第六十話:仲間割れ
夏の終わりにサクラ達と海水浴という話だったが、話は混迷を極め
突然現れたマキさんとサキさんが加わって
お互いの本心もわからないまま転移者8名の戦いに発展してしまった。
「守って、【ゴッドフレイム】」
「止まって、【アストラルトルネード】」
「さらばだ、【4連撃ち】、【天界崩壊】」
「【スローサークル】」
「【灼熱演舞】」
「【子龍天剣百連】」
「【デジールリリース】」
「【確率変動】」
「おいおい、サクラ達は傍観するんじゃなかったのか?
そんなにマリアが恋しいのか?」
「義理みたいなもんさ」
「そうです、一緒に過ごしていると多少は情が移るのさ
それに同じ日本の女の子とわかっちゃったからね」
3対5か、不利という程じゃないがマリアとベスもついでに調べるか
ハンスさんと雑魚はいないのでちょっと強めの攻撃をしかけてみよう。
「どうしても引く気はないんだな」
「私達には特別なスキルがあるんだよ」
「わかったよ。マリア、ベス、お前達と殺し合うとは思わなかったよ」
「仕方ないのよ」
「お姉ちゃん」
「待たせたな、出てこい魔王」
「あまりに待たせるので暴走する所だったぞ」
「俺の前にいる転移者5名を殺せ」
「魔王が、なんで」
「良い余興だ、食らってやろう。【魔力解放】」
マリアとベスとは耐えられるかな?
「【魔力全開】、【ゴッドフレイム】」
「【威力限定】、【ラグナロク】」
「【負担軽減】、【神剣演舞】」
「【無双障壁】、【ゴッドフレイム】」
「【高速転送】、【物質転移】」
魔王の攻撃でも崩れない障壁に魔王を傷付ける攻撃か
互角といったところだが、1対5だと魔王でも容易には打ち破れないか?
「【300連撃ち】、【天界崩壊】」
「「「きゃあぁ――」」」
紫の障壁の『ゴッドフレイム』は崩れたが赤い障壁だけ崩れないか?
アオイのユニークスキルか? 性格が表れているが防御特化のスキル編成か?
「3人が攻撃系で2人が防御系なのね」
「マキ、あの5人はいい編成ね」
「【エターナルチェーン】、魔王に向けて、【事象改変】」
「【魔力吸収】、【魔力拡散】、」
「マキマキさん達も敵になるんですか?」
「あなたは強すぎるわ。まるでサトルのようよ
いずれサトルのようになるなら、ここで止めないと不味い気がするの」
「そうですか、1対7ですか」
「魔王は消え去りましたよ」
「諦めなさい」
「私達は同じ技をまだ使えるわ」
「もう魔王は呼び出せないでしょう」
「アベル兄さん、もう呼び出す時間を与えません
それに魔力バッテリーがありますからまだ戦えます」
「最後にお聞きしますが
マキさんとサキさんもここで命を削っても後悔はしないんですね?」
「「あの二の舞はご免よ」」
「それでは、これで勝っても不意打ち扱いされそうなので
ここで5分間差し上げましょう。得意なクラスに変更して下さい」
どうしようかな? 俺は転移者だけどこっちの人間でもあるし
別に神の褒美に執着はないんだが。
「何ですか、その余裕は」
「ありえません」
「最後の悪あがきですね」
「アベル、降伏するという選択肢はないの?」
「そうよ」
「時間内だから答えるが降伏するとどうなるんだ?」
「それは……」
「お前の奴隷か?」
「この国からの追放で許してあげるわ」
「それはダメよ」
「この男はあまりにも強すぎるわ」
「サキさんでしたか、サトルさんとは面識があるようですね」
「もう後がない転移者ならいいでしょう。サトルは地球にいた時からの
知り合いで凶悪で凄く頭のいい犯罪者だったのよ」
「そうよ、わたしの両親は僅かな金の為にあいつに殺されたのよ」
「あなたはサトルに似ているわ」
「そうですか、ところでこちらの世界では
サトルさんとお会いしたんですか?」
「もう少し逃げるのが遅かったら殺される所だったわ」
「更に強くなっていて日本に居た時より凶悪になっていたわ」
「サトルという方ともいずれ殺し合うんですか?」
「その通りよ」
女の気持ちはわからんな。疑わしきは罰せよになるのか
お日様の光が気持ちいいな、こんな時に周りが見えるという事はまだ余裕が
あるという事だな、次は地獄に行くことになるのかも知れないが。
「時間だな。魔王の攻撃はどうだった? あと何発耐えられるかな」
「まさか、魔王を複数回召喚出来るの?」
「10日に1回だって言ってたよ」
「魔王を呼べるクラスがあるの?」
「サクラちゃん」
「術者を殺せば問題ないわ」
「行け、魔王」
「退屈させるでないわ」
「前の魔王は負けたぞ」
「面白い、【魔力収束解放】」
7人固まってくれて良かったよ、女の子たちをいたぶるなんて趣味
じゃないが7人いれば死ぬことはないだろう。
「【魔力全開】、【ゴッドフレイム】」
「【威力限定】、【ラグナロク】」
「【負担軽減】、【神剣演舞】」
「【無双障壁】、【ゴッドフレイム】」
「【高速転送】、【物質転移】」
「【エターナルチェーン】、魔王に向けて、【事象改変】」
「【魔力吸収】、【魔力拡散】、」
ベスとアオイの障壁はちょっと弱まっているし、マリアとサクラの技は
威力が落ちてる、ユキは投げつける物がないのか、厄介なのがマキとサキだが
魔王に対してはサキの技が非常に有効だな、魔力が絶える事がないのか?
