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第七話:旧王都アルマ


 ヒルダが一緒に来る事になって、なし崩し的にミリアとシータも

俺達と同行する事になってしまった、おばさんがいるらしいが父親の兄の

嫁さんらしく血は繋がっていないそうだ。

   

俺達はヒルダと出会ってから1週間でようやくアルマの街へついた。


「大きい街だね」

「そうだな、オリオンの5倍以上あるんじゃないか?」

「城壁も20メートルはあるわね」


「この街は先代の国王の時まではミーティアの王都だったんですよ」

「そうなんだ」

「ご主人様、宿に案内致します」

「ご主人はやめてくれよ」

「いえ、いくらご主人様のご命令とはいえ、これだけは譲れません」

     

 気立ても良くてステータスの値も高いんだが

信念が強いのは困った物だ、3姉妹の仲ではシータが一番柔軟性があるな。  

    

「まずは馬車を持ち主に届けにいかないと」

「そうだったな」

「アベル兄さん。本来の目的を忘れてましたね」

「たしかお名前はカールさんで鍛冶職人らしいわ」

「カールさんならよく知っております。ご案内致します」


「ヒルダ、もう少し砕けた言葉使いで頼むよ」

「わ、わかりました」

       

建物のほとんどがレンガ造りで道も整備されている

5階建て以上の建物も多いし、さすが旧王都といった感じだな。


  

「カールさんいらっしゃいますか?」

「ヒルダの嬢ちゃんじゃないか」

「お客さんを連れてきたんですよ」

「武器の注文か?」

    

「すいません、東の国からきた者ですが商人の方に頼まれて

馬車を返却にきました」


「あんた達が、手紙に書いてあった冒険者だったのか

助かるよ、こいつは優秀な馬だからな」

     

「それで……」

「礼金の事も聞いているぞ。金貨14枚だったな」

「ありがとうございます」

   

「ヒルダ、鍛冶ギルドで聞いたが奴隷商人に買われたらしいな」

「こちらにいるアベルさんにオリオンで出会って買い戻して頂いたんです」

「それは良かったな。これからどうするんだ?」

   

 目的も果たしたし、治安がある程度良くて冒険者ギルドの仕事の多い

街で暮らすのが目的だが、この街は大きすぎるかも知れないな。


「しばらくはこの街にいるつもりです。ギルドの仕事次第ですね」

「そうか、この街ならランクが高ければ十分やっていけるはずだぞ」


    

とりあえず宿だが、いい所はあるかな?

 

「みなさん宿をお探しなんですよね?」

「そうだな」

「ではカンガルー亭にいきましょう」

「変わった名前ね」

「女将さんは優しいですし料理も絶品で、更に安いんですよ」

「そんなに都合のいい宿だと部屋も空いてないだろう?」

「大丈夫ですよ。常連さんの為に常に3部屋ほど空けてありますから」


 随分、サービス業の事を理解している宿のようだな。


「女将さん、ヒルダです」

「まあヒルダちゃん、無事だったのね」

「はい。なんとかなりました」

「ご免なさいね。私たちがお金を融通出来れば良かったんだけど」

「もう忘れて下さい。ところで泊まりたいのですが2部屋空いてますか?」

「東の国から宿泊客が沢山きて、1部屋しか空いていないの」

       

 俺達はかなりゆっくり移動したからな、オリオンで足止めを食らった

連中は早速、評判の宿で部屋を取ったか。


「でもねパーティ用の部屋だから8人まで大丈夫よ」

「男1人に女性が5人か、他の宿を当たってみるか?」

「1部屋あれば十分です」

「いいのか?」

「ご主人様と一緒ならすぐにお守りできます」

            

「そう、ヒルダちゃんのご主人様なら割引きしないとね

前と同じで1ヶ月連泊してくれるなら4割引きで金貨1枚と

小金貨8枚でいいわよ」


 そうすると一泊1万イリスか、オリオンの宿に比べても

随分安いな、大丈夫なのか?


「では1ヶ月の連泊でお願いします」

「はいよ、食事は朝が大銅貨2枚で晩が大銅貨4枚だよ

宿泊客はパンとスープはお替わり自由だよ」

「おばさま、お米はありますか?」

「あんた達は米派かい、もちろんあるよ」


「ではとりあえず1週間分の食費を足して

金貨2枚と小金貨2枚に大銅貨2枚ですね」          

「確かに受け取ったよ。晩ご飯はお米にするかい?」

「ぜひお願いします」

「わかったよ。うちの旦那に言っておくよ」


 部屋は506号室か、6階建ての5階部分か

きっと最上階はいい部屋なんだろうな?


