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星空の商人  作者: ふおん
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この宇宙の成り立ち その3 『宇宙法典』

 過去の地球人たちはこの宇宙には法律が必要だと言い始めた。

 彼らの主張によると、一部の星族――コッパニオン星人のことだが――がこの宇宙を支配しているのは間違っている。もし彼らのうちの誰かが悪意によって他の星族たちの権利を侵害し、その財産を奪うようになるかもしれない。


 だからそれを取り締まるための法律というものが必要だと言い、過去の地球人たちは『宇宙法典』という法律を勝手に作り、それを他の星族たち――コッパニオン星人も含めて、それに従うべきだと主張した。


 コッパニオン星人や他の星族たちには過去の地球人の言うことを理解できなかった。地球人以外の星族は基本的に他の星族には関わらないからだ。それには理由がある。


 他の星族たちは生き物を食べない。地球人にとっては奇妙に思えるかもしれないが、彼ら他の星族はその星に存在する無生物を直接身体に吸収し、そして無生物を排出する。つまり、彼らは地球人でいう所の食事というものをしないのである。


 生物と無生物という観念は地球人だけに存在する観念であり、他の星族はそれらを区別しない。


 彼ら他の星族たちは、彼らの身体を構成している分子――それは主にその星に存在する無生物であるが――その一部が何かの外部的刺激によって体外に流出したときにだけ、彼らの星の地表に存在する無生物、つまり岩や水――そう呼べればだが、彼らは生物と無生物を区別しない――を取り入れる。


 彼ら他の星族は基本的に不死の存在であり、また子孫も残さない。彼らがいつの時代から存在するか我々地球人には分からないが、おそらく宇宙のはじめからほとんど変化せずそのまま存在し続けている。彼らには親や子というものがなく、ただ存在し続けるだけなのだ。


 彼ら他の星族の身体は地球人に理解出来ないことだが、運動をすることによってエネルギーを消費しない。よって食事をする必要もない。彼らは彼らの独自の法則によって運動している。地球人の持っている物理の法則というものは地球の生物にのみ作用する――他の星族たちは地球人のいう所の生物とは別のものである。

 

 彼ら他の星族はまったくの不死というわけではなく、存在している長い間に少しずつその身体を構成する原子を失っていく――その原理は他の星族たちにも分からない。


 彼らは失われた原子を補うために彼らの星に存在する無生物を身体に取り入れる――地球人の食べるということとは根本的に違う。


 彼らが取り入れる原子はそれぞれの星族の生息する惑星の原子であり、彼らは自給自足をしており、彼らは他の惑星の原子を基本的には必要としていない――地球人も基本的にはそうだが、彼らは自分たちの星の資源を浪費したせいで資源不足に陥り、他の惑星の原子を必要としている。


 そういうわけで地球人以外の星族たちが他の星族の権利や所有物を侵害するということはほとんどなく――近所付き合いでの小さなトラブルのようなものを除いて――我々地球人が記憶している範囲ではそんなことをしたことはないにも関わらず、過去の地球人たちは他の星族の権利を守るためと称して『宇宙法典』をつくって他の星族たちに認めさせようとした。


 最初、他の星族たちはそれをただ眺める――無視するとは違う――だけで何の反応も見せなかった。しかし過去の地球人たちのしつこい主張を聞かせ続けられたことによって他の星族たちにも『宇宙法典』を認めるものたちが出てきた――過去の地球人たちはことあるごとにその主張を繰り返したので。


 それを見て他の星族たち、特にコッパニオン星人たちは、罪悪感のようなものを感じ――彼らには元々そんなものはない、なぜなら地球人のように他の星族の権利や財産を侵害しないから――地球人たちの主張する『宇宙法典』を受け入れることになった。

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