漫画の大丈夫への反感
「大丈夫か」は相手に対して無神経な質問である。保身第一の無能公務員体質は、どうみても大丈夫ではない相手に「大丈夫か」と質問し、「大丈夫」と答えさせる傾向がある。
日本には「元気ですか」「大丈夫ですか」と質問し、相手に「元気です」「大丈夫です」と答えさせようという暗黙の強要がある。質問者は相手が元気であるか大丈夫であるかを心配しているのではなく、相手に「元気です」「大丈夫です」と答えさせて問題ないと正当化したいだけである。公務員的なアリバイ作りである。
大丈夫との回答は往々にして大丈夫ではない。鈴木亜美『THANK YOU 4 EVERY DAY EVERY BODY』には「ダイジョーブって言ったけどちょっとヘコんだ」との歌詞がある。
吾峠呼世晴『鬼滅の刃 14』(集英社、2019年)で戦闘後の無一郎は満身創痍の状態であったが、「大丈夫」と言う。無一郎は重傷を負っており、限界を迎えているように見えたが、それでも彼は強がって「大丈夫」と言った。どう見ても大丈夫ではないのに大丈夫と言う。明らかに無理をしている。
NHK大河ドラマ『どうする家康』第18回「真・三方ヶ原合戦」では夏目広次が「大丈夫」という言葉を繰り返す。これで感動を誘うことは安っぽい。明らかに大丈夫ではないのに大丈夫と言っている。大丈夫は気休めにもならない。
「大丈夫か」の質問には反発することが正しい反応である。「大丈夫か」質問の欺瞞や反感は漫画で描かれる。久保帯人『BLEACH―ブリーチ― 50』(集英社、2011年)で毒ヶ峰リルカは「大丈夫か」と問われて、「大丈夫じゃないわよ」と答える。大丈夫でなさそうな人に「大丈夫か」と尋ねることは意味がない。
久保帯人『BLEACH―ブリーチ― 71』(集英社、2016年)は話と話の間のオマケページでザエルアポロが「元気そうだって。冗談が下品だな」と述べる。この台詞を読んで、私は思わず笑ってしまった。「元気そう」と言われて肯定せず、下品な冗談と切り捨てるザエルアポロは清々しい。
どうみても大丈夫ではない状態であり、「大丈夫か」と聞くことは誤りである。「大丈夫か」という言葉には「大丈夫です」という答えを強制する雰囲気があり、それが相手を追い詰める。
芥見下々『呪術廻戦 21』第185話「バイバイ」で秤金次はピンチに陥ったパンダを助けに登場した際に「少し痩せたか!?パンダ!!」と言う。ありきたりな物語では「大丈夫か」と言いそうである。「大丈夫か」ではなく、「少し痩せたか」と言う点がカッコよくて爽やかである。この問い掛けによってパンダは気が楽になる。




