表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才魔女との憑依同盟  作者: アサオニシサル
6章 皇位継承戦争
131/147

118話 それぞれの動き

 帰って一日経った。僕達は他の騎士と共にアメリアの元に集まった。


「リューナ=イヴォル王国と女帝派のメイジステン帝国連合軍は、宰相派に勝利しました。これにより、南部の領土は両国で分け合う事となり、獲得領土の広さは帝国が、南部の首都リバーは、リューナ=イヴォル王国が手にする事となりました。因みに獲得した南部の都市とリシューとその周辺の村を交換し、獲得しました」


 そうアメリアは騎士達に話した。このリシュー周辺の村にはラティー村も入っている。気にしすぎかもしれないけど、僕の為にラティー村を取ってくれたのかもしれない。

 そして騎士達が去った後、四天王の二人、そしてセルゲイと戦った僕達はアメリアに呼ばれた。


「この度は皆ご苦労様でした。一日休暇を取らせましたが、休めましたか?」

「一同身体を休めることに努める、やりたかったことをやるなど各々の過ごし方をして休むことができました」


 代表してセレーナが話す。


「これまで休暇をあまり与えていませんでしたからね。存分にやりたいことができたのであれば、私としても嬉しいです。もう訓練日に遊びに行くなどということはないようにお願いしますよ?」

「はっ……はい。肝に銘じております」


 セレーナは予想外の言葉に焦りを覚えたようで少し声が上擦っていた。


「冗談です。もう昔のことは水に流しましょう。まずは報告をお願いします」

「ルクレシウスは人形使い、ベイリーは不死鳥、セルゲイは代々皇帝の魂を鎖で縛りつけた化け物でした。セルゲイは最期、私達にメイジステンを託すと言っておりました。その言動から、本当にメイジスを守るために戦っていたと思います」

「セルゲイが本当に心からメイジスを守る為に戦っていた? 簡単には信じられませんが……」


 アメリアは腕を組んで言った。


「レノンにしかわからない事だろう。俺達にわかることは、終わった事だというだけだ」

「御前だぞ。敬語が使えないならせめて言葉を慎め」


 師匠の言葉にラドが突っ込む。


「それより、近くに大きな波が来るって言っていたよね?」

「はい。僕達ももっと強くならないといけないですね。あと、理想同盟という用語と関係があると思います」

「理想同盟ですか……サキさんは何か言っておりませんでしたか?」

「いえ、サキは特に何も……」

「では、今は深く話す時ではないということですね。関係が悪くなっては困ります。無理に聞き出そうとしないように」

「はっ」

(理解が良くて助かるわ)


 僕は跪いたまま返事をする。


「あとは医療隊の騎士、レノンに対する報告です」

「何か特別な事があったのですか? 本人がいるのです。本人の口から述べてもらいましょう」

「レノンくん、憑魔のこと」


 セレーナは小さな声で僕に伝える。


「はい。実は僕、憑魔になりました……というより、ずっと憑魔でした」


 これにはアメリアも驚いたみたいで、


「サキさんはそんな事もできるのですか!?」


 と思わず大きな声を出していた。


「はい。サキが一般的な憑魔の状態で、そのサキと僕の魂が魂の鎖で繋がっています。ただの人間では死亡していた一撃を受けた後、再起してセルゲイと戦えました」

「残念ながら私には魂の鎖が見えません。見えるとされているのは、メイジステン家の血を持つ者、ダグラス家の血を持つ者、その魔法を生み出したとされるアゲートのみとされています。特別な魔法があれば話は別ですが……とにかく信じるしかありませんね」

「その他特記事項としては、セルゲイはレノンがほぼ一人で倒しました。騎士レノンの評価を再考してもよろしいかと。あとはゼクシムも今回の戦争で味方として大いに活躍してくれました。彼は悪魔とされていますが、再考する機会を設けてもよろしいかと」


 セレーナが特記事項を付け足してくれた。


「……なんと。あのセルゲイを一人で。しかし再考すると言っても、守護騎士にするわけにはいきまさん。隊の動かし方も分からぬ若輩者に守護騎士の座は与えられません。しかし評価はします。今後の活躍次第では守護騎士になれる可能性もあると述べておきましょう。これからも鍛錬を怠らないように」

「はっ」


 アメリアの言葉に僕はもう一度返事をする。


(サキ、これからも頼んだよ)

(……そうね。レノンをきちんと守ってあげるわ)

(何だよその言い方は。ここまで来たら一蓮托生だろ?)

