表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才魔女との憑依同盟  作者: アサオニシサル
6章 皇位継承戦争
128/147

115話 決戦前の想い

 僕達はセルゲイの言葉を聞き、すぐにイヴォルの城に戻った。


「遊撃隊のみんな、無事だったか?」


 戻ってすぐシーザーの方から会いにきてくれた。後ろにはラドとエイミーが控えている。


「はい。全員無事です。四天王ベイリーに勝利致しました」


 セレーナはそう報告した。


「そうか! それは良かったーーところでセルゲイの話はもう聞いたかい?」

「こちらも聞きました。遊撃隊に明日来るようにと。私は遊撃隊のみで向かう方が良いと考えています。シーザー様はどうお考えでしょうか」

「実は私もそう考えていたんだ。私や普通の騎士では太刀打ちできないと思うし、陵墓に入ることすら許されないかもしれないーーセレーナ、ラド、エイミー、ゼクシム、フラウ、レノン、パロ。セルゲイとの戦いは君達にお願いしたい」

「それで問題ないよね?」


 四天王と戦ってきた僕達全員が頷いた。


「それでは君達にお願いしよう。申し訳ない気持ちがあるけどーー」

「そこは気にしないでください。セルゲイは神になったと言いました。四天王を超える何かを持っているはずです。私達にしかできないと思っています」

「その通りだ。そこは自信を持って良いと思うよ」

「ありがとうございます」

「では各自明日の朝まで自由に過ごして良いよ。思い残しがないようにね」

「「はい」」


 僕達はその言葉で解散となった。各自部屋を用意してもらい、僕は部屋の中に入った。


「どうやって過ごそうかな」


 僕はポツリと呟いた。魔法の確認、誰かと話す。どうすれば思い残しがなくなるだろうか。


(ねえ、レノンーー)

(どうしたの? サキ)

(少し話しても良い?)

(良いよ)

(明日の戦い、やっぱり止めにしない?)

「今更何を言っているのさ!」


 驚きのあまり僕は声を出してしまった。


(私は戦いたくないな。セルゲイが怖いわけじゃないんだけど……)

(でも、セルゲイに世界を支配されたくないよ)

(それは私もそう……なんだけど……)

(何か理由があるなら話してみてよ)


 いつものサキとちょっと違うなと思い、聞いてみる。


(明日の戦いが終わったら、何もかもが終わっちゃう。ううん、ちょっと違う。そうじゃなくてーー)

(ゆっくりで良いよ)


 僕はサキを落ち着かせる為に言葉をかける。


(ありがとう。ただなんか今みたいに幸せな状態じゃなくなっちゃう気がするの)

(それは……そうかもしれないね。でもそれは戦わなくても同じだよ。だから、今を守る為に戦うんだ)

(ギンに言ってハクちゃんと一緒に暮らしましょう! そうすればーー)

(それなら生きられるかもしれない。でも、僕は自分の使命を果たしたいんだ)

(使命を果たす……?)

(そう。これは僕達にしかできないことだから。それができなかった多くの人の想いを背負っているんだ。だから、僕は明日戦うよ)

(わかった。やっぱり使命から逃げちゃ駄目よねーー)

(……わかったわ。私も覚悟を決めた。もうそんなこと言わないわ)


 何かを恐れていたサキは吹っ切れたようだった。


(サキーー最後まで一緒に戦ってくれてありがとう)

(レノンこそ、我儘な私と一緒にいてくれてありがとう。私はもう大丈夫よ。そうね……他の人のところに行って話をしてみましょう。みんなの声も聞きたいし)

(そうだね。そうしてみようかな)


 まずはフラウから探してみることにした。訓練所に行ってみると、パロとラドがいた。


「レノンもこんな時まで訓練しにきたんだゾ?」

「いえ、今日はもうみんなと話そうかと思いまして」

「邪魔だ。他の人のところに行け」


 ラドはパロの爪を受け止め、距離を取ると言った。


「ラドさんは決戦の前日まで訓練を続けるんですね」

「一日じゃ変わらないと言いたいのか?」

「言い方が悪いんだゾ。ラドはゼクシムやセレーナに勝てるように訓練するんだゾ。明日がどんな日であってもただ一日と言うことだゾ」

「俺はゼクシムやセレーナに負ける自分が許せない。今日も明日も訓練を怠る事はない」

「パロさんも一緒に訓練するんですね」

「一人だと寂しいと思うから付き合ってやっているんだゾ」

「俺は別にいらない。他所に行けと言っているんだが」


 ラドは手を止めずに言った。


「まあまあ魔物でも良くしてもらっているお礼だゾ。好きでいるから気にしなくて良いんだゾ」

「……勝手にしろ」


 ラドはそう言うと炎の魔法を放った。


(これ以上は邪魔になるわ)

「僕はこれで失礼します」


 あの二人は大丈夫そうだ。僕はフラウ探しを続ける事にした。


(あっ、そう言えばフラウの部屋に行ってないや)

(そう言えばそうね)


 僕はフラウの部屋に行ったが、


(部屋の鍵、開いてないね)

「レノンだけど、フラウ、いる?」

(返事がないわね。外に出ているみたいね)

(セレーナさんの部屋に行ってみよう)


