が答えると、彼も頷いて軽く手を振って戻っていった。


「そう言えば……ねぇセレーナ、他の騎士の人はどうしたの?」


 フラウが周りを見て尋ねる。


「一足先に帰ってもらう事にしました。馬車別ですし」

「あれ、そうだったんですか? てっきり皆様は一緒に帰られると思っていましたが……」

「セレーナさんにしては珍しいですね。何かやり残した事があったんですか?」


 巫女と僕が疑問に思って質問をすると、


「い、いえ! 何もないですが……! そう、気分です! この人数で帰りたい気分だったんですよ!」


 セレーナは少し焦りながら答えた。


(敬語になったわね)

(先輩が居たら確実に突っ込まれているよね……先輩…………)

(な、何勝手に暗くなっているのよ!)

(……そうだよね)


 僕は首を振って切り替える。変わらずフラウとラドは不思議そうにセレーナを見ていた。


「話は変わりますけど、これ! 渡そうと思っていたんです!」


 巫女はそう言って僕達に札を渡した。


「これは?」

「私への顔パス券です。これを身分証と一緒に提示したら通すように伝えます。本当にいつでも会えますよ? 何かがあったら、誇れるものが増えたら、気が向いたら、私に会いに来て頼ってください」

「頂いても宜しいのですか?」

「はい。仲良しの証として何かを渡したいと思ったのでーーこれ、爺様にも手伝ってもらったんですよ? なのでこれには特別な魔力が込められているんです。爺様が手を貸してくださらなかったので、この五人分までは作れませんでしたが、丁度良かったですね」


 導師はそっぽを向いて目を閉じた。


「一体どんな力が……?」


 僕はもらったお札を見る。他の四人もそれぞれ不思議そうに見ていた。


「それは次に会いに来た時のお楽しみですよーーですが一人三分程度で込めてもらった機能なので、命を救うような凄いのは期待しないでくださいね」

「巫女様からこんなものがもらえるなんて光栄です。ありがとうございます!」


 皆お礼を言うと、巫女も満足したという笑顔を見せて下がった。代わって指揮長が前に出た。


「女二人で長い尺を取ったなーー簡単にだがオレにも話をさせろ。諸君らは指示通り、期待以上に仕事をこなしてくれる完璧な戦士達だった。我々音の森の本来の姿と、我々オウムの凄さを見せる機会がなかったのが残念だが……」

「いつかまた来ます。その時に元に戻った森と本来の生活を見せてもらえたらと思います」

「守護騎士ラド。お前の活躍にはオレも耳を傾けるとしよう」

「ゼクシムと仲良くするんだゾ」


 パロが横目に言った。


「……余計な世話だ」

「セレーナもだゾ」

「ええ、ありがとうございます」


 笑顔で返す彼女に、


「ちゃんと仲良くするんだゾ」


 じっとセレーナを見つめながら言う。


「え、ええ。そうですね。はい、仲良くしていくつもりですから」


 頭を撫でながら言った。慣れていないのか、若干ぎこちなかった。


「ところで、お前達はどこに行くのかもう決まっているのか?」


 師匠がラドに向かって聞く。


「何を言っているんだお前。リューナに帰るに決まっているだろう。お前も行くんだよ。どうにか頼み込んでみるつもりーー」

「だが全員の意見は一致していないだろう?」


 フラウを見ながら師匠は言った。


「えっーー」

「イヴォルに行きたいと言っていなかったか?」

「そう簡単な話ではない。お嬢様の立場を理解しているのか?」

「だが、行きたいのだろう?」


 彼はフラウに問いかける。少し黙っていたが、息を吸って、閉じていた口を開いた。


「ーーはい。イヴォルに行きたいです! お父様に……会いたいです!」

「お、お嬢様!」

「そうか」

「えっ? あっーー」


 それだけ呟くと、彼はフラウを抱えて浮かび上がった。僕も彼の魔法で風に吹かれて身体を持ち上げられる。


「貴様ああっ! どういうつもりだ!」

「俺は、イヴォルに行く」

「ふざけた事を言ってないで戻って来い! そんな事をしたらーー」

「迷う事はない。道は分かる。昔行った事があるからな」

「そういう事を言っているわけではない! アメリア様が許さないぞ……! 今もう一度機会があるかも知れないのに、二度と騎士にはなれないぞ!」


 ラドは空に向かって怒鳴る。


「俺は、騎士にはなるつもりはないーー」


 彼はさも当然というような調子で言った。


「な、何……!?」

「気づいたんだ。俺は目の前にいる人の力になりたいんだって。だから本当にその人の助けになるなら、善悪なんてどうでも良い。騎士のように、知らない誰かのためーー正義のためには戦えない」

