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第五十話:月の館


 猫族と狐族の1万人を超える部隊が加わって、結局迷路屋敷を建て増しする

案が通過して8千人を動員した事により、2週間の改築というより新規建設

で買い取った庭のほとんどを使った超巨大な12階建ての建物が完成したが

今度は狐族に提供する肉が底を尽きかけたので、大がかりな狩りの真っ最中だ。


    

「しかし、この森は獲物が豊富ですね」

「アクシスから馬で5日の山の中だからな」

「それに強い魔物もたくさんいましたし」

「まだまだ強そうなのは居ると思うぞ」


「もう本店とアスター邸の改築工事が終わった頃でしょうか?」

「そうだな、5千人を使っての工事だからな。本店の方は

2日あれば終わるだろう」

      


「オークの巣ですよ」

 

「オークキャプテンとリーダーもいるな、魔道士系は300体

程度だな、全部で6千ちょっとか」


「あ、オークキングがやっぱりいちゃいました」

   

「俺達も2千はいるんだ、ひねり潰して晩飯の足しにしよう」


「でもオークキングに指揮された集団は強いと聞いてますよ」

「オークキングは俺が殺すから他を分担してくれ」

    

「サクラ達はオークメイジの部隊を頼む

フローラはオークキングに突っ込んで注意を引いてくれ」


「私が特攻するんですか?」

「狐族の為の狩猟でお前はバルバラの副官だろう」

  

 フローラはミリアの8割程度の防御力を持ち、魔力も高く

6つの戦闘クラスを持つAランク相当の腕前だ。


「行きます、【エルガーサークル】」

     

「【4連撃ち】、【4連撃ち】、【天界崩壊】」

 

「「「アストラルトルネード」」」

 

「【神剣演舞】」

  

「行くぞ、【4連撃ち】、【4連撃ち】、【黒色爆裂波】」

 

「「「ドラゴンブレス」」」

「「【クイックサークル】」」


「「「【氷結演舞】」」」

  

  


どこに目があるかわからないから、グラン・シャリオのメンバー以外

の前では時空魔法を使えないのが難点だ。

 

「倒せましたね」

「私たちって強い」

「強いよ、オークの巣を30分で殲滅よ」

   

「アベルさん強いですね」

「オークキングを封殺でしたね」

「慣れかな」


 

「だいぶ肉も集まりましたね」

「シカを中心に動物が8万匹以上に

狐族でも食べれそうな魔物が今日のオークも含めて18万くらいですね」

「1割くらいは竜や黒熊みたいな大きい獲物だし、当分持つわね」


 これだけあれば1年近くは持つだろう。  

      

「こんなに狩って大丈夫かしら」

「この森は国1つ丸ごと入るくらい広いし、子供の動物は解放したから

問題はないわね」


「しかし、王級の魔法の鞄というのは凄いわね

牛が70頭も入るなんて」


「それは、新型の王級の方だろう。普通の王級は50頭入れば

いっぱいだぞ」


「私も王級の魔法鞄(マジックバック)が欲しいな」

「年末までに好成績を残すんだな」

「特殊級だって牛が2頭入るじゃない」

「普通の配送は特殊級で十分だよね」


「それじゃ帰りましょうか?」

           

「俺は寄り道していくからみんなは先にもどってくれ」

「わかりました」

    


「【速力倍速】」





 ほんとに、これなら帝国まで3日もあれば行けるな

体力が落ちた状態で帝国領に入るのはまずいか?


