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天才魔女との憑依同盟  作者: アサオニシサル
6章 皇位継承戦争
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108話 帝国騎士団長ベイリー

「どうなっているんだこれは……!」


 この惨憺たる光景を見てラドが言った。舗装され、警備されているはずのこの連絡通路がボロボロに、そしてリューナ騎士が倒れている。


「イヴォルを通らなければ南部からは侵略できないはずの場所だ。もしかして本隊が突破されたのか……?」

「セレーナさんがいるんですよ。そんなわけないじゃないですか!」


 ラドの言葉にエイミーは反論する。


「それはわかっている。だが、ならば何故……!」

「あそこに手を振っている騎士の方がいます!」

(聞いてみれば何かわかるかも!)


 僕は地上にいるリューナ騎士を見て言った。


「降りるんだゾ」


 パロはそう言うと着陸した。


「この先は危険だ! 今すぐ引き返した方が良い!」

「何があったんですか?」


 僕はパロから降りて騎士に話しかける。


「赤鎧の騎士が暴れている。何人もの仲間が立ち向かったが、相手にならない。俺はアメリア陛下に報告する為にここを去るが、相手は守護騎士を超える力を持っているかもしれないぞ! 気をつけろ!」

「もしかしてーー」


 四天王、と言いかけた瞬間ーー

 いきなり三体の竜の形をした炎が飛んできて、そのうちのこっちに向かってきた一体を自動障壁で防ぐ。魔女の法衣のおかげで自動障壁も範囲も広がり、強度も実用的になっていた。


「これは……火炎竜!?」

「新手ですかーー」


 声のする方を見ると赤鎧で全身を覆われた騎士がいた。


「貴様が撃ったのか……! 何者だ!」

「名を名乗れ? その必要はありません。ここで灰になるのですから」

「その声、女か!」


 ラドの言葉に対して美しくも残酷な声色でそう答えた騎士は、魔法陣を展開させ、一つの方向に集中させて大きな火炎竜を放った。


(吸って!)