「お前……久々に会ったと思えばそんな事を言いやがって……!」

(良いじゃない。きっとそっちの方が楽しいわ)

「ゼクシムー! 私も連れて行ってー!」


 セレーナも空に向かって大きな声で叫ぶ。


「セレーナ! お前、そんな事……!」


 ラドが驚きの声を上げる。


「良いでしょ? お嬢様ももう立派になったし、かけがえのない経験になるし。私達が護衛すれば安全よ!」

「それで良いんだゾ。自分に正直なのが一番だゾ」

「だが三人、いや四人か……結構無茶だな……」

「勝手に数に入れるな!」

「ハハハ! 自分に正直が一番、その通りだとも! よーし、パロ! オマエも行けい!」


 指揮長が笑っていきなり言い出した。


「要するに、送り届けてやれば良いんだゾ?」

「オレの指示が伝わらないか? オマエも一緒にイヴォルを見てこいと言っているのだ!」

「指揮長!? どういう事だゾ? 全く分からないんだゾ!」


 パロは焦って羽をバタつかせながら言った。


「ずっとメイジステンに興味があったのだろう?」

「な、何でそれを知っているんだゾ!?」

「そうでもなければ、あんなに複雑な帝国語など必死に覚えようとするわけがない。そして音の森にはオレがいる! もう一羽話せたとしても宝の持ち腐れだ!」

「でも! オレは指揮長より話すのが下手だゾ。だからそれならーー」

「オレはもう指揮長になってしまった。だから今のうちに行っておけ。話すのももっと上手くなれ。メイジステンの魔法や文化を見て理解してこい。これからの時代はメイジステンとの交流が必要になる……気がする! 新時代のオウムになれ! パロ!」


