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天才魔女との憑依同盟  作者: アサオニシサル
6章 皇位継承戦争
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109話 イヴォルでの戦い

「何と言うことでしょう。陛下、ベイリーが敗れ、退いたそうですよ」


 ゴーギャンは大袈裟な動作を取りながら言った。それを聞くと、共にいる帝の影達に動揺の色が見えた。


「まさか敗れると想定はしていなかったが、退いたという事は死んではいないのであろう?」


 セルゲイはさも当然という風に問いかける。


「みたいですね。戦いである程度消耗したみたいですが」

「生きていれば問題ない。次戦う時こそ奴の真の力を発揮して戦うはずだからな」

「信頼しておりますね」


 ゴーギャンの言葉に対し、


「付き合いも長い。我は老体となってしまったが……」

「あと少しで永遠が手に入るのです。さあ、中に入りましょう」


 グルージが会話を締めてメイジステン陵墓の中へ入っていった。



 ◆



「見つけた! リューナ騎士がいます!」

「帝国騎士もいるな。戦争の真っ最中というわけだ」


 僕の言葉に対し師匠が答える。


「魔物の姿は見えないですね」

「いくら魔境の魔物でも、戦場に近寄らないと思うゾ」


 今度はパロが答えた。


「よし、それならばすぐにでも援護するぞ!」

「ぐわあああああ!!」


 ラドはそう言うと、早速帝国騎士の一人に炎の剣で斬りつけて倒した。ベイリーで上手く戦えなかったことからか、とても積極的だ。


「俺よりも早く倒すとはーー負けていられないな」


 師匠もそう言うと風の剣で帝国騎士を吹き飛ばした。


「イヴォルの城に行く目的を忘れちゃいけないんだゾ」

「はい! 僕達もみんなを援護しよう」


 そう言って僕は倒れているリューナ騎士に治癒魔法をかける。


「ありがとう。これでまた戦える。けどあんたらは……?」

「リューナ騎士団の遊撃隊です」

「遊撃隊が到着したのか! これなら我々にも勝機が……!」

「戦況は悪いのですか?」


 僕が騎士に尋ねると、


「実力は拮抗しているが、数が! 騎士と帝の影と思われる存在は仕方ないとして、岩の戦士がとにかく厄介なんだ!」

「岩の戦士……?」


 僕達は疑問に思い辺りを見渡すと、白い岩で作られたと思われる剣士が戦っている姿がいくつもあった。


「やつらは砕いても、時間が経つと磁石みたいにくっついてまた動き出すんだ」

「一先ず状況はわかりました。僕達はイヴォル城に行ってセレーナさんと合流します」

「わかった。それならここは俺に任せろ」


 騎士は立ち上がり、帝国騎士に向かっていった。


「レノンくん、私達は治癒に徹しよう!」


 エイミーは三人に分身し、それぞれが治癒魔法をかけている。


「分かりました!」

「竜巻なんだゾ」


 パロは岩の戦士に竜巻をぶつけて粉砕する。道は師匠やラドが開いてくれるので、僕達は師匠やラド、他の騎士達に治癒魔法をかけながら進む。


「あれは不死身なリューナ騎士のエイミーだ!」

「ベイリー様は? 先程飛んでいたベイリー様はまだ来てくださらないのか?」

「ベイリーなら俺達が倒した。あれだけの傷はそう簡単には癒まい」

「そんな馬鹿なーーぐわああああ!!」


 騎士は師匠の一撃を受け倒れる。


「敵の遊撃隊が来たぞ! 甚大な被害を受けている! ベイリー様は負けた! 死にたくない奴は撤退だ!」


 パロが騎士の声を真似してそう言うと、帝国騎士達は動揺し、その言葉は流れるように伝わり、彼らは逃げ始めた。


「これで進めるんだゾ」

「そんなこともできるんですね」


 エイミーは、治癒魔法を使いながら感心している。


「それよりも前だ!」


 撤退している帝国騎士達と違い、岩の戦士はこちらに向かって来た。師匠はそれを風の刃で両断した。


「ラドの剣や、魔力を込めた風刃の竜巻ならしばらく動けなくさせられるな。俺たちに任せておけば良い」


 師匠はそう言うと、竜巻で岩の戦士をバラバラにして見せた。


「ありがとうございます!」


 そのまま進んでいくと、白い鎧をした少女と、同じく白の鎧の騎士の姿があった。


「フラウ! セレーナさん!」


 僕が声をかけると二人とも振り向いた。


「お嬢様、対応をお願いします。私は前線を維持するので手一杯なので」

「わかった!」


 セレーナはそういうと治癒魔法を使い、味方のリューナ騎士の為に盾を張った。


「私達の連合軍は、相手の岩の戦士が予想外で数が多かったけど、治癒は追いついているよ。でもベイリーがいないの。騎士団長のはずなのに、理由がわからない」

「ベイリーなら俺達が道中で撃退したから気にしなくても良い」

「えっ……! そうなの!?」


 フラウは驚きの声を上げた。


