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天才魔女との憑依同盟  作者: アサオニシサル
2章 白鎧の少女
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22話 最後の襲撃

 ふと小さな痛みを感じて目が覚めた。目を開いても閉じていても変わらない。つまり真っ暗真夜中、まだどこも起きる時間ではないらしい。小石か小枝の上に寝てしまったのだろうか。しっかり辺りを掃いてから寝たはずなのに、不徹底だったようで気分が悪い。


(これは論外だわ……! もう絶対にしない。じゃあ、ガチャガチャ……うーん、こう? やっぱダメね……シュルシュルー……はやっぱり弱いし…………)


 なんかサキの声がする。僕に話しかけているわけではないみたいだし、新しい魔法でも考えているのだろうか。


「ーーどうしたの?」

(ん…………? えっ!? もうそんな時間!? でもまだ真っ暗なのに!)

「いや……まだ全然夜だよ。サキが何か言ってる気がしてーー」

(まだ夜? そ、そう……なら寝なさい。明日も早いって言ったでしょ?)

「今何かやってるの?」

(…………いえ、何も、何もやってないわ)

「ガチャガチャとかシュルシュルとか言ってたようだけど? 魔法? 使ってたの?」


 確か前に魔法を教えてもらうときにそんなイメージで魔法を使っていたはずだ。


(まさか。私がこの姿で魔法を使えるわけないじゃない。もし使えたらもうとっくに使ってるに決まってるわ。バカねーレノンも。もしかして、フラウの魔法を見て、あの時の私の偉大な魔力が恋しくなっちゃったの?)


 使えたらとっくに使ってるーーそれもそうか。僕も寝ぼけてるのかもしれない。それにこんな眠い今、サキのテンションにはついていく気にはなれなかった。


「ううん……ごめん。やっぱ眠いや……また朝ね……」

(……うん、そうしなさい。おやすみなさい。レノンーー)


 僕は見えないまま手探りで何も落ちていない事を確認すると、サキに促されるまま、再び眠りに就いた。

 次に意識が戻ったときには既に夜は明けていた。商人が準備を済ませ、馬車隊が並ぶ。そして僕ら騎士見習いも乗り込むと、ルセウに向けて再び進みだした。

 昨日の夜に打ち解けることが出来たからか、他愛もない話をしながら道中を進み、フラウが教わった魔法の話も聞いた。たとえ魔物が来ても、フラウがいる限り安心。それは僕だけではなく、他の騎士見習いや商人共通の信頼でもあった。


「戻る前に聞いたら、お昼にはルセウに到着しそうだって言ってたよ」

「そっか……じゃあ、この依頼も終わりだね」


 僕がそう思っているからかもしれないが、少し寂しそうにフラウが呟いているように聞こえた。


「フラウはこの後どうするの?」


 僕は前にサキと話してルセウで適当に依頼を探して受けると一昨日の夜に決めていた。


「えっと、まだ……決めてない。だけど、騎士見習いとしてまた依頼を受け……られたら良いな」

「受けられたら良いな? 何かあったの?」

「受けたいんだけど、掲示板の前って人が多そうだからちょっと怖くて……」

「そうかな? フラウも最初より大分慣れてきたと思うけどなぁ」

「それは……その、レノンは優しいってわかるからで……」


 自信がない、といった雰囲気でフラウはそう言った。


(それなら誘ってみるのはどう? その娘と一緒なら依頼探しにも困らなそうだし。互いに苦手な部分を補い合えばどっちも得すると思うわ)


 戦いが苦手な騎士見習いというのも情けない話だが、僕ももし良ければ誘いたいと思っていた。誰か相方がいるなら良いが、これからフラウがまた一人で生活すると考えるとちょっと心配だった。


「じゃあ、終わったら一緒に掲示板行こうよ。そうしてくれたら安心だし。勿論、フラウがもう大丈夫って言うまでで良いからさ」

「一緒に来てくれるの?」

「うん。本当は僕がお願いしたいくらいだけど」

「じゃあーー」


 馬車が止まって車が揺れる。もう何度目だろうか。魔物が来た合図だ。依頼が終わるまでにあと何回これがあるだろうか。


「お願いしても良いかな? じゃあ私、先に行くから!」

(私達も!)