「こちらです」

「ヒルダはこの宿は長いの?」

「はい。3ヶ月ほど泊まっていました」

      

「わたし窓際をゲット」

「ミリアもゲット」

 ベスは良いとして、ミリアお前は子供か?


「私はドアの前を希望します」

「それじゃ俺がベスの横だな」

「わたしはその隣でいいわ」

「おい、上の段が空いているぞ」

「いいの!」

「では私はミリア姉様の隣ですね」


 ベッドが4個で2列で窓が2つにクローゼットが2つに

タンスが1つにテーブルが2つと椅子が8個に光りの魔道具が1個か

オリオンの2割の値段で部屋のグレードは2倍以上だな

昔泊まった、スイートの部屋と比べても遜色がない。

 

「やっぱりお風呂はないか?」

「ベス、お風呂は自分達の家を持ってからね」

「この街は大きなお屋敷が沢山ありますから、お金さえあればお風呂も

夢ではありませんよ」


 まずはヒルダお勧めの食事だな、始めに転移した街のような味だったら

引っ越さないといけないな。



「おばさま、6番定食を3人前と3番定食を3人前お願いします

飲み物はワインが3つに水が3つで」

「ここは番号で注文するのか?」

「1番~3番がパン料理で4番~6番がお米を使った料理なんです

朝は2種類ですが、晩は6種類あるんですよ」     

                


「おまたせ。赤マグロの刺身は普段は別料金だけど今日は私のおごりよ」

 定食は牡蠣フライにポタージュとサラダに鶏肉の煮物とご飯で

赤マグロの刺身か、豪勢だな。


「この赤マグロって鰹かと思ったけど、ほんとにマグロだよ」

「女将さんがマグロって言ってたじゃない」

「ミリア、初めてのお客さんなんだから、鰹と疑っても当たり前よ」

「そうですよ姉様、赤マグロは高いですからね」

「幾らくらいするんだい?」

「ここだと別注文で1人前銀貨4枚ですが、他だと10枚は取られますね」

「なんでそんなに安いんだ?」

「おばさまのお父様が漁師なんですよ」

「なるほど」


 刺身は中トロといった感じか、グラムにして400グラム位あるな

天然の近海物で4千イリスとは確かに安い。          

 

「美味しい! この赤マグロとろけちゃうよ」

「そうね、大トロだったら最高でしょうね」

「みなさんは脂身が好きなんですか?」

「そうね、どちらかと言えばだけど」

「脂身の部分ならこれより更に3割引き程安いですよ」

「ほんと! 明日は大トロ祭りね」

 

 確かに日本でも大トロより赤身が好きな人は結構いるし

赤身の方がヘルシーだが、大トロが安いとは。


 牡蠣フライも熱々で美味しいし、鶏肉はみりんで煮込んであるのか

冬にサラダというのはビニールハウスでもあるんだろうか?


「おばさま、ご飯おかわり」

「私も」

「俺ももらおう」

            

「貴方たちよく食べるわね。リーゼ、お櫃に10人前ほどご飯を

盛って運んできて頂戴」

「お母さん、わかりました」

「今の女の子は?」

「家の末の娘よ」

「おばさまには娘さんが3人いらっしゃるの。リーゼちゃんはまだ10才ね」

 見た目はシータより年上に見えるな。


  

「食べたわ。もう食べられない」

「皆さんはお酒は飲まれないんですか?」

「飲んだ事がないわ」

「ベス、ここで寝るな。部屋に戻るぞ」

  

 異世界で初の当たりの宿だったな

ベッドは清潔、飯は美味くて安い、そして親切ときたか。


   

 ◇

    

 宿はかなり南側だったんだな、冒険者ギルドは北側で歩いて30分程度か。


     

「お姉ちゃん、随分大きいね」

「そうね、本当にギルドなのかしら?」


 建物は6階建ての赤レンガ造りで同じく赤い倉庫が2つもある

フロアーの広さは区役所並みだ、1フロアーに40人程度の職員がいる。

  

「人が一杯」

「そうね、冒険者だけでも50人以上いそうね」

「ここのギルドは王都のギルドに比べても遜色はありませんよ」

   

「問題は依頼の数ね」

「それも問題ないと思いますよ」


 

 討伐、捕獲、調査、護衛、採集と色々あるが、Fランクの依頼が3件しか

ないな、ほとんどがCランク以上だ。

   

「どうする低ランクの依頼がないぞ」

「そうね、やっぱり大きい街は不味かったかしら」

「大丈夫ですよ。パーティに高ランクの冒険者がいればあとは実力次第です」

「でもミリアはDランクでシータはEランクでしょう」

 

