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チェーン店は美味しいよ

桐田詩夜葉はチェーン店が好きである。いつもと違うメニューを選ぶこともあれば同じものを繰り返すこともある。ステレオタイプな感覚はチェーン店を「おいしくない」と言うだろう。「安くて便利だから仕方なく使うだけ」「時間も金もないからこんなところで飯を食べている」などネガティブに捉えるだろう。しかし、それは勿体ない。チェーン店は宝の山である(稲田俊輔『人気飲食チェーンの本当のスゴさがわかる本』扶桑社新書、2019年)。


何もチェーン店のメニューの全てが優れていると主張するつもりはない。チェーンと個人営業の料理の違いというものはあるはずだし、違いがなければ不自然である。チェーン店の魅力はメニューの選択肢が多いことだろう。かなり安価でありながらも高級志向なものまで提供している。逆に個人経営の店舗に慣れた消費者の方が出されたものをそのまま食べる受動的な感覚になっているだろう。それを有難がってグルメ意識を持っているならば滑稽である。


チェーン店の利用は「値段と味は比例しない」の実践である。美味しさは値段で決まらない。値段と味や品質は比例しない。高かろうが安かろうが、チェーン店だろうが何だろうが、自分が気に入ったものを選択する。チェーン店の効率よく美味しい料理を提供しようとする工夫や挑戦には脱帽させられるし、その価値があると思っている。


チェーン店は消費者の生活を豊かにする存在であり続けている。美味いものを食べれば心も体も生き返ってくる。そしてまた仕事にも精が出るし、生活そのものを楽しくしてくれる。食は人間の生命力のもとであり、人間にとって大切なものである。


チェーン店の利点としてサービスの公平性がある。チェーン店の従業員教育はマニュアル通りにしか行動できない店員を作り上げると批判される。しかし、それが悪いことなのか。誰に対しても同じサービスという機械的平等に心地良さを感じる。顔見知りの常連客に特別な気配りをすることは、別の誰かにマイナスのサービスをして成り立っている可能性がある。

東京03のコント「常連客」は常連客へのサービスが、他の客には不公正になることを笑いにした。

「この店では、いつも同じ席に座っているお得意さんにだけ特別にサービスをする」

コントならば笑いになるが、当事者は腹立たしい。


常連客へのサービスは、常連ではない一般消費者には不公正感を与える。大口顧客への割引のようにルールが明確化されており、万人に開かれていれば、不公正感は少ない。しかし、昭和の村社会的な贔屓になると、透明性がなく、不公正感が高まる。サービスを受ける側ではなく、受けない側がどう思うかの視点も必要である。それは消費者を相手にする経営者にとっても有益な視点である。


明るい店が多いこともチェーン店の魅力である。「明るい場所で料理をしてこそ、ものの美味いまずいが分かる」(山本一力『つばき』光文社、2017年、58頁)。これは店で食事をする側にも当てはまる。


日本は産業革命こそ起きなかったが、江戸時代から資本主義的な食のスタイルが発達していた。寿司も蕎麦うどんも立派なファーストフードである。寿司は炭水化物とタンパク質を同時に摂取する点でハンバーガーと同じ構造である。日本はアングロサクソンよりもヨーロッパ大陸諸国に近いと考えられがちである。しかし、それは明治以降の国家主義の誤った方向性の結果で、チェーン店の普及が示すようにヨーロッパ以上に米国流合理主義と近いものが元々あると言えるのではないだろうか。


新型コロナウイルス感染症のパンデミックでStay at Homeでおうち時間、おうちごはんを楽しんでいるが、チェーン店の味が無性に恋しくなることがある。チェーン店はシステマティックであり、同規模の店舗を比べるとSocial Distanceが保たれやすく、外出時の選択肢になる。


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