「なんだ、まだ改築工事中なのか」

「アベル、もうお帰りですか」

「レナは鳥の世話か?」

「改築工事でうるさいから怯えちゃって、困ってます」

「みんなは?」

「一時的に天空亭に避難しました」

「それじゃ、一緒に帰ろうか」

「はい」


          

 懐かしいな、もう半年か。


「おかえり、レナちゃん」

「ただいま」

   


「いまの人は?」

「天空亭の女将さんですけど」

  

今のがエリーゼさんの姉にあたる人か。


 

「ただいま」

「アベル、よく私たちがここにいるってわかったわね」

「厩舎でレナに会ったからね」

「そうだっだの。それで狩りの方は?」

「俺達だけで食べるなら10ヶ月は持つ程度だな」


「そうなると夏にまた大規模な狩りに行かないと行けないわね」

「アベル兄さん、魔法鞄(マジックバック)の反応はどうです?」

「好評だな。誰も特殊級だと気がつくヤツはいなかったぞ」


「お姉ちゃんが間違って氷竜の皮を使ったやつだもんね」

「使い勝手がいいなら問題ないけど。容量増加以外の効果がランダムで

付与されるのが欠点なのよね」


「特殊級で重さ軽減のない鞄の使い道は、ほとんどないしな」

「それに私達だけで全部を検査するのは大変よ」

「しかし、念波がある以上、もう魔法鞄(マジックバック)の事はニーナ達にも言えないしな」

        

「わたしが頑張るよ」

 

「ところでヒルダ達は?」

「部屋はあったんだけど、今回は別々の部屋にしたのよ」

「俺も別の部屋の方がいいんじゃないのか?」

「アベルは同じ部屋で問題ないのよ」


 時々わけのわからん事を言うな。


           


「天空亭の料理の味は本当にニーナの作る料理といい勝負ね」

「値段の安さを考えると、ここの料理人の方が上かも知れませんね」

「あと10日は天空亭で過ごすから美味しいのはいいことね」

「アスター邸の改築はそんなにかかるのか?」

「改築を始めたら元に戻せなくなったとか言ってたわよ」

「お姉ちゃん、もう時間だよ」

「商会まで距離があるのが難点ね」


「会長、9時にラダン商会の買い取りの商談が入っております」

「直接向かいましょう」

「ハンス、アミ、契約用の書類が商会に置いてあるのよ」

          

「わたしが持っております」

「そうなの。それじゃこのまま向かいましょう」

   

 火事1回で傾くとは、経営も危なかったんだな

ハンスさん達と会うのは久しぶりだったな。


 ◇



 

「もう無理っす」

「天狗族は魔法の細かい調整に秀でているんじゃなかったのか?」

「ドウマル、弱くなってるよ」

「姉御、もう1週間ですよ」

「今日中には工事完了と告知してあるし、明日は東地区支店の開店祝いで

温泉の無料入浴日にしたんだ。弱音はいってられないよ」


       

 温泉も大工班を動員して10日の拡張工事で大部分は目処がついたが

営業しながらの拡張工事は大変だったらしい、そして最大の問題点の

崩れやすそうな岩場にある源泉の調整は天狗族の仕事だ。


 

「ドウマル、慎重にやれよ。失敗したら温泉は閉店だぞ」

「兄貴もな」

    


 

「よし銅板を通し終わりました。これで湯の出が良くなるはずです」

「これで拡張部分にもお湯が流せるね」

     

「ハマーン、経営はどうだ?」

「利益と言えるほどの儲けはないね」

「黒字なら、それで問題ないさ」

「いいのかい?」

「売り上げだけ考えたら、牧場は赤字続きだぞ」

「ミルクと卵を牧場で販売してるって聞いてるよ」

「そんなのは家畜の餌代だけで消えてしまうな、何故金持ちしか

牧場経営に乗り出さないのかよくわかったよ」

        

「今日は給料日ですね」

「ドウマル、嬉しそうだな」

「給料日がうれしくないヤツは頭がおかしいとしか思えませんね」


「ドウマルは月に金貨4枚だったな」

「今日は3ヶ月ぶりの昇給会議でしょう」

 

「期待するのは結構だが、ハマーンが工事を優先して会議に

出れなかったのが影響するかも知れないぞ」

      

「そんな」

「一応、評価Bで書類を出しておいてやったから昇給するはずだよ」

「評価Bですか」

   

