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餌付け

私達は少し雑談してお店を出た。

「それじゃまた来週な~」

私が帰ろうとすると何故か当たり前の様に彼が隣に立っていた。

「駅まで送りますよ」

「え……」

二人で歩くこと数秒後には最寄り駅に到着していた。

腕を絡めてきて(!?)びっくりして固まっているとそのまま手を引かれる様に家までついてきた。

そして現在私の目の前には彼が作ったご飯が並べられていて……あれぇ?おかしいぞぉ?

「せめてものお礼です」

彼に言われながら一緒に食事をとっていた。うん……確かにおいしい。すごくおいしいけど何か納得いかない。

「……んー! このチーズピザもおいしいですね。でも僕は断然こちらのカルボナーラが好きですよ」

「そ、そうか? はっ!? まさかさては貴様、女子力高めのイケメン男子め!」

「そんなことはありませんよ。僕が選んだものは全部おいしいからですよ?」

ぐはぁあああ!!!何だコイツ天使かな?いやいやいや、悪魔だよ。だって私のことを散々こき使っといて、自分の好みの食材だけ選択するのだから。

「口に合いませんでしたか?」

不安そうに聞いてくるので思わず全力で首を横に振ってしまう。

「違うの」

「よかった」

彼の笑顔が素敵すぎて見惚れてしまう。しかしすぐにハッとして頭の中で否定した。これは餌付けされているんだ、私と。

「……うーむ。やはりここに来た僕の判断は正しかったな」

食後のデザートを食べ終えると彼はコーヒーを飲みながら満足気にそう言った。

「……それは良かったですねぇ」

すると彼は相変わらずにこやかな笑顔で返事をしたのだが……。何故だろう……

「おい待て。今、心底どうでも良さそうな感じしなかったか?」

聞くともなしに疑問形のような言葉を発する。その表情からはいつものように何を考えているのか読めなかったけど。

「いえいえそんな事はありませんよ?ただ……」

ただ?

「……本当に貴女といると退屈しませんね。色々と予想外の事が起き過ぎていて楽しいですよ」

やっぱりこの人は苦手だ。何というか……全てを見透かしているような目をしている。


さて、今日はどんな日になるだろうか。朝から晴れていたら散歩に行こうかなと思っている。

「あー……なんかすっごくスッキリした! お腹空いたぁ~」

「もうすぐだから我慢しなさい」

「うーん……」

「じゃあ、ご飯にしようか」

「うん!!」

満面の笑みで大きく同意し、私の手を握って歩き出す。この笑顔が見られるなら私は何だってするだろうなと思った。そして、私も微笑んで手を握り返した。


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