表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/62

日常

詩夜葉の肌は研磨された大理石を思わせるほど綺麗で、光が滲みでてくるように思えるほどである。ほとんど手入れをしなくてもスベスベで、産毛もほとんど生えてない綺麗な赤ちゃん肌である。化粧によって美しさを強調する必要もない。


この点は親に感謝している。友達から「羨ましい」と言われることも多い。「そんなことないよ」と言いつつも内心鼻高々である。肌の丈夫さに胡座をかいて二十歳を過ぎても海で日焼けする一方で、ケアにはあまり気を使っていない。


ネイルアートや髪をいじるのは創造につながるが、肌のお手入れは保持することである。画期的な変化がないので面白味に欠ける。とはいえ、そのような地味な活動が大切である。保持で済むうちに手を打てるものは打っておきたい。自分の年齢や肌質にあった乳液を、寝る前にきちんと塗ることが大切である。


髪の毛は染め過ぎで頭皮を痛め、ロングヘアに戻しにくい一因となっている。染めることを止めるつもりはないが、髪の痛みは体の疲れの悲鳴かもしれない。まずは食生活をしっかりと整え、生活のリズムを取り戻したい。


上京したばかりの頃は、オフの日に、JRや地下鉄の一日券で探索をよくした。駅を降りたら、目の前に自分のポスターがバーンと貼られていて、熱いものが込み上げてきたことを今でも鮮明に覚えている。


ブラブラと色んなところへ散歩することは昔から好きである。のんびりと歴史のある場所を堪能したい。まだ、それほど顔を知られていなかったから、人が集まることもなかった。福知山にいた頃から寺社巡りが好きだったため、浅草にはよく行った。


歩きに歩いて、ある作家の資料館にたどり着いた。この人は二十四歳で亡くなったが、素晴らしい作品を残している。それに比べ、自分のここまでの人生は何なのだろう。今は、少しはファンの皆さんに支持してもらえているが、これから先どれだけのことができるか、と考え込んでしまった。


歩きながら電信柱などにある地名を見ることが楽しみである。しかし最近では悲しいことに「十二社」(じゅうにそう)、「御徒町」「鶯谷」というような古くからの情緒ある名前が消されつつあるようである。合併により地名が消えるケースも多い。


十二社は西新宿というシンプルな名前になってしまい、古くからの住民はガッカリしたという。大都会なので、他所の人にも所在地を分かりやすくするということが名目である。しかし、「味気のない名前」という意見は当然なものである。地元の人の中には「田舎から来た役人がつまらんことして」と怒っている人もいる。「百人町」の人らは、改称反対運動を起こして、名前を守った。


このような人々の気持ちはよく分かる。長年その土地に住んでいる人にとって地名は誇りであり、地元の人にとっては、寂しいものである。詩夜葉も地元の地名が消えることは、絶対に嫌である。


東京生活は、念願の夢を叶えられる、という希望に満ち溢れた日々であったが、故郷の風景が、ふと浮かぶことがある。東京に出てきたくて出てきたのに、どうして、こういう感情になるのか不思議である。ただ、外に出ないと、故郷の良さは気付かないものとも思う。


夏は熱い。高温多湿、風っ気なしの状態が苦手である。屋内では「ふぇー」と言いながら、クーラーの下に一直線である。都会では家やビルが多く、クーラーの排出口から、熱気を帯びた気体が、ガンガン出されるので、暑さに拍車がかかってハードである。日射病や熱射病、熱中病が現実の問題として存在し、暑さで人が亡くなることも十分ありうると実感した。夏休みで故郷に帰省した時、「あれ、涼しい」と思ってしまったほどである。


夏の思い出はクルマで移動中に見た神宮外苑の花火。よく見えなかったが、ドォンドォンという音を聞いた瞬間、今年も元気よく夏が生きていると思った。聞き逃してしまうほど小さな、けれども地面から突き上げてくる音だった。


秋は好きな季節である。涼しくなっていくのがいい。風が気持ち良ければ、どの季節もいいと思っている。少し肌寒いが、心は暖かい。夏が終わり、財布の中身は少々寂しくなるが、疲れは癒される。うっかり一駅乗り過ごしても、「よしっ、歩いて帰るぞ」と気合が入る。


青々とした木の葉は時々刻々と足早に、色彩を深めていく。木々の色づきが素晴らしいと、心もスカッとしてくる。果物は実り、樹木は祭りに参加し、懐かしい故郷を思い出す。空は澄み渡り、星の輝きも夏よりも綺麗で、端では虫達が合唱してくれる。


秋風が吹くと温泉が恋しくなる。もみじ狩りを楽しんだ後は、露天風呂でゆっくり体を伸ばしてリラックス。この季節にしか味わえない芳醇でリッチな味わいを、ほっぺたいっぱい、お腹いっぱいに満たしたい。


芸術の秋、読書の秋…何かを始めるにはもってこいの季節である。展覧会や音楽界に出かけるのも楽しいが、インドア派の詩夜葉は自分の部屋をアートな空間に演出し、オーディオのコンサートを楽しむ。食欲の秋という言葉もある。美味しいものをたくさん食べて、飲んで、冬に備えて英気を養いたい。


冬は寒い。「ひぇー」と言いながら炬燵に直行する。炬燵に入ってテレビを見ながらみかんを食べている時に幸せを感じる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