「アベルは出ないのかい」

「ハンス以外は女性ばかりだからな。遠慮しておいたよ」


 俺の給料は据え置きだろうな

『幸福貯蓄』の換金スキルでかなり稼いでいるから問題ないが。


 

  

 しかし、外から見てもでかくなったな。

 

「会議はどうだった?」

「新規メンバーの給料でかなり揉めたけど、なんとかまとめたわ」

「ほとんど建設工事と狩猟しかしてないからな」

「うちは大工屋じゃありませんからね」


「新アスター邸は工期を延長して月末まで引っ張っただけあって

12階建ての巨大な屋敷になったじゃないか」


「迷路屋敷の改築中から使用人用の建物の改築は始めてましたからね」

「でも5階より上は私達でも何があるのか不明よ」


新アスター邸は本館と別館が12階建て、使用人用の建物を残月と

名称を変更、それぞれ以前の3倍程度に増築、そして部屋数不明という

巨大な屋敷に改築されている。

   

  

「迷路屋敷よりはかなり良い出来だろう」

「迷路屋敷じゃなくてアスター邸と区別する為にも

月の館に名前を変更するそうですよ」

 

「月の館ね」

        

「月の狼亭も改築の影響で1つの建物になったので、長さだけで屋敷3件分

幅が100メートル位でしょうか」


「もうアクシスの役場より広いな」

「城に比べれば、かなり小さいですけどね」

「城がでかすぎるんだよ。新アスター邸が300個は入るだろう」

          

「一度、商談で行った事があるけど、大広間だけで1万人は入れるみたいよ」

「外から見ても凄いが、中は見た目より広いんだな」

「大工やそれぞれの専門家をを2万人動員して3年の歳月をかけて

建築しただけはあるわね」


「専門家を動員して期間が3年もあれば、あれだけの建物が出来ても納得です」

 

「毎年8月に1度だけ一般公開すると言ってたわよ」

「次の昇給会議の前ですか」

      

「昇給と言えば、俺の給料は?」

「黒金貨2枚よ」

「副官より低いのか」

   

「お金はあるんだけど、1万人以上いると調整が大変なのよ」

「諦めるか」

  

「それと港支店の開業が決まったわ。建築は2日後からね」

「また支店を増やすのか?」

「今は魚を市場で買ってるでしょう」

「普通はそうだろう」

「ラダン商会の買収で安く漁船が手に入ったから、アスター商会で

専用の船着き場を設けて漁船を出して漁をする予定よ。その為の店舗ね」


     

「アベル兄さん、次はロイター商会と商戦ですよ」

「そうなのか?」

「ロイター商会はメイト商会を僅か星金貨千枚で買収したそうです

狙いはうちでしょう。メイト商会はうちも星金貨8千枚で交渉していた

大商会です。どんな強引な手段を使ったのかは不明ですが」


「だから明日から当分の間は、アベルとミリアは

東地区支店の警備に当たって頂戴」

    

「わかりました」   




 

 新築した本店に比べれば規模は小さいが東地区支店も立派な店だな。


「同志アベル」

「そうか、ミリアも俺と同じ給料だったな」

「ついにランちゃんに給料で負けてしまいました」

「ノンとランも給料が黒金貨3枚に上がったと言ってたな」

  

「緊急事態ですよ」

「別に大変な事じゃないだろう。仮にミリアが星金貨百枚になったとしても

何か買いたい物があるのか?」


「買いたい物ですか? ……浮かびませんね」

「そうだろう、娯楽が少ないからな」

「劇なら、見たいです」

「小金貨で足りるぞ」

「綺麗な服を」

「着ていく場所はあるのか?」

       

「そういえば、……ミリアは友達が少ないです」

「貯めておくんだな。何かしたくなったらその時に使えばいいさ」

「わかりました」


 

「喧嘩か?」

  

「あの人達は、ロイター商会で見たことがあります」

「面倒だな」


   


お読み頂きありがとうございます。


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