表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/63

恋人

対面コミュニケーション強要は苦痛である。会話しているだけでも気が苛立ってくるし、少し長く話を聞かされると頭痛や腹痛が生じる。


「ちょっと待ってくれ! 俺の話を聞けよ」

「………………」

「おい、無視すんなよ。聞いてくれってば」

「……」

「おーい、聞こえてるのか? もしもし? もしもぉ~し?……ったく、何回呼んでんだよ」

「うるさいなぁ。なんですか? 私、忙しいんですよ」

「だから、話を聞いて欲しいって言ってるだろ?」

「嫌です。聞きたくないです」

「そんな事言うなってぇ~。頼むよぉ」

「しつこいですね。いい加減にして下さいよ」

「じゃあ聞くけどさ、お前、今どこにいるんだ?」

「えっ!??……そ、それは……その……」

「もしかして家にいるんじゃないのか?」

「ち、違います!」

「そうか……。なら良かったぜ」

「……」

「俺は今から出かけるところなんだが、ついでにスーパーで買い物をしようと思ってたんだけど、冷蔵庫の中が何もない事に気付いてさ。それで電話したわけだけど、まさか家にいないとは思わなかったよ」

「うぅ……」

「それにしても驚いたよ。だって急に『助けて欲しい』なんて言い出すんだもんな。一体どうしたっていうんだ?」

「……」

「まあいいか。とりあえずこれからすぐに行くから、大人しくしててくれよ」

「えっ!??」

「それじゃまた後でな」

ガチャッ ツー・ツー・ツー……………… ピンポーン♪

「はい」

「あっ、こんにちは。突然すみません」

「いえ、大丈夫ですよ。それより上がってください」

「はい。失礼しますね」

「お茶でも出しましょうか?」

「ありがとうございます。ではお願いできますか?」

「分かりました」

(ふ、危なかったわなんとか誤魔化せたみたいね)

「ところで今日は何を買いに来たんですか?」

「はい。実は夕飯の材料が無くなっていたのを思い出しまして、買い足しに来たところだったんですよ」

「そうなんですか。わざわざ買ってきて頂いて申し訳ありません」

「気にしないで下さい。私が勝手に来ただけですから」

「それでも助かります」

「いえいえ、とんでもないです」

「あの、一つ質問があるのですがよろしいでしょうか?」

「はい。構いませんよ」

「いつ頃からここに居たんですか?」

「はい。大体30分くらい前からになりますかね」

「そうだったんですか。全然気付かなかったので驚きました」

「そうでしょうねぇ。何しろ隠れていましたからね」

「えっ!??……どういう意味ですか?」

「そのままの意味ですよ。つまり私はずっとこの部屋に隠れていたってことなんです」

「ど、どうしてそんな事をする必要がありますか?」

「それはもちろん、あなたを監視するためです」

「監視?……一体何を言っているんですか?」

「言葉通りの意味ですが何か問題でもありましたか?」

「ありますよ! 問題だらけじゃないですか!!」

「例えばどんなところがですか?」

「まず第一に、私を監視したところで何にもならないと思います!」

「確かにそうかもしれませんが、万一の事を考えると心配で仕方がないんですよ」

「だからといって見張る必要は無いと思うんですけど!」

「そんな事はありませんよ。もし仮にあなたに恋人が出来たら、その時に邪魔が入るかもしれないではありませんか」

「こっ、恋人だなんて!!……そっ、そんなもの出来るわけないじゃ無いですか!」

「そうかなぁ? 案外近くにいたりして」

「いっ、いるわけないでしょ!」

「本当にそう言い切れますか? よく考えてみてください」

「……」

「どうやら心当たりがありそうですね」

「そっ、それは……」

「やっぱり居るんじゃないですか」

「うっ……」

「ほぉーら図星だぁ。やっぱりそうなんですね」

「うぅ……」

「まあ別にいいんじゃ無いですか? 恋をするのも自由だと思いますし」

「えっ!?……そ、そうなん……ですか?」

「もちろんですとも。ただ、あまり度が過ぎるような事があれば話は別ですけどね」

「そっ、それは……」

(うぅぅぅ……)

「おっ? 今度は黙り込んでしまいましたね。もしかして思い当たる節でもあるのかな?」

「うぅぅ……」

「おぉっと、これは怪しいですね。是非聞かせてもらいたいものです」

「わ、分かりました……」

「素直でいい子です。それで、相手は誰なんです?」

「……さんに……です」(ボソッ)

「えぇ?聞こえませんよ?」

「うぅぅ……」

「もう一度大きな声で言って下さい」

「えっと……、さ、桜井君にです」

(な、なんて恥ずかしいセリフを言わなくちゃいけないのかしら……。でも、もうこうなった以上は言うしかないわよね……)

「ふむ、なるほど。桜井さんの事が好きなんですね?」

「は、はい……」

「ふふふ。やっと白状してくれましたね。これで安心できます」

(ふふ、まさかこんな展開になるとは思ってなかったわ。でも好都合ね。このまま既成事実を作ってしまえば、きっと彼を手に入れる事ができるはず)

(くっくっく。今はまだ私の方が強い立場にいるわ。だからこそチャンスなのよ。ここで一気に距離を縮める事さえできれば、後は私が主導権を握れるわ。ふふ、待ってなさい。絶対に私の物にしてみせるんだから!)

(よし、とりあえずは順調みたいだな。あとはあいつらが上手くやってくれるかどうかだが、それは俺には関係ない話だし気にしなくても大丈夫だろうな。それよりも今は目の前の問題に集中しないとな。俺はこの先の事を考えていると不安になってくるから、早く帰って寝るとするか)

こうして二人の思惑は交錯していく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