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大丈夫の欺瞞

「大丈夫ですか?」という質問に「大丈夫ですよ」と答えると質問者は安心する。「大丈夫ではありません」と答えると相手は不安になる。これで回答を選ばなければならないとしたら、相手に忖度するだけである。「大丈夫」のやり取りは、相手の言葉を信じるフリをするだけのものである。

関西人の「ボチボチでんな」は「元気ですか」「大丈夫ですか」との質問に「元気です」「大丈夫です」と答えさせようとする暗黙の強要を拒絶する。「ボチボチでんな」は「パッとしない」「今一つ」という意味である。これには相手の思惑には乗らない面白さがある。


「大丈夫ですか」という問いには相手を気遣う気持ちなど全くない。大丈夫でない人に「大丈夫か」と尋ねることは無神経な行為である。相手の体調や精神状態など、様々な事情を考慮しなければならない。「大丈夫か」と聞くならば、聞いた方が悪者になる。良いことは最初から「大丈夫ですか?」と聞かないことである。


「大丈夫です」と答えても本当は全然大丈夫ではない。「はい。私は元気です」と答える時は「本当は病気だけど頑張っています」「本当は辛いけど我慢しています」「本当は死にたいくらい苦しいけれど無理して明るく振る舞っています」という意味になる。


「大丈夫ですか?」との質問に回答することで「自分は大丈夫だ」と思い込まされるだけで、実は全然大丈夫ではないのだ。「大丈夫ですか?」「はい。私は大丈夫です」「それならよかった」という会話は成立しない。相手のことを思いやる気持ちがあれば、相手の言葉を信じない。「大丈夫」と答える人にこそ「本当は大丈夫ではないのではないか」と疑わなければならない。


「大丈夫か」と聞かれたら、「大丈夫ではない」と答えることが当然である。相手が心配しているように見えても「大丈夫です」とは答えてはならない。

「大丈夫ですか?」

「いやあ、そんなこと言われても……ねえ? 大丈夫じゃないですよね?」

「そりゃそうだよなあ。大丈夫じゃなさそーだよなぁ」

「大丈夫じゃないよねえ」

「大丈夫じゃないですよぉ」

「大丈夫じゃないですよ!」

男達の声がどんどん大きくなっていく。

「大丈夫じゃない! 大丈夫じゃない! 大丈夫じゃない!」

「大丈夫じゃないぞおおおっ!!」

「大丈夫じゃないいいいっ!!!」

「大丈夫じゃないからあああっ!! 大丈夫じゃないからあああっ!!」

「大丈夫じゃないんだってばあああっ!!」

「大丈夫じゃないんだよおおっ!!」

「大丈夫じゃないんだってばああっ!!」

「大丈夫じゃないんですうぅっ!!」

「大丈夫じゃないんですよおぉっ!!」


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