 帽子を巨大化させ、火炎竜に対抗する。帽子は竜を飲み切った。


「あの巨大な自動障壁に加え、帽子に私の全力の炎の一撃が飲み込まれた? 厄介な盾使い……どうやらこれまでの雑兵とは違うようですね」


 帽子の行動に対し、怪訝そうな声を出した。


「帝国でこれ程の炎を操る騎士、間違いないんだゾ。こいつが陛下が言っていた帝国騎士団長ベイリーだゾ」

「名乗るのを省かせていただき、感謝します」

「何故ここに! セレーナさんはどうしたのですか!」


 エイミーは怒りが混ざった口調で問いかける。


「落ち着くんだエイミー。まずここに居るのは奴一人。その目的は連絡通路の破壊活動だろう。大多数で行った方が良い作戦だ」

「だけどそれができていないってことは……セレーナさんは、無事!」


 ラドの言葉に対し、エイミーは落ち着いたようで、元気を取り戻した。


「飛行手段か何かを使ってここまできたのだろう。故にここでは奴は一人。こちらの方が数で有利だ」


 ゼクシムは風を纏わせて剣にしながら言った。


「そこまでお見通しとは頭も回るようですね。だけど一つだけ間違っています」

「何だと?」


 ベイリーはゼクシムを指差した。


「メイジスでの戦いにおいて数など関係ありません。私は百の騎士でも一人で倒せる力を持っている。貴方達はその内の五つの命に過ぎない」

「試してみるか?」


 風の剣を向けて言う。


「そこらの雑兵とは異なるという事はわかりました。ここで仕留めさせてもらいましょう」


 ベイリーは剣を抜き、炎を纏わせる。


「これなら吸われることはない。まずはーー」

「ぐふっ……!」


 一瞬で僕の目の前まで距離を縮めて僕を貫いた。


「レノンくん!」


 エイミーはすぐ治癒魔法を使ってくれた為、倒れずに済んだ。


「今の一撃……翼で勢いをーー」

「それより前線だ!」


 ゼクシムが風の剣で受け止めながら叫ぶ。


「貴方も変わった魔法を使う騎士のようですねーーですが、これでどうでしょうか?」


 炎の剣を風の剣が触れた瞬間、それは炎を纏った。普段ならラドとの協力技として力を発揮するが、


「風の剣が吸われた……だと……!?」


 ゼクシムの風の剣は形を失い、ベイリーに取り込まれた。


「風とは他の魔法を纏うもの。それは利点であることが多いですが、私の場合は炎として取り込むことができる」


「風刃ーー」

「遅い!」


 目にも止まらぬ剣技でゼクシムに三つの切り傷をつける。


「くっ……!」


 声を発したのは、ゼクシムではない。ベイリーだ。


「リューナ騎士団の医療隊と同じように治癒魔法持ちがいる、つまり急所を外せば不死身ということですか。厄介ですね」

「両方に決め手がない状態か……!」


 ゼクシムは顔を歪ませて言った。


(待って! 決め手なら、あるわ)

(サキ?)

(吸った炎を魔力の光線として放つ。あれだけの魔力を吸ったんだもの。威力としては相当なはずよ)

(確かに……でもあの速さだ。どうやったら当てられるか……)


 まさに瞬足と呼ぶべきその速さでは動いている時に当てるのは不可能だろう。


「激流海波!」


 ラドは魔法陣を展開させ、水の魔法を放つ。大きな波で飲み込もうと襲いかかる。


「上級魔法とはいえ、慣れていないのがバレバレですね。そんな攻撃、当たらない!」

「くっ……!」


 道に落ちている石を踏まないようにするのと同じように簡単に避けられてしまった。


「貴方は剣に炎を纏わせないのですね」


 ベイリーはラドに向けて余裕を持って言った。


「お前の思い通りにはさせるつもりはない!」


「ざぶーん!」

「遅過ぎますね」


 エイミーも同じように水魔法を放つが、やはり当たらない。


「全員で放って逃げ道を塞げば!」

「激流海波!」


 ラドの指示に頷き、僕の声と共に皆も放つ。


「逃げ道など簡単に見つけられます」


 そう言って背中に翼を生やすと、波が届かない程の高さまで空に飛び上がった。


「何もかもが遅いですよ!」


 そう言ってゼクシムに向かって急降下するーーゼクシムは風の刃で応じてしまった。それは炎を纏い、取り込まれる。


「ゼクシム! 何をしている!」

「すまない、手癖だ」


 ゼクシムは手をぶらぶらと振って言った。


(これだ!)

(レノン? 何か打開策が?)

(今みたいに炎を吸わせている時には止まっている。その時に撃てば良いんだ!)


 ラドは少し怒りを混ぜながら、


「激流海波を一気にではなく一人一人ズラしながら撃つぞ!」

「激流海波!」


 そう言って僕達はズラしながら撃つも、瞬足のベイリーはまた飛び上がり、水は届くことはなかった。


「また炎を吸わせてくれる機会を下さるなんて」


 そう言いながらゼクシムの元へ急降下する。またもやゼクシムは風の刃で受け、それを炎にして吸っている間にーー


(放って!)

「届けえええええええ!!」


 僕は帽子から先程吸って溜めた魔力を光線にして解き放つ。


「なんとーーうぐわああああああああ!?」


 ベイリーは動けず、それを見ていることしかできない。そして光線はその赤い鎧を貫通した。


「中身が空……いや、炎……だと?」


 ベイリーの鎧の穴から見えたのは、景色のその向こうと炎だけ。血は一滴も流れなかった。


「これは……どういうことなんだ?」

「やってくれましたね……少年……!」


 ラドの言葉を無視し、ベイリーは、僕の方を向いて言った。


「ここは退いてやります。補給路線はこの通り破壊できましたし。次会った時は全力でお相手致しましょう」


 そう言い残すと、ベイリーは南部の方へ飛び去ってしまった。


「鎧を貫いても殺せなかった……?」


 ラドは状況を飲み込めないといった風に呟いた。


「流石は四天王といったところか」


 ゼクシムは自分の手を見ながら言った。


「舗装された道も破壊されてしまったゾ」

「セレーナさんが待ってます! 早くイヴォルへ行きましょう!」

「空路か陸路で援軍として戦うか、どっちにする?」

「あんなやりにくい相手じゃ戦い足りない。陸路で加勢する!」


 珍しくラドを含めた全員が頷いた。


「よし、ではイヴォルを救う。出陣だ!」


 僕達はそう言うと、イヴォルに向かって走り出した。

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