 僕はセレーナの部屋に向かった。


「レノンです。入ってもよろしいでしょうか」

「レノンくん? どうぞ入って」


 僕はセレーナの部屋に入ると、師匠も一緒にいた。


(あっ、邪魔しちゃったわね)

「フラウ見かけませんでしたか?」

「うーん、お嬢様は見てないわね」

(じゃあさっさと出るわよ)

「そうですか……ありがとうございます。僕はこれでーー」

「まあせっかく来たんだ。明日のこともある。少し話していくのも悪くないだろう」


 師匠がそう言った。


「明日絶対勝とうねって話をゼクシムとしていたところなの」

「どのような準備をしているか知らないが、全員の力を合わせればセルゲイを倒せるはずだ」

「ありがとうございます。師匠と話していると勇気をもらえますね」

「そうなの。ゼクシムが絶対勝てるって言うと本当に勝てちゃうから、前に旅をしていた時からね」

「その話も聞きたいですが、フラウを探してきます。失礼しました」


 僕はセレーナの部屋を後にした。すると、ギンの姿が見えた。


「ギンさん! さっきはありがとうございます! お陰でベイリー、不死鳥に勝てました」

「勝てて良かった。私も身を投げ出して支援した甲斐があったよ」


 ギンは誇らしげに胸を張って言った。


「どうやって時を止めたんですか? あと今僕が持っているサキの杖もです。アゲートに取られたはずなのに……」

「それは企業努力だから企業秘密さ。色々あるのさ」

「そうはぐらかさないで教えてくださいよ」


 僕はギンにそう言うと、


「ダメなものはダメさ。これをあげるから勘弁してくれないかな」


 そう言ってギンは僕に帽子をくれた。


「これって魔女の帽子じゃないですか!」

「いつかの戦いでなくしたんだろう? ハクが予備を用意しておいてくれたのさ。一度作れば作成時間は短くできるしね」

「あ、ありがとうございます! これっていくらになるのでしょうか?」

「今回は無料で良いよ。保証期間内だったということにして特別サービスさ」

(それだけセルゲイを倒してほしいってことなのね)

(そっかーー)


 僕は改めて使命の難しさを再確認して、


「絶対にセルゲイに勝ってみせますから!」


 とギンの目を見て言った。


「ああ、頼んだよ」


 ギンは後ろを向いて呟くように言った。


「見つけたのです! 後輩くん」


 よく通る高い声がして、振り向くとエイミーがこっちに向かって走ってきた。


「エイミーさん。すみません。僕に何か用がありましたか?」

「フラウちゃんにお願いされたのと……レノンくんが明日に向けて元気か知りたかった事かな!」

「エイミーさんは元気そうですね。明日、一緒に頑張りましょう!」

「うん! レノンくんも特に気負っている様子もなさそうだね。さすがこれまで色々冒険してきた事はあるね」

「エイミーさんも長く騎士団にいるだけあって覚悟が決まってますね」

「勿論先輩ですもの。フラウちゃんはレノンくんの部屋の前で待つって言っていたよ。行っておいで」

「ありがとうございます! エイミーさん!」


 僕はお礼を言って自分の部屋に向かった。


「あっ、レノン!」

「フラウ、ごめんお待たせ。僕も探しているつもりだったんだけど」


 フラウは大袈裟に首を横に張り、


「全然そんな事ないよ。探してくれていたならむしろ嬉しいくらい!」


 少しうわずった声で言った。


「とりあえず部屋の中に入ろうか。そこで話そう」

「うん!」


 そして二人はレノンの部屋に入った。フラウは緊張しているように見えた。


「大丈夫だよ。僕がサキの力を借りてでも絶対に倒すから」

「サキさん……」


 フラウは小さく呟くと震えながら言った。


「そ、そうだよね。サキさんは、私なんかよりも全然強いし、頼りになるもんね……」

「そんな事ないよ。僕もフラウに助けられているし、勇気をもらっているから」

「本当?」

「本当だよ。それにこういうものって比べるものじゃないからさ。どっちにも助けられて本当におんぶに抱っこって感じ」

「レノンの助けになれているなら良かった。うん、私はそれだけで満足なんだよ」


 フラウは言葉を押し殺すように言っているように見えた。


「そんな大袈裟なーー」

「大袈裟じゃないよ。これが私の気持ちなんだ」

(フラウちゃん、本当にそれで良いの?)


 フラウはもう一度言った。二度も言うならそうなのだろう。追求してもギンのようにはぐらかされることはないだろうが、言いたくない事なのかもしれない。


「ありがとう、フラウ。話せて良かった。明日も力を合わせて頑張ろう」

「うん、一緒に頑張ろう。そろそろ明日に備えて寝た方が良いかな」

「そうだね。おやすみ、フラウ」

「おやすみ、レノン」


 そしてフラウは僕の部屋を後にした。


「みんなと話せたのは嬉しいけど、疲れたな」


 欠伸をしながら声に出して言った。


(不死鳥を倒した後だったし、体力良く保ったわね)

(それだけみんなと話しておきたかったんだよ。でももう満足したからすごい眠いや)

(明日は早いしゆっくり休んだ方が良いわ。おやすみ、レノン)

(おやすみ、サキ)


 そして僕は明日に向けて眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