「僭越ながら私はBランクですので。良い依頼を受けられます」

「ヒルダ姉様はAランク間近の冒険者なんですよ」


「それなら、このオークの巣の討伐依頼にしましょう」

「それいいな」

「私も、オークは美味しいし」

         

 報酬も調査で金貨2枚で討伐で金貨30枚だ

1人頭金貨5枚なら割は良い方だな。


  

「みなさん説明をちゃんと見ましたか。オークメイジが8体に

オークリーダーが2体確認されているんですよ」

「勿論見たわよ」

「オークキャプテンと同じくらいの強さよね」

「そうですが」

「それなら問題ないわ」

      

「ヒルダさん、受けてきて下さい」

「姉様、大丈夫ですよ。みなさん強いですから」


    

「おい、あれって深紅じゃないか?」

「確か、奴隷落ちしたって聞いてたが。戻ってきてたのか」

 ヒルダは二つ名があるのか。


  

「西の森といっても、そんな深くないんだな」

「はい一番危険なのは北の森ですから」

「お姉ちゃん、ルークがゴブリンが22体こっちに来るって言ってる」

「即殲滅ね。もうお昼前だわ」

    

「来たよ」

「みなさん戦闘の準備を……」

「【エルガーサークル】」

 

「【天界崩壊】」

「【アストラルトルネード】」

「ルーク、ドラゴンブレスよ」

      

ミリアの範囲挑発技に俺の範囲スタン技、そこでマリアの範囲精神攻撃

最後にベスの使い魔の体長50センチのドラゴンのブレス攻撃で8割がたは

殲滅だ、残りはマリアの精神攻撃で同士討ちで死亡。


 

「ほんと、ゴブリンって邪魔よね」

「魔石も5百イリスだし、遭遇するだけ時間の無駄だな」

「お姉ちゃん、次行こう」

      

「みなさん本当にFランクなんですか?」

「「「当たり前」」」



   

「あれがオークの巣ね」

「全部で38体いるって、ルークが言ってる」

「俺が突っ込むから、スタンから回復したらミリアが数体の敵意を集めて

俺に敵意を向けているオークにマリアとヒルダの範囲魔法を浴びせてくれ

シータとベスはミリアに向かってくるオークの始末だ」


「魔道士が突っ込むんですか?」

「爆裂魔道士は魔法剣士の上位クラスだ集団戦は得意だ」

 爆裂魔道士は近距離のスタン技に加えて、爆裂魔法で遠距離の魔法職に

対しても魔法詠唱を破棄させる攻撃が可能な魔道士キラーと呼ばれるクラスだ。       


「行くぞ。ミリアついてこい」

「寄ってこい、【エルガーサークル】」

 今はサポートクラスが聖騎士だ、メイン聖騎士には負けるが敵意を奪える。

  

「【天界崩壊】」

「相打ちして死になさい、【アストラルトルネード】」

「【灼熱演舞】」

    

「行くぞ3連斬り」


「【エルガーサークル】」

ミリアのスキル発動と同時にマリアの精神攻撃魔法が発動するが

暗黒魔道士の詠唱は長いので、ヒルダはまだ詠唱中だ。 


「【ヘッドビート】」

「【クイック】」

「3連突き」

   

「飛べ、【黒色爆裂波】」

 よし、オークメイジ部隊に爆裂魔法で詠唱を中断させる事ができた

こちらの世界で爆裂魔法を使うのは初めてだから効くか心配だったが

杞憂だったか。


「【ヘッドビート】」

「【スローサークル】」

 中々やるなさすがにオークの上位種だ

そこでようやく、ヒルダの広域属性攻撃魔法が着弾する

オークリーダー2体を含めて14体がまとめて昇天した。

      

「【タイタニックハンマー】」

「【螺旋旋風突き】」

 最後は俺の打属性の連打魔法とベスの半径5メートルの敵にまとめて突き

攻撃をお見舞いする『螺旋旋風突き』でこちらへ向かってきた敵は片づいた。


「あとの10体は同士討ちで死にますね」

「マリアの魔法命中率は折り紙付きだからな」

      

「1人6体ずつ素材回収ね。私が8体回収するわ」

 

「みなさん、本当にお強いんですね」

「この位、余裕で勝てなければ冒険者なんて出来ないでしょう」

  

「なんか私が役に立っていないような気がしますが」

「そんな事ないぞ。スタン技を連発するには『クイック』は有効だし 

『スローサークル』のお陰でヒルダの魔法が間に合う訳だしな。


「そうよ、より強敵になれば時魔道士は大活躍よ」

「そうだといいんですが」

  

  

「みんな素材の回収は済んだようね。では帰りましょう」

 

 やはり広域魔法が使えるメンバーがいると楽に狩りが出来るな。

 

お読み頂きありがとうございます。


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