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天才魔女との憑依同盟  作者: アサオニシサル
6章 皇位継承戦争
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111話 四天王ルクレシウス

「くっ……俺は諦めないぞ!」


 ラドは伸びてくる岩の棘を切り倒す。そして砂になった瞬間に炎で燃やした。


「無駄無駄! 全部地面に落ちた時に魔力として取り込まれるだけさ」


 壁から手が伸びてきてそこから岩が飛んできた。僕はそれを自動障壁で弾く。


「くそ……何か良い方法があれば……!」

「攻撃は壁から出る分単調だが、引き返す事さえできない。しかも砦のどこに行っても変わらないという有様だ」

「私達がいないと本隊も、セレーナさんも厳しいですし!」


 師匠にエイミーも焦って声を上げる。


「単調でも勝てないのであれば効果的だ。諦めた時に処理できるし、焦った時は過ちも起こす」


 ルクレシウスは淡々と述べる。


「うるさい!」

「止めろラド。消耗戦だ。魔力の無駄遣いだ」

「わかっているが……!」


 砦が戦うなら特に意味はないと思われたが、ルクレシウスを残すことに意味はあるのかもしれない。


「はぁ……はぁ……」

「ラドさん。大丈夫ですか……?」

「気にするな……これくらいどうってことない……!」


 そうは言っているが、僕から見てもきつそうだ。


(レノンは大丈夫?)

(比較的には、ね。サキの魔力の分僕はまだ戦える……!)


 腕や岩の棘などの行動を耐え続けてこっちも消耗してきた。

 何度も切り落としているが、あちらは弾切れはなさそうだ。


 そのとき、急に天井が迫ってきた。地下が潰れたのだ。


「新しい攻撃か!」

「防ぎます!」

「助力する!」

「私も!」


 全員で壁を、作り受け止めて、押し戻した。


「どうすれば……!」


 今度は吊り天井が落ちてくる。


「今度はそうくるか!」


 僕はそれも防ぎ、少し経った後、元に戻っていった。


「レノン、助かった」

「はい! でもどうすれば……!」


 壊しても全部魔力の砂になる。その魔力を再利用するから永遠に攻撃ができる。


「吸った魔力を再利用する! ここだ!」

(レノン! 何か閃いたのね!)

「何か分かったのか?」


 全員が僕の方を向く。


「僕の帽子が魔力となった砂を吸います! そしたら再利用もできないはずです!」

「なるほどなんだゾ。じゃあ今まで通りぶっ壊すのみだゾ」


 岩の棘が伸びてくる。それを風の刃で撃ち落とす。落ちた岩の棘は砂となる。


(吸って!)


 帽子はゴミ掃除をするみたいに砂を吸い込んだ。


「なるほど。考えたな。こうなれば根比べか。戦術としては降参だーー」


 ルクレシウスがそういう間にも砂は吸い込まれていく。途中から棘や腕ごとどころか吊り天井も吸えるとわかり、どんどん砦の魔力を吸っていった。


「それならレノン。お前を殺す」


 ルクレシウスの中に砂が取り込まれていく。これで戦えるようになるようだ。


「させるか!」


 風の剣で短剣を吹き飛ばし、突き刺す。


「ぐっ……!」

(吸って!)


 そしてそのルクレシウスすらも砂となり、僕の帽子に吸われる。今度は、物凄い勢いで砂が集まり、僕の目の前に、砂の巨人が現れた。岩の戦士も地面から生み出され、僕達を囲む。


「そんな足掻きなど、敵ではない!」


 ラドは、肩から腰にかけて斬りつけると、斬ったところが爆発した。

 それでも巨人は倒れず、僕に向かって剣を振るう。


「レノンくん、避難するよ」


 エイミーは僕を抱えて飛ぶと、剣の攻撃を回避しながら置き土産で巨人の足元を爆破させ、態勢を崩れさせた。


「とどめはささせてもらおう」


 師匠がそう言って倒れ込んだ巨人の胸に風の剣で風穴を開けた。


「僕も応戦できます!」


 岩の戦士達の攻撃は、自動障壁で防げるため、僕には届かない。


(サキ! 頼んだ!)

(放って!)


 吸った砂の魔力を光線に換えて解き放った。


「うおおおおおおおおおお!!」


 巨人は悲鳴をあげると、砂になっていった。


(吸って!)

「超風刃の竜巻で周りも大体片付けたんだゾ」


 それらの砂も吸い込む。そしてついに砦は姿を消した。


「やりました!」

「四天王、ルクレシウスを倒したぞ!」


 大きな声で僕達は喜びを分かち合った。


「ちょっと待ってください皆さん!」


 エイミーがみんなを呼び止めた。


「ここに更に地下通路があります。ルクレシウスの拠点かもしれません。行ってみませんか?」


 全員が頷き、地下通路を進んでいく。


「途中まで行って天井が落ちなければ良いんだゾ」

「十分体験したからもし起きても大丈夫だろう」


 パロと師匠でそんな話をしながら、地下通路の奥に到着した。扉がある。


「入るぞ?」


 ラドの言葉に全員が頷いた。そして部屋に入った。


「よく来たな北部の遊撃隊よーー」


 そう言ったのは、骨と皮だけの老人で、坐禅を組んでいた。


「貴様、何者だ」

「何者とは気付いておらんかったのか。儂がルクレシウスじゃよ」

「貴方がルクレシウス……? というと……?」

「儂が本物のルクレシウス、今まで戦っていたルクレシウスは儂が若かった頃の人形じゃ」


 本物、という言葉を聞いて僕達は武器を構える。


「落ち着きなされ。儂に戦う力はもうない。ただの老耄じゃ。最後に話を聞いて、答えてくれないかの」

「何故南部の者の話なんかーー」

「良いですよ」


 僕はラドが言い終わる前に即答した。


「おお、そうか。聞き分けの良い者がいて儂は嬉しいぞーー」


 ルクレシウスはそう言うとーー


「お主らは永遠についてどう思う? 暴君の時代がなく、正しく生きれれば、永遠に安定した生活を送れるというそんな世界を」

「理想的だが、理想論だ。必ず暴君が出る」


 ラドは答えた。


「セルゲイ陛下は自らが君主となり、そんな永遠に安定した世界を作ろうと考えている」

「セルゲイが名君だと言うのか?」


 師匠が聞く。


「私はそう考えている。人生を振り返るとな。だが、それを決めるのはお前達だ。自らの君主とセルゲイ陛下どちらが名君か、セルゲイ陛下は永遠を求め、永遠に拘り、やがて手にするだろう」

「アメリア陛下が理想だ。それで終わりだ」

「でもセルゲイが何を考えているかわかりました。そして貴方が何の為に戦っていたのかも」

「……ああ、その言葉だけで儂は満足だ。介錯してくれ」

「……はい」


 こうして、四天王ルクレシウスは倒された。



 ◆



「ゴーギャンが砂になりましたね。ルクレシウスがやられたようです」

「……そうか。我が同志よ。よくぞ今まで共に戦ってくれたな。帝の影としても、四天王としてもだーーだがお陰で実現までまた一歩進んだぞ」


 セルゲイは自分の身体を動かし、自分の手を見て言う。


「後は必ず、永遠を手に入れなければな」


 セルゲイは力強く言った。

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