 パロは指揮長の顔を見る。パロは不安そうな顔をするが、指揮長は首を振る。そしてその後頷いた。


「そう言ってくれるならーー分かったゾ。オレはメイジステンに行くんだゾ!」


 そう言って前に飛び出すと、巨大化する。


「乗るんだゾ! 二人くらいなら運んで見せるんだゾ!」

「はい! では、失礼しますーー」


 セレーナが背中に飛び乗る。


「グエー、重たいんだゾ」

「よ、鎧です! 鎧が重いだけですからね!」


 焦った様子で彼の背中を叩いていた。


「ラドも早く乗るんだゾ」

「だから俺はな……! というか何でセレーナはーー」


 そこでパロを見てセレーナを見てハッとした。


「まさかお前! 先に帰らせたのってこれを見越してか!」

「ゼクシムなら、もしかしたらそう言うんじゃないかって思って動いておいただけの話よ」

「だがな……! どうするつもりだ? お前は医長の地位がーー」

「ーー行くか」

「ちょっ!? 師匠!」


 そう言うとラドを置いて空を移動し始めた。


「俺達も行くゾ!」

「強化をかけるので、お願いします!」

「めっちゃ軽くなったゾー! 上手なんだゾー!」


 パロもそう言うと飛び上がる。


「待て! ゼクシム!」

「あ、あの……一応ラドも……」


 フラウが師匠に言うと、


「心配しなくとも構わない」

「えっ?」

「やつはーー飛べる!」

「待てって言っただろうが! ゼエェクシムウウウゥゥ!!」


 背中から巨大な一対の炎の翼を生やして飛び上がった。


「おわっ!? 本当だ!」

「初めて見た……!」

「やっぱメイジスは凄いんだゾ……!」

「だがパロ。よく見てやっていてほしい」


 ラドは険しい顔をして飛び続けているがーー


「あれは戦闘用だ。つまりーー非常に燃費が悪い」

「くっ……舐めるなああああ!」


 確かに険しい顔をしている。結構辛そうだ。


「ラド! 無理しないで! パロさんに捕まって!」

「この先はイヴォルだよ! 危険魔物地域だよ!」

「追いついてやったぞおおおお!」


 そうは言いながらも僕達の目の前にまで迫ってきた。


「さすがだな」


 そう言った後、その翼に軽く息を吹きかけた。それが魔法の引き金となって風を起こし、翼の炎を綺麗に吹き消した。


「おま……ふざけ…………クソおおおおお!」

「はい! まったく、危ないったらありゃしない……」


 セレーナが上手くラドを受け止めてパロの背中に降ろす。


「助かるんだゾ。そのままだったら避けてたんだゾ」

「乗せてもらっていますから。それよりも、騒がしくてごめんなさいね」

「むしろそっちの方が良いんだゾ。音の森の民はいつも賑やか元気だゾ!」


 そう言うと、羽ばたいてより高く、僕達の頭上まで舞い上がった。


「いよいよイヴォルだね」

「うん。皆のお陰ーーその、ゼクシムさん、ありがとうございます!」

「喜んでもらえて何よりだ。フラウ嬢、これからも良好な関係を築いていきたい。具体的に言えば、昔の事は忘れてほしい」

「えっと……? と、とにかく、はい! 宜しくお願いします!」


 期待に目を輝かせて言った。


(あー、なるほどー。忘れろなんてゼクシムらしくない事言っていると思ったらーー優しく、仲良くってそういう意味だったのね)

(ーーどういう意味?)

(うーん! 違うかも知れないから教えない! はー、それにしてもイヴォルねぇ。懐かしいけど、変わってないんでしょうね。街も、領主も)

(まあ良いや。僕には初めてだから楽しみだよ)

(街の中も外も魔物だらけよ。中にいるのは狩られた後だったり自慢話の噛ませだったりだけどね)


 彼女は乗り気じゃなさそうに言うが、僕はそれを聞いてむしろ楽しみになってきた。きっと今の僕の目は、フラウに負けないくらい輝いているのだろう。


「いよいよお父さんに会えるね」

「うん、レノンもありがとう!」

「これはフラウが自分で選んだ結果だから。それに、喜ぶのは会ったからでも遅くない」

「うん! 後もう一息、頑張ろうね!」

「頑張ろう!」


 僕は頷いて言う。下を見ると、ずっと手を振って声をかけてくれていた巫女は遠く、姿さえ見えなくなっていた。森も小さくなっていく。前を向くと、見慣れたメイジステンの平野が広がっていた。

 イヴォルとはどのようなところなのだろうか。魔物が多く暮らす場所なら、この景色よりもティマルスの方が近いのだろうか。そんな期待を膨らませながら、僕は次の景色を目指すのだった。



 ◆



「ねえねえ聞いた? あの従騎士の話ーー」


 食堂で席に着くと聞きたくなくても聞こえてくる声。従騎士の話。従騎士の噂と言えばこれまで私だったのにーー


「あの子でしょ? あの……そうレノン! ティマルスでセレーナ様と一緒に最後まで戦っていたらしいよね」

「それ聞いたー。セレーナ様と一緒に前線にも出たって噂あるらしいよ。それって結構凄くない?」

「どうせ出たいって無茶言って、助けてもらいながらちょっと戦わせてもらっただけでしょ? だってセレーナ様はお優しいし!」

「確かにやる気だけは凄いあるんだよねー。剣の訓練も鎧の訓練も下手めだけど、もしかしたら伸びるかも?」

「うっそ!? もしかして偉くなっちゃう感じ? この前何か聞いてきたけど雑にあしらっちゃった。根に持ってるかな?」

「別に大丈夫だろ。皆そんなもんだし。もしろ次優しくしてあげたら喜ぶんじゃん?」

「レノンとか良いからとにかくセレーナ様帰ってきてほしいわー」

「本当にね。エイミーちゃんったら毎日大伯に聞いていたもんね」

「大伯も外出されて長いから最近は団長に聞きに行っているらしいけどーー」


 聞きたくないのに何故か耳を澄ましてしまう。自分の悪口を言われていないか気になってしまう。惨めにも一人だけ帰ってきた私の悪口を。どうせ皆思っているくせにその話はしないで、その代わりに聞きたくもない話ばかりで頭にくる。

