第二話 元パーティー
「いやー、まさかこんなところでヒロトと会うなんてねー」
「そりゃこっちの台詞だ」
立ち話も何なので、とりあえずアリサ行きつけの喫茶店に来ていた。
「どう?ここの紅茶おいしいでしょー?」
「おいしい、のかな?」
正直味なんて分からん。
が、なんとなく高そうな味がするのでおいしいのだろう・・・多分。
「なにそれー、まあいいや。それで?なんでこっちにいるの?」
まあ、当然そうなるわな・・・。
「あー、なんだ、観光?」
「嘘」
あー・・・めんどくせーーーーーーー。
「で、本当は?」
「笑うなよ?」
「笑わないよ」
まあ、こいつになら言ってもいい、のか?
「マクシン帝国で冒険者してたけどパーティーに解雇された」
「・・・ドンマイ」
――――――――
一ヶ月前、マクシン帝国、ダンジョン【ゴーレム迷宮】18F
「オイ、ヒロ!もっとちゃんと攻撃しろ!」
「やってるって!」
俺たちのパーティー『夜明けの狼』は国指定ダンジョンの【ゴーレム迷宮】を後略していた。
この世界には大小様々なダンジョンがあり、大きなダンジョンほどより価値の高い古代の遺産が手に入るとされている。
そこで、多くの国では自国の発展のため国がいくつかのダンジョンを指定し、それらのダンジョンを攻略は国からの依頼として冒険者ギルドに張り出される。
もちろん、国が主導でやっていることなので報酬は個人の依頼より多く、また、階層主を倒して深層を開拓したパーティーは国公認のパーティーとなることが出来、富、名声、地位、まさにダンジョンドリームと呼ばれるものを手に入れることができる。
一年前、俺が冒険者となりパーティーを探していたところ、スキルの汎用性から期待の新人として新進気鋭の新パーティー『夜明けの狼』にスカウトされた。
『夜明けの狼』の快進撃は凄まじく、なんと半年で現在最高の18階層の一歩手前、17階層まで突き進んだ。
しかし『夜明けの狼』の快進撃はそこまでだった。
半年前は、ついに今年中に大台の20階層まで進めるんじゃないかと、国を挙げての大盛り上がりだったが、17階層は厳しく、攻略するのに約半年を労した。
そうして迎えた現在最高の18階層。
当然、俺たちは行き詰まっていた。
「ったく、堅すぎるだろっ!」
「まあまあ、落ち着けってカーム」
パーティーで一番短気なカームは雑魚のゴーレムですらなかなか倒せないことに苛立っていた。
「ああ!?お前がもっとしっかりバフをかけてくれたらもうちょい早く倒せたんじゃねえのか!?グラフ!」
「待てよカーム、人に当たるな」
パーティーリーダーのリーフがカームを注意する。
「でもよお!リーダー!」
「落ち着け、カーム、人に当たるのは良くない。それに、当たるならもっと別の相手がいるだろう、なあ、ヒロ?」
リーフは俺の方を見ながら、意味ありげな視線を送ってくる。
「・・・悪い、俺の攻撃力じゃこの階層のゴーレムにはなかなかダメージが通ってないもんな。いやでも、魔法なら」
「言い訳とかダッサ!せっかくリーダーのリーフが謝る機会を作ってくれてんのにぐだぐだ言い訳なんかしてんじゃないわよ」
ヒーラーのミーナも最近俺に対してあたりがきつくなっている。
「そんなカリカリしないで、ミーナ。せっかくのパーティーなんだ、仲良くしようよ」
「もうっ、リーフは優しすぎるのよ・・・」
何が「仲良くしよう」だ。勝手に人を悪者にしといて自分は偽善者気取りかよ。
「つーか?ヒロ、魔法がー、とか言ってたけどアンタ魔法じゃシエルにかなわないじゃん!なのに魔法ならー、とか必死すぎてウケるー!」
シエルは本職の魔法使いだ。
盗賊の俺がかなわなくて当然だろ。
「この際だからシエルもなんか言っちゃいなよ、シエルもこいつにはうんざりしてるんでしょ!」
「えと・・いや、わ、私は・・・・ヒロさんは、頑張ってると思います・・」
何で顔をそらす。
「ぷっ!シエルにすらフォローされてんのマジでウケるんですけど!」
「ヒロも必死なんだ。笑ってやるなよミーナ」
だから何でお前はそう上から目線なんだ。
するとそこでリーフが急に真面目な顔で話し出した。
「正直、僕らは攻略に行き詰まってる・・・」
正直?誰が見ても明らかだろそんなん。
「だから、何か変化を取り入れなきゃいけないと思うんだ。・・・『夜明けの狼』は今ここで変わらなきゃいけない」
確かにこのまま行っても、18階層を攻略できるのはいつになるか分からない。
「そこでなんだけどさ、ヒロ。提案があるんだ」
「え?俺?」
「そうだ。・・・ヒロ、パーティーを辞めないか?」
「・・・・・・・・・・は?」
そうしてその日のうちに、俺がパーティーから抜けることが決定したのだった。