「【4連撃ち】、【300連撃ち】、【天界崩壊】」
マリアとベス以外は爆裂魔道士と戦った事がないんだろうか?
さっきの戦いを見ていたら固まるなんてありえないだろう。
「「「負けない」」」
「2番目の魔王、お前も負けるのか?」
「我を見くびるな、【魔力真解放】」
俺のヘルメス神からのプレゼントはスキルは危ないという忠告を受けて
物品の中でも説明が頭にイメージされなかった3つの中の1つの『真の鏡』だ
ある程度の力があればいいと思ったが、ここまで役に立つとは。
「サキさんさすがです。しかしそんなに魔力を自分の体にため込んで
大丈夫ですか?」
俺は多分、宝珠のせいで大丈夫なんだろうが、普通の人間が魔王の魔力を
ため込んでなんともないとは、とても思えない。
「では3回目を行きますか?」
「マキ、ごめん、もう無理」
「サキ」
「サクラちゃん」
『待つがよい。アベル、一時の感情に流されるな。チャンスを与えてやれ
代わりにお前をジェネシス国王としてわれも認め力を貸そう』
「力とは?」
『すぐにわかる』
「声だけか」
俺より強力な空間魔法を使う相手のご登場か、真の会も知らない相手だ
これは一挙両得というやつかもしれないな。
「そこの7人に尋ねる、俺に復讐しないと誓えるか?」
返答無し、いや無視というやつですか。
「声の主よ。残念だが俺に復讐心を持つ者を生かしておけない
寝てる時に殺されるのはご免だ」
『いいだろう。【滅、生殺与奪】。これでこの者達は自分の手で生物を殺す事は
勿論、傷付ける事も不可能になった。さらばだアベル、そして転移者よ』
試すなら、生きてる物だと生きてるタコがいたな。
「行け、サクラを攻撃だ」
「気持ち悪い、早く取ってよ」
サクラはあんな女の子っぽい演技が出来るようなキャラじゃないし
チャンスを与えないといけないんだったな。
「まあいい、よく反省してくれ。怖いから殺してしまえなんていう発想は
ヤクザ以下だぞ」
「アベル、われの出番を奪うとは」
「申し訳ないが、俺の一存じゃ無いんだ」
「まあよい、いい事を教えておいてやろう。他の者が魔王クラスを持って
いてもお前が生きている限りわれを呼べるのはお前と同一の魔力を
持つ物に限られるぞ。次は楽しみにしておるぞ」
そうするとマリアは呼べないのか。
「ご飯は美味かったよ」
「アベルさん、今日はご機嫌ですね」
「今日は色々あってね」
「珍しいですね、色々あると機嫌が良くなるなんて」
「まあ、仕事の方も適度に頑張ってくれたまえ」
「タスク、お前の言ったとおりヘルメス神の新ユニークスキルを使ったり
貰った物が能力を発揮すると、体が金色に光るというのは本当だったな」
「嘘言っても、仕方ないじゃないか
特別だからね、こんなことを教えてあげるのは」
「俺達だけの模擬戦じゃ、色なんてわからなかったのにな」
「それは本気じゃないからだよ。金色の光は人の集中力が霊気となって
色となって見える現象だからね」
「まさか、身近な転移者全員が危険と言われるユニークスキルの方を
選んでいるとはね」
「でも使っても大丈夫そうだったね」
「わざわざ、私達と戦うように仕向けた苦労が報われたわ」
「あのスキル構成と実力なら仲間にしても充分に役に立ってくれるわね」
「しかし、力を封印されるとは?」
「今度会うことがあったら解いて貰おうよ」
「でも、彼女達は恨んでるかも知れないよ。女の恨みは根深いと言うからね」
「戦う前に手紙を渡してあるから、試験だったという事だけは
今頃伝わっていると思うよ」
「マキマキとサキの乱入は想定外だったね」
「物書きで静かに暮らすのかと思ったら、転移者の戦いから
逃げる気はまったくないようだね」
「実力はあるけど前世の恨みがあるようだから
彼女達次第って感じね」
「これで声に出して聞き出せない、新ユニークスキルを見せてもらって
ミッション達成だね」
「しかし、真の鏡ってしょぼいと思っていたけど使いようだったね」
「名前が俺に似てるからダメもとで取得しただけだけどな」
「他にもいい武器はあったけど、神剣とかは無かったし
危ないスキルを選ばせて楽しみたかったんだろうね」
「でも、そうなると残りの2つも凄そうだね」
「取っている人間がいるかも知れないな」
「技や魔法を貯めておけるのはいいんだけど、なんで2枚もあるんだろうね」
「お買い得品なんじゃないの」
「神様にバーゲン品の概念があるわけ無いじゃ無い」
「いずれわかるだろう」
建設が終わったとはいえ、やけに人が少ないな。
「ハイネ、みんなは?」
「住むところも確保出来ましたし
西の森で狩猟を兼ねてキャンプを張ってみんなで訓練中です」
建て終わったら今度は訓練か、やる気満々なのはいいんだが。
「あんまりやり過ぎるなよ」
「はい、追加で2クラス取得と熟練度を上げて集団戦を体にたたき込むだけ
ですので、指導できる者もいますし死ぬ気でやれば20日で戻ってきます」
ハーフエルフにとってはスパルタ教育が標準仕様のようだな。
「摂政が南の守りの軍を使ってアリアンに攻め込んだようですね」
「アクシスからも10万近い兵がシマンの完全制圧に向かったみたいだし
これで南はトールの街までロドスの支配下になりそうですね」
米の収穫時期は9月下旬だから、あと1ヶ月か。
お読み頂きありがとうございます。




