92話 騎士狩祭一戦目
そして、騎士狩祭当日になった。
僕達は門をくぐって第三闘技場へ向かった。
「さてさてお待たせしました皆様。これより騎士狩祭を開催したいと思います。長年やっていますが、ルールの確認をしましょうか」
司会の人が話し始めた。出場者としてルールは聞いてはいるが、説明するのも司会の役目だろう。
「まず狩人側と騎士側でそれぞれペアを組んで受付してもらっています。その組み合わせで騎士と狩人が戦ってもらいます。負けた二人は脱落の勝ち抜き戦。狩人側か、騎士側が全滅するまで戦っていただきます。もし同じ側に二組以上残っていたらその中で勝ち抜き戦を行なっていただきます。最後の一組には我らが領主最強の騎士シーザー=イヴォル辺境伯から賞金と伝説の剣の複製品が捧げられます」
そこで歓声がドッと湧いた。シーザーの人気は、今は魔法が使えなくとも、騎士団長でなくともその栄光によって絶大なものだということだろう。
「では第一戦目を始めたいと思います」
僕達の期待は師匠のお陰で凄いらしく、第三闘技場には多くの観客が居た。
「まずは狩人側! イヴォルの外からの参戦、英雄ゼクシムの秘蔵っ子と噂の謎多き二人、シロガネ&レノンだー!」
狩人側から凄い歓声が湧いている。僕はこの人達が期待しているような活躍ができるのか不安になってしまう。
(大丈夫よ。ちゃんとやってきたし、作戦もあるし)
サキはそう言って僕を鼓舞してくれた。
「そして騎士側はーーお馴染みと言えばお馴染み、イヴォルを守る騎士レティシン&メガーヌだー!」
貴族側からの歓声が上がる。貴族は騎士の味方で、狩人など参加させずに騎士だけで大会を開かせたいと思う者も多いらしいので無理はないが。
「私はレティシン・シナバス。久しぶりに騎士狩祭で戦うことができると期待しているよ」
「ええ。今までは狩人狩のお祭りでしたからね」
背の高い男が話した後、パートナーの女が答えるように話した。レティシンは回復魔法も使える騎士、メガーヌ魔法剣士のように見えた。
「狩られるつもりはありません。戦う前から心だけは負けないように全力を出し切れるように戦います」
僕が言うと、
「う、上に同じくです……!」
フラウも小さくだが言った。
「あら、強そうな方が弱そうね。これじゃあ期待できないじゃない」
「そんな事ないですよ。今に見ていてください」
メガーヌの言葉に僕が返す。
「両者闘志に燃えています! では充分に距離を取って……試合開始!」
「火炎竜!」
僕はメガーヌに向け魔法を放つ。牽制ではなく本命の魔法だ。メガーヌは、鎧を着ておらず耐久がない僕を先に仕留めようと考えたのだろう。僕に向かって飛びかかる。そして水の障壁を張って防ごうとするが、サキの魔力も混ざる渾身の上級魔法だ。防ぎきれず左手に火傷を負う。
「だがこれは好機!」
フラウの動きを止めようとしていたレティシンが、フラウの隙を見たと透かさず僕に対象を切り替える。
ーーしかし、フラウは元々レティシンなど見ていなかったのだ。火炎竜を防いでいるメガーヌの盾を突き破り、火炎竜、それに加えて剣の一撃を一気に与える。
「こっちはもらった!」
レティシンは僕に斬りかかる。
(サキーー)
(被って!)
急に帽子が巨大化して覆うように僕を守る。
「なんだと!?」
レティシンの剣は弾かれる。そしてーー
「メガーヌ!?」
その後、全員が状況を把握しようと思った時ーー既にメガーヌは降参をしていた。
「火炎弾!」
僕は牽制して距離を取る。その後すぐレティシンとの間にフラウが入る。
「なんだお前は……!?」
その剣捌きに隙はなく、なおかつ攻めている。フラウと剣の一騎打ちで無事でいられるわけがない。それにーー
「火炎竜!」
僕も居る。フラウが相手の剣を払った瞬間に合わせて撃ち込んだ。
「のああああああああああ!」
レティシンの叫び声が聞こえた後、
「こ、降参だ」
手放した剣を取られたフラウにそう告げた。
「勝負あり! なんと狩人側のシロガネ&レノンが騎士常連二人を下しました!!」
そう告げられた後、会場では大きな歓声が上がった。