能力者
空に浮かんだ雲が くじらや恐竜に見えたことがあるだろうか
包丁やナイフ ミサイルや重火器に見えることもある
そんな俺はひょんなことから
【くもをイメージ通りに具現化する能力】
を手に入れてしまった
そう手に入れてしまったのだ
神経質で考えすぎ 悲観的でネガティブと言われ続けた俺にとって
はっきり言ってこれはもう呪いである
幸い 能力は神様から もらったので もらった瞬間から下を向く生活が始まった
上を向いて歩こうとよく言うが 歩こう いや上を向いて歩こうと言う 歌がはやるということは 日本人がいかに 上を見ることを疎かにしていることの逆説的意味であり なんだかんだで上を見ずに生活することが可能であるという確かな証拠でもある
しかしその日は違った
快晴という天気予報を信じ、洗濯物を干し終え、趣味の 読書にいそしんでいた時
突然にわか雨が降り出す
本を読むのに夢中になりすぎて かつ外れた天気予報にイラつき、つい天をあおいでしまった
しまった と思った時には もうすでに雨雲を見てしまい その形が 大きな潜水艦に見え
(潜水艦!?やば)
空から潜水艦が降ってくる そう思って 身を屈めるも いくら待っても その衝撃は来ない
どういうことだと訝しみながら再度上をみる
すると 今まで 上を見ない生活で 気づかなかったが、 物干し竿には蜘蛛の巣が張ってあり
「なあに?お姉さんに遊んで欲しいの?うふふ」
この2年後、アラクネ美女【ミラ】と結婚することになるのはまた別の話である