(でもレノンが強いのは私のおかげだもんねー)

(それを言われると弱いんだよな……)

「レノンくん変な顔してますよ」


 エイミーがそう言うと、


「サキちゃんと話しているのよ。レノンくんったらすぐに顔に出るんだから」


 セレーナが答えた。図星で恥ずかしい。


「サキさんと……」


 フラウは小さく呟いた。


「それとゼクシムの件ですが、ティマルス、レック、そして今回の戦争で味方をしてくれた事も事実です。そこで提案があります」

「提案? 悪魔の俺に何を求めるというのだ?」

「ゼクシム。だから言葉に気をつけろとーー」

「ラド、良いのですーーここにあるのは禁術を探さない、使用しないことを約束すると記された紙です。血判を押せば、このリューナ=イヴォル王国内では、悪魔扱いをするのは止めましょう。勿論世間の風当たりがなくなることを保証するものではありませんが、如何でしょうか」

「陛下……! 寛大な処置、ありがとうございます! ありがとうございます……!」


 アメリアの提案に対してセレーナは思わず声を漏らす。ゼクシムも頷いて、


「それは助かる。その契約、交わさせてもらおう」


 と言うと迷わずに血判を押した。


「お触れを出すまでに七日は要します。それまでの間に記者に見つからないようにすることですね。セレーナ、ゼクシム」

「陛下! どこでそのお話を……?」

「騎士の間で大分噂になっていましたよ。そういう話を耳に入れるのも仕事なのですよ」


 セレーナはアメリアの言葉を聞いて赤面していた。


「次の報告、提案ですが、不死鳥の件、如何致しましょう。アメリア陛下に預けて宜しいでしょうか」


 不死鳥を倒して石になったままだ。誰が面倒を見て育てるかなど決まっていなかった。


「セルゲイのことはわかりました。リバーを調査すれば色々とわかるかも知れません。調査を行うことにするので任せてください。不死鳥の件も私が一旦預かります。そしてリューナで育てる事とします」

「ありがとうございます!」


 僕達は引き受けてくれたアメリアに感謝の言葉を述べた。


「これだけ報告を受けると、少し疲れましたね。何もなければ退がって良いですよ。フラウとラドは残るように。セレーナは医療隊を労ってあげてください」

「そんな……」


 フラウは僕を見て残念そうに言う。


「これから日常に戻るのです。鍛錬を怠ってはいけませんよ」

「うう……分かりました。お母様。でもレノン、セレーナ経由で手紙送るから!」

「うん、ちゃんと返事を書くよ」


 そして手を張り合ってフラウ達とはお別れとなった。

 強くなる。それだけじゃない。僕も守護騎士になるために色々勉強もしなくては。


(これからもよろしくね)

(……うん)

(なんで微妙な返事なのさ。サキの身体だって僕が強くなれば色々なところへ探しに行けるのに)

(そ、そうよね! レノンが私の身体を見つけてくれるんだもんね!)

(そうさ! 今まだの分のお返しをしなきゃね)


 元気を取り戻したサキは明るく僕に答えた。


(……もう戻れないのよ)

(うん? 何か言った?)

(なんでもない! ほら、セレーナも待っているわ! 行かなきゃ!)


 そして僕は待ってくれていたセレーナの元に走り、医療隊に戻っていった。



 ◆



「シーザー陛下! リューナに来ていたのですね!」


 僕はシーザーを見かけた為、無礼を承知で思わず声をかけてしまった。彼にはそんな話し易さがある。


「レノンくん、大活躍だったみたいじゃないか。あと、私の娘を生きて返してくれてありがとう」

「そう言っていただけて光栄ですーーところでギンさん見ませんでした?」

「いや、この戦いが終わってからは見ていないな」

「そうですか……改めてお礼を言いたかったのですが……」



 ◆



「やあ、生き残った四天王グルージ。こうして会うのは初めてだね」


 銀髪の胡散臭い人物は言った。


「あなたはギン……でしたっけ? 何の用ですか?」


 敗戦国の代表の一人として失意に満ちたグルージは答える。


「君が頑張ればセルゲイの理想を叶える事ができるよ」

「この世を神が支配する世界ですか?」

「そうさ。今度の神は負けはしないさ」

「その為に私は何をすれば良いのですか?」

「何、簡単な事さーー」



 ◆



「本日はお時間をいただきありがとうございます」


 グルージは跪き、言った。


「それで何の用なの? 敗戦処理の時とはだいぶ態度が違うじゃない」


 アンナは見下しながら言う。


「ルムンの領土、まだどちらのものにもなっていないですよね?」

「そりゃ封印されているからそうよ」

「リューナ=イヴォル王国がルムンを手にしようと動き出したと特別な情報網から聞きました」

「無理よ。封印されているルムンを開く鍵は私が握っているのだもの」

「それが可能だという可能性があるというのです。このままではまたアメリアに先を越されてしまいます」


 アメリアという言葉を聞いて、アンナはムッとした顔をした。


「それだけは絶対に嫌! わかったわ。私の騎士団を動かしてルムンを支配してやる。今度はアメリアに遅れは取られない……早急に準備をするように伝えるわ!」

「ありがとうございます。それでこそ皇帝アンナ陛下。今度こそメイジステン帝国の一人勝ちを……!」


 グルージは跪いたままニヤッと笑顔を見せた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