クレープ
翌日は快晴であった。昨日の雨雲は完全にどこかへ行ってしまい、空一面に広がる青空が見える。洗濯物もよく乾きそうである。二人は朝ご飯を食べた後、買い物に出かけた。
「今日は何を買いに来たの?」
「えっと……食材と日用品ですね」彼女はメモを見ながら答えてくれた。
「そっか……」
「はい、それと服とか色々ですね」
「分かったよ。じゃあ、行こっか」
彼女は右手を重ねてきた。私は彼女の手を握り返した。
「はい……!」
彼女もぎゅっとしてきてくれる。
「えへへ……」
私は嬉しくなってつい笑みを浮かべてしまった。
それからしばらく歩いていた時だった。
「あっ……!」
彼女が突然立ち止まったので、私もつられて足を止めてしまった。
「どうしたの?」
「あの……あれって……」
彼女の視線の先にはクレープ屋さんがあった。
「ああ、あそこのお店ね。行ってみる?お金は私が出すからさ」
「はい、行きたいです!」
私たちは列に並んだ。しばらくして順番が来たので注文をする。
「すみませーん。イチゴチョコバナナ生クリーム二つお願いします」
「はい、かしこましました。少々お待ちください」
店員は奥に入っていった。
「楽しみだね」
「はい」
しばらく待っていると、頼んだものが出てきた。
「お待たせしました。ごゆっくりどうぞ」
「ありがとうございます」
私たちは席に座って食べ始めることにした。
「美味しいですね」
「うん、そうだね」
会話をしながら食べた。そして半分くらいまで来たところで、彼女が口を開いた。
「そういえば、昨日の夜に変な夢を見たんです」
「どんな夢?」
「それが……」
桜が話し始めた内容は、私が見た夢の内容と同じだった。
「なるほど……」
「だからなのか、今日の朝起きた時に不安な気持ちになったんですよね……」
「そうだったんだ……」
「はい……」
「でもさ、夢の中でその男と別れちゃったんでしょ?」
「そうですね……」
「なら大丈夫だよ。だって、今こうして一緒にいるじゃん」
詩夜葉は笑顔で言った。
「そうですよね……」
彼女は安心したような表情をした。
家に帰ってから夕飯の準備を始める。今日はハンバーグを作る予定だ。
(よし……。あとは焼くだけかな)
ちょうどいいタイミングで焼き上がった。
「いただきます」
「はい、召し上がれ」
二人で食べる。
「今日もいい出来ですね。とっても美味しいです」
彼女は満足そうにしていた。
「ありがとう。そう言ってくれて良かったよ」
「いえいえ、こちらこそ本当に感謝しています」
二人は食事を終えて、食器の後片付けをした。その後お風呂に入り、寝るまでの時間を過ごす。
「ねえ、何か面白い本とか無い?」
彼女に聞いてみる。「えっと……ちょっと待っていてください」
彼女は部屋から出て行った。少しすると一冊の本を持ってきた。
「これなんかどうですか?」
「どれどれ……」
タイトルは『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』だった。
「こ、これは……」
詩夜葉は動揺してしまった。
「えへへ……」
彼女は照れ臭そうにしている。
「ど、どうしてこれを……?」
恐る恐る聞いてみた。
「実は、昨日読んだんです」
「えっ……?も、もう読んじゃったの?」
「はい!面白かったですよ!」
とても嬉しそうな様子だ。
「そっか……」
詩夜葉はまだドキドキしている。まさか彼女がこんなものを読んでいたとは……
「あの、どうしました?」
彼女が心配そうに尋ねてきた。
「いや、何でもないよ」
私は平静を装って答えた。
「そうですか?なら良いのですが……」
彼女は不思議そうな表情をしている。
(何だろう……。このモヤモヤする感じは……。やっぱり、この本のせいなのか……?)
詩夜葉は悶々としながら夜を過ごした。