「皆さん! 帝国騎士が撤退していますが、岩の戦士は逃げません! 深追いはせず、そっちを倒しながらこちらも退がりましょう!」

「「はっ!」」


 セレーナの言葉に騎士達は応える。そして岩の戦士を倒しながら前線を下げていき、帝国騎士がほぼ逃げた後、ピタッと岩の戦士の動きが止まって崩れ去り、戦いは終わった。

 そして僕達はイヴォル城に向かった。


「ありがとう。貴方達が来てくれたお陰で戦に勝利できたわ」

「そんなことはないさ。シーザー様とお嬢様が士気を上げ、セレーナが前線を守ったからだろう」


 セレーナの言葉にラドが返す。


「とにかく全員無事で良かったです」


 エイミーはセレーナを見ながら言った。


「今回の戦いで予想外なことが良い事で一つ、悪い事で一つありました」

「良い事は騎士団長ベイリーがいなかった事だろ。あれは俺達と戦闘があったからだ。手傷を負わせて撃退したーー」

「ベイリーを撃退したなんて凄い……!」

「あのベイリー卿を? やはり君達はとても強いね。アメリアが任せるわけだ」


 フラウとシーザーは、そう言って僕達を讃えてくれた。


「もう一つ良いことがあるよ」

「ギンさん!」


 喋りたくてうずうずしていたと言った様子の銀色の髪の男が言った。


「私もイヴォルを支援しよう。物資と武器かな。だって私は商人だからね」

「心強い。感謝する」


 ラドはギンに礼をする。


「いやいやレックを殺してしまって乗りかかった船だからね。勝ってもらわないと色々とこっちにも飛び火するからね。例をあげるならーー」

「ギンさん。話したいのはわかるんだけどそろそろね。話が逸れているから」


 ごめんねと言いながらシーザーはギンを制止した。


「では続けますねーー悪い事は、岩の戦士が敵軍にいたこと。特別な攻撃はしないけど、数がとにかく多いのと、倒したと思っても、時間が経つとくっついて復活すること。これでゼクシム達が来るまで前線を下げざるを得なくなっていたしーー」

「しかも敵軍は戦争が始まったと同時に岩でできた城を一瞬で築きあげたわ。そしてそこから岩の戦士を……これでは南部には攻め込めません」


 セレーナは不安そうに話した。


「次の行き先が決まったな」


 師匠は立ち上がり、言った。


「岩の砦に行ってもらって良い?」

「ああ、あれは四天王ルクレシウスが関わっていると言えるだろう。四天王を倒すのは俺たちの役目だからな」

「わ、私達も行こうよ! 岩の戦士は数が多過ぎるから、その負担を減らす為に本隊も動かそう」


 フラウも立ち上がって言った。


「そうですね。こちらからも兵を出して敵の岩の戦士と接敵後、遊撃隊は砦を攻略する。それが良いかもしれません」

「私も遊撃隊としてレノン達と行きたいと思ってーー」

「それはいけません。お嬢様。今リューナ騎士団と女帝騎士団が高い士気でまとめられているのは、お嬢様が前線で戦われているからというのもあるのです。これは、シーザー様の娘であるお嬢様にしかできない事なのです」

「うーん……うん。わかったよラド。それなら私はイヴォルを守る事に徹するね」

「ありがとうございます」


 フラウは座って言うと、ラドはお礼を言った。


「でも今日は休んでいくでしょ?」


 フラウは落ち着いた口調で話す。イヴォルでの経験が彼女を強くしたのか、少しずつだが風格が出ていた。


「はい。戦いで魔力と体力を消費したので」


 ラドが言った。


「じゃあレノン。この後少し一緒に話そう」

「わかった」

「今日はくたびれたから休みたいんだゾ」

「そうですね。皆疲れている。今日は休みましょう」


 セレーナの言葉で、話し合いは終わりになった。僕はフラウと庭に出た。


「ルクレシウス……以前洞窟で私達と戦った人と同じ名前。帝の影の長。本当は一緒に戦いたかった」

「作戦の為に残る選択をしてくれたのも嬉しいけど、本当はそう言ってくれて、僕は嬉しかったよ」

「レノンが強くなっているのはわかる。だけど心配だよ。前の戦いがあるから……」

「僕はこうしてフラウと話せたから思い残す事はないよ。そして、皆となら勝って帰ってくる自信もある」

「レノンはいつも前向きだね。私……」


 そう言うとフラウは黙ってしまった。


「フラウ? 何か悩んでいるなら話してみなよ」


 僕は疑問に思い、フラウに促す。


「ーーわ、私も頑張るから!」

「うん! お互いに頑張ろう!」


 僕はそう言った後、手を振ってフラウと別れた。


(それで良いの? 貴方達ーー)


 サキが口を挟んできて言った。


(それでって何さ?)

(まあ貴方達が、それで良いなら気にしないけど)

(頑張ろうって言い合ったんだ。水を差さないでよ)

(花が咲くように水をあげているつもりなんだけど)

(よくわからないけど、サキも頼んだよ。一緒に頑張ろう)

(はいはい、頑張りますよー)


 僕はそう言うと、休む為に借りた部屋に向かった。

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