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私はクレプトキン星にやってきていた。
ここは銀河系の辺境にある小さな星でトルーザーという少数星族が住んでいる。
この星は大気が二酸化炭素8:酸素1:窒素1の割合でガスに覆われていて、そこには軟質状の皮膚を持った生物が多数生息し、その体液は紫色でおもにリンとケイ素を含んでいる。
それらの生き物は地表の80パーセントを覆う緑黄色の泥土の上に住んでおり、その泥土には多量のアルゴンが含まれており、赤外線を当てると紫色に発光する。
この星の生物の体液が紫色なのも、地表にたくさん存在するアルゴンのせいだ。
トルーザーの文化レベルはかなり高く、言語を話し、彼ら独自の宇宙船、別名『パーリンガム』と呼ばれるランタンを主成分とする銀白色の六角形の船体の表面をこの星に多く存在するアルゴン7:クリプトン3のガスで覆い、我々地球人にはよく分からないが反重力装置のようなものを船体内部に取り付けて、それによって宇宙を航行して、近くの惑星、例えばポトロキン星、ナブレット星などの少数星族たちと取引をして生活している。
私がこの星にやってきたのは、この星に多量に存在するそのアルゴンやその他希少元素のサマリウム、ルチウム、ローレンシウムなどを手に入れるために、この星を売買するためにやってきたのだ。
私の職業は惑星売買の商人、通称「破壊者」と呼ばれるものだ。
なぜ破壊者と呼ばれるかと言うと、それは我々地球人に買われた惑星はその資源のすべてを奪い取られ、浪費され、そして誰も住むことが出来ない死の惑星にされてしまうということでそう呼ばれている。
「破壊者」と呼んでいるのは星を奪われた彼らが言うのではない。我々地球人の一部、星族愛顧主義者たちによってそう言われているのだ。
彼らの主張によれば、それぞれの星族には権利というものがあり、彼らが生まれ育った星々は彼らにその所有権があるので、この宇宙の支配者地球人であってもそれを奪うことは出来ないのであって、それを売買するのは宇宙法典にも違反していると彼らは主張している。
しかし、それを支持するのは一部の地球人だけであって、宇宙の支配者という立場にある多くの地球人は、自分たちには他の星族たちにはない特権があり、他の星族たちの持っている所有財産を奪う権利があり、その権利を行使する自由が我々地球人にはあると考えている。
よって、私のような惑星売買の商人が星を買取、それを第一種族である人間族の繁栄のために役立てる仕事の人間がいるわけである。