「わかってるって」


 僕もフラウに続いて馬車から降りる。そして、外を見て驚いた。


「なんだこの数……!」


 今までに見たことがない数の魔物だ。爆走蜥蜴や火吹きハイエナの群れが血相を変えたような、とにかく必死な感じでこっちに向かって走ってくる。


「なんかいつもと違くないか……?」

「速い気がするよな?」


 騎士見習い達が戸惑いながら話している。


「怯むな! 勢いがあってもたかが蜥蜴とハイエナだ!」


 指示役、ディードがそう叫ぶと騎士見習いは各々魔法を唱え始める。魔物は魔法が命中すると、向かってくるもの、逃げるものと様々な動作を取るが、何かが違う。


「こいつめ! くそ……! 数が多い今回に限ってどいつもこいつも向かって来やがって! 氷弾! 氷弾! 止まらない……!」


 とある火吹きハイエナは魔法が当たって血が流れているくせに、全く止まろうともせずに騎士見習いに突っ込んでくる。


「氷柱!」


 僕も加勢して魔法を唱えるが、なお止まらない。


「はっ!」


 電撃が放たれ、そのハイエナは吹っ飛ばされ、ようやく動きを止める。その後電撃が伝って周りの魔物も倒れていった。


「ありがとう! なんなんだこいつらーー」

「えっと! もう一回、魔法を溜め直しても、良いですか?」


 フラウは騎士見習い達に確認を取る。


「あれをもう一回撃ってくれるならそれでも構わない! それまではなんとかこっちで持ち堪える!」

「ありがとうございます!」


 ある一人が言い、フラウがお礼を言う。遠くから爆走蜥蜴が走ってくるのが見えた。


(まだ来るの!? なんであともう少しな時に限って……!)

「そんな遠くから僕達のことが見えるのかな……? 何か別の目的があるんじゃーー」


 必死に向かってくる魔物に違和感を覚え、上を向いて考える。鳥が僕達の飛び去っていく。黒い見た目のあれはカラスだろうか。ハイエナと同じように図太いことで知られているカラスだが、何故大パニックなこのチャンスを狙わずに一目散に飛び去っていくのだろうか。


「風刃虫だ! 五番地点に風刃虫の竜巻が来たぞ!」

「止められるやつを呼んで来い! あの剣持ちの子を!」

「こっちだって魔物見えてるんだ! そっちはそっちで対処しやがれってんだ!」

「風刃虫が一番危険だ! フラウと言ったか。その者は今すぐ五番地点に向かえ!」


 援護要請の声、それを批判する声、ディードの指示が入り乱れて耳に響く。


(何言ってるのよこいつら! さっさとフラウを送って戻せば良いでしょうに……)

「そうだよね、よしーー」


 サキもこれには流石に苦言を呈す。僕が行ってどうにか出来れば良いのだが、今の馬車隊は前に僕が戦ったときとは状況が違う。あのときはバラバラに散らばった風刃虫から全力で離れれば良かったが、今度はそうはいかない。散らしてもすぐ移動しなければ、もう一度集まって風刃の竜巻を作るだけだ。竜巻のまま焼き殺す魔力がなくてはならない。そう考えて、僕は動きだす。


「えっと、ええっと……」


 フラウはどうすれば良いかわからず、動けないでいるようだった。いきなりこんな喧騒の場の中心に放り込まれたら、無理もない。


「フラウ、大丈夫?」

「大丈夫ーーだけど……ど、どうすれば!?」

「行って! 風刃虫はフラウみたいに強い魔法を使えないと完全には倒せないから!」

「でも、こっちにも魔物が……!」

「それは僕達がやるから大丈夫。あっちをお願いしても良いかな?」

「勝手なこと言うな! もしここの馬車に魔物が突っ込んだらお、お前は責任取れるのか!?」


 僕がフラウに説得しようとするも、横から騎士見習いの青年が怒鳴ってくる。


「じゃあ、取りますよ! だから、お願いフラウ! 行ってきてくれないかな?」

「…………わかった! 終わったらすぐ戻ってくるから!」


 そう言うとフラウは、今溜めてた分の置き土産を残して五番地点に向かっていった。辛うじて前を走ってくる魔物二、三体を捉え、なぎ倒した。


「チッ……万一何かあったらお前のせいだからな」

「最善を尽くしますので」


 僕はそう言うと前を向く。爆走蜥蜴が走ってくる。


「君、それが正しい判断だーーそれじゃあ構えろ! 届く範囲になったやつから撃て!」


 指示役の掛け声とともに魔法が放たれる。魔物が吐く炎とぶつかったり外したりで砂煙を起こしながらもこちら優勢で押していく。

 すると遠くから重量感のある音と振動が伝わってきた。


「この音は……?」

(何かの足音……かも?)


 周りも気づいたらしく、魔法を撃ちながらも隣と顔を見合わせる。


 大きな音がしたと同時に砂煙が晴れ、一体の爆走蜥蜴が吹っ飛んでくる。


「障壁!」


 僕は瞬時に判断し、魔法を唱えて防ぐ。爆走蜥蜴は盾にぶつかり、滑り落ちた。

 そして、盾を消して前を見て目を疑った。


「なんだ……あれ……?」


 周りの騎士見習いも固まっていた。目の前には、見たことがない、だけど見たことがあるような魔物が爆走蜥蜴を食べている姿があった。


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