値段と価値は比例しない
価格と品質、価値が比例するという価格信仰の拝金主義はエンタメ作品で痛烈に批判されている。「高価な墓石を立てるより 安くても生きてる方が素晴らしい」(大事MANブラザーズバンド『それが大事』)。
「お前は値段の高さがものの良さだと思っているのか」「高級品を身に着けふんぞり返ってみろ、それこそ品格が疑われる」(栗山ミヅキ『保安官エヴァンスの嘘 DEAD OR LOVE 3』小学館、2018年)
林田球『ドロヘドロ 2』(小学館、2002年)は安い服の店に入った人を貧乏人とする決めつけに対して、「服の趣味は人それぞれですからね。ビンボーとはかぎりませんよ」と反論した。
金持ちだからといって、高い服を着ているとは限らないし、貧乏人が着飾らないとも限らない。これはその通りである。安物好きを貧乏人とすることには無理がある。
これは「服装」という領域にかぎらず、「趣味」「生き方」「考え方」等すべての問題に共通する問題である。特に料理では値段と味は比例しないという主張が目立つ。
「高級レストランより大衆食堂のほうが性に合っているんでね」(東野圭吾『卒業 雪月花殺人ゲーム』講談社文庫、1989年、88頁)
「格式の高いストランだとかえって窮屈で食事が咽喉をとおりません」(田中芳樹『銀河英雄伝説外伝4 螺旋迷宮』)
田中芳樹原案、荻野目悠樹著『野望円舞曲 4』(徳間書店、2016年)ではアイスクリームがカップタイプしかないと文句を言う。コーンが食べたい。高級品は逆につまらない。カジュアルにグルメを楽しみたい。
「パーティーや高級レストランの食いものに比べりゃ、ここのハンバーガーのほうが、よっぽどマシだ」(浦沢直樹『MONSTER 15』小学館、2000年)
「高級食材の料理には興味はない」「今僕に必要なのは一般的な大衆料理だ」(『Fate/Zero アンソロジードラマCD Vol.1』「イートイン・泰山」2012年)
『クレヨンしんちゃん』「むさえちゃんにおごられるゾ」(2020年12月12日)の野原みさえは高級レストランよりもリーズナブルな店を好む。みさえは奢られる立場であるが、それでも高級レストランを嫌がる。御馳走されるとしても、無駄な出費は嫌である。これが健全な消費者感覚である。
ほったゆみ原作、小畑健画『ヒカルの碁 21』(集英社、2003年)の倉田厚は寿司の「上」が嫌いで、「並」が良いと言う。この気持ちは共感できる。寿司を味わいたい人は高額な「上」よりも「並」を腹いっぱい食べたい。逆に、ここで「上」を無理やり勧めてくるような人間には腹が立つ。赤身を食べたいのに恩着せがましく大トロを押し付けることも同じである。本人の主観では良いことをしていると思っているから始末に負えない。はっきり言って迷惑極まりない。
「バカヂカラ」のコント「親父の威厳」では「高けりゃ美味いってもんじゃない。美味いもんは美味い。値段じゃない」との台詞がある。グルメぶって高級メニューを褒める人を凹ませる笑いになる。