 ここに戻ってきたこんな状態の私に、仕事以外の時間にわざわざ話しかける人はいない。訓練上の付き合いで、親しい友達なんていないし。

 ーーと、思っていたその時、私の前の椅子が引かれた。


「ここ座りますねーー大丈夫ですか? ミスティーリアさん。ご飯冷めちゃいますよ?」

「何の用ですか? 席なら他にも空いているじゃないですか」

「だって、ミスティーリアさん辛そうですもん。ですが大丈夫です。私が力になりますからね」

「力にって……」

「誰かに虐められていないですか? 悩みがあったら話してみてください。私が、あなたを守りますからね」


 その目は真剣だった。憐みでもなく、慈愛でもなく、深刻に物事を捉えているという目だった。


「あ、あの! この前にーー」



 ◆



 これまでかというくらい煌びやかな装飾が施された椅子に背をつける一人の男。その椅子が置いてあるただただ広い部屋に跪く者が二人。


「報告します。あのヘイリースがやられたそうです。ティマルスの件は失敗となりました」


 杖をつく必要がある程年老いた男が、嗄れた声で言った。


「……ふむ」

「私が遅かったと言えましょう。ご命令を受けてからはリオナに圧力をかけ、その後も見張っていましたが……既に向かわせた後でした。更なる援軍は絶ったとはいえ……ヘイリースの机上の空論を実現するにしては、再現度を上げ切る事が叶いませんでした」


 厳つい鎧には似合わない歌うような美声が語った。


「器は回収出来たのか?」

「……いえ。手は回したのですが、第二、第四、両方の器を回収する事に失敗しました。どちらも生存しております」


 老人が答える。


「第四の器ーーイリューゲも生存しているとな? 第二の器でなくとも、絶大な魔力を持つ器という存在は死体ですら価値がある。回収すべきであろう」

「不思議な事ですが、魔物共にしてやられたという事でしょう。これでは現状取り返すのは困難です」

「アハハハハハ! 二人共全っ然ダメじゃん! そしてそれを許した皇帝気取りもか」


 立ちっぱなしの少年が笑いながら話す。


「御前ですよ。軽率な発言は慎んで頂きたいものです。そもそも私はヘイリースの言う通りにーー」

「元とは言っても何十年も前の話、今は四天王じゃないヘイリースの言う事を聞いたからこんな結果になっているんじゃんか。もっと戦力入れてぶっ潰せば良かったんだよ! だから純粋にお前らの失敗だね!」

「例え先帝の息子と言えど、今の皇帝はセルゲイ様であられます。我が失敗も認めます。しかし、そのような態度を取るお前が一番の失態を晒していると知りなさい!」

「静粛にーー」


 皇帝は座ったまま手を伸ばして述べた。


「兵力を割けばティマルスは団結すると判断した故の指示だ。全力で叩けば落とせただろう。しかし過去幾度も行われた侵略戦争の失敗から察するに、我らも多くを失う。本命に当てる余力を残さずして完全な世界帝国は完成しない」

「その結果失敗しているとか意味ないない。ヘイリースが第四の器に創造魔法の適正があるからとか言って色々教え込んだみたいだけど、結局自分が強くなくちゃね。他のに頼って気取っているだけでは圧倒的な力は宿らないね」

「貴様ッ! よくも陛下にそこまで!」

「良い。紅くなるまで熱くなるな。其方の美しい声が焦げる。この程度、若き故の戯言よーーそちらは上手く事は進んでいるのか?」

「こっち? ああ、悪魔退治の事ね。順調だよ。リオナとも話はつけたし。後は来たらやるだけ。僕には退屈過ぎて欠伸が出るね」


 手で仰ぎながら少年は言った。


「魔法の適正の問題だ。いつまでもあれを徘徊させておくのはいい加減目障り故な。それに、既に真の目的がある事は伝えたであろう」

「倒す事自体は僕一人でも楽勝なんだけどね。本当に面倒な悪魔だよーー」


 そして辺りを見回してーー


「というかさ……またあいついないの?」

「あれはそういう存在なのだ」

「まあ会いたくもないけどさ。別に。完全清潔な僕が年寄りばっかで臭いがついちゃうよ……とにかくもう出るよ。次会うまでにその席を空けといても構わないからね」


 彼は言い残し、立ち去ろうとする。


「レックーー」

「殿下をつけろ。汚い血の成り上がり皇帝気取り」


 堂々と名前を呼んだそれを睨みつけた。


「貴様の魔法は信頼している。しかし如何なる事態が起きようと、悪魔から目を離すな。そして、言われた事だけを確実にこなせ」

「老いぼれ達と違って僕は目を凝らさなくても良く見えるんだよ! じゃあな!」


 今度こそ少年は去っていった。


「小僧め……! どうして直系のメイジステンはこうも揃って無能ばかりなのか……!」

「困ったものですな……」

「その老いぼれも、次こそ失敗は許されぬぞ。他は後回しでも良い。これだけは確実にこなせ」

「はっ、次の戦は確実に!」

「全霊を以って尽くさせて頂きます。第一の器、確実に陛下の元へーー」

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