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第四十八話:食欲旺盛な先発隊


 政変が起こったことなど夢だったような状態でアクシスの人口は

増え続け3月も終わろうとしていた今になってマリアが西地区と東地区

にも支店を出す事を宣言した。俺達は忙しさで目が回りそうだ。



「マリア、このままでは過労で倒れる者が出ますよ」

「牧場も牛や鳥が随分増えているようだし」

  

「そろそろ来ると思うの」


「それじゃ、ノン、あとはお願いね」

「お母さん、わかりました」

      

ノーラさんは南地区担当になってから大変そうだな。


 

午後の配送までに特級のHP回復薬(ヒールポーション)が91個に王級が18個に

伝説級が4個か、配送時間の指定が無ければのんびり作れるんだけどな。 



「終わった」


 まさか臨時で伝説級のMP回復薬(マナポーション)の注文が50個も入るとはな

どこの金持ちだろうな。 


「アベル、食事に行こう」

「これで終わりだ。……よし終わった」

  

「今日のお昼は何かな?」

 

昼飯も随分と定着してきたな。


 

「随分、人がいますね」

「もしかしてデモか?」


「「「こんにちは」」」

   

 応対してるのはランちゃんか

マリアはハンスさんとアミさんに何をさせてんだか。

  


「ラン、どうしたんだ?」

「こちらの方達がマリア会長に会いたいと言ってるんですが」

「悪いが会長は外出中だが、みなさんは?」


     

「長老のご指示で店を辞めて、今日からこちらで働かせてもらいにきました」

「私たちもおばば様の指示で店を辞めてやってきました

おばば様から頂いた紹介状もちゃんとあります」


「あたい達も長老からもらった紹介状を持ってます」

  

  

「どこの店から?」

「あたいはロイター商会で働いていました。食費で給料の9割が飛ぶんで

月に銀貨4枚でした」


「わたしはラダン商会で働いていましたが

肉の代金で8割近く天引きされるんで月に銀貨9枚でしたね」

    

今月の初めに大規模な火事を起こした商会だな

食費を別にしても月の給料が金貨1枚に届かないのか? 

 

 

「みなさん、いらしたんですね」

「ベス、この人達がマリアが言ってた人達なのか?」

「そうですよ。追加の方もいるはずですが」

   

「あたいらは先発隊なんで、3月一杯で店を辞める人間を含めて

明後日には本隊がくる予定ですよ」


 こいつら先発隊とか軍隊か。


「みなさんは全部で何名ですか?」

「猫族は182名ですよ」

「狐族は171名です」


     

「紹介状に嘘はないようですね。とりあえず通りに戻って右奥に見える

建物に荷物を置いて休憩していて下さい」

 

「あの巨大なお屋敷ですか?」

「猫族と狐族のみなさんが建てたんですよ」

  

 マリアめ、ライバルの商会から実務経験のある人間をヘッドハンティング

するとは、それにしても本隊と言うからにはこの3倍くらいいるのか?


「アスター商会は食費が無料と聞いたんですが?」

「そうですよ。屋敷に料理が用意してありますので好きなだけどうぞ」


「「「好きなだけ!」」」

「肉もあるんですか?」

「新鮮な肉が揃ってますよ」


      

「みんな行くにゃ――」

「「「オ――」」」

  

「やな予感がするな。ノン、米をありったけ脱穀しておいてくれ」

「わかったよ」

    

 南の国でも米が取れるのは5月だからな、南半球の通貨が手に入れば

先物取引で冬に米や麦が異空間経由で取引出来ると思うんだが。


  


「マリア、他の商会から人を引き抜くと恨みを買うぞ」

「給料だけを見てみてもうちは他の商会で働いている獣人達にとっては

軽く10倍を超えるわ」


「獣人はそんなに安く働かされているのか?」

「獣人には住み込みで働かせてもらっているだけで十分という古い考え方が

根付いてしまっているのよ」


「そうですね、月に黒金貨を頂ける商会というのは

要職を任された人間のみですね」

        

「要職といえば、うちは支店長を誰にするんだ

いつまでも代理のままじゃまずいだろう」


「そうね。北地区へ進出した際はハンスを支店長にする予定だから

ノーラが南地区でバルバラが西地区で問題は東地区ね」

    

「アミでいいんじゃないのか?」

「ハンスとアミには交渉を任せているのよ。当分の間は無理ね

候補としてはルイーゼかハマーンあたりね」


  

「お母さん忙しくて、ほとんどお話できないから寂しいです」

   

「それならビアンカに南地区を任せてもいいわよ」

「それでお願いできますか」

「ノーラがそれでいいなら、そうするわ」

   

「ハイネは牧場担当でいいのか?」

「人の少ない場所の方が気が楽だと言ってたわ」

  

「ビアンカが抜けると狩猟班のリーダーがいなくなるぞ」

 


「狩猟班か、能力的にはルイーゼなんだけど性格的には

ハマーン向きなのよね」


「ルイーゼを東地区の支店長にしてハマーンがリーダーで

いいんじゃないか?」


「それだと回転間近の温泉の責任者がいなくなるのよね」

「人が減ってると思ったら、そんなもん作ってたのか?」


「かなり大規模よ。一度に4百人は入浴出来るわ」

「それは凄いな」

        

普通の銭湯の10倍以上か。


「マリア、営業時間は夜ですか?」

「ヒルダ、夜に営業したら光の魔道具だけで赤字になるわ

冬が6時から夕方の6時まで、夏が5時から夜の7時までね」


「マリアさん、アクシスには何件くらい温泉があるんですか?」

「有力者専用を除くと温泉は3件程度ね

市民用としてはうちのが最大規模になるわね」


「有力者の専用の温泉があるのか?」

「元は貴族用だったのを買い取ったみたいね

設備やサービスも豊富だけど入浴料が小金貨8枚よ」


「毎日入ると月に24万メルですか」

「給料が飛ぶな」

「宿泊費より高いんですね」

         

「それだけ贅沢という事ね」

    

「うちは半額くらいで始めるのか?」

「他の温泉が小金貨1枚程度だから

うちは予定では銀貨5枚で始めるつもりよ」

 

「採算がとれないんじゃないのか?」

「今は冬だからまだいいけど店員の入浴は時間との競争なのよ

これも福利施設の一環ね」

         

 俺はいつも1人だから風呂事情は知らなかったな。


「うちの幹部で一番のお風呂好きは誰かしら?」

  

「そーね、ハマーンかしら」

「結局、狩猟班のリーダーの座が空くのか」

  

「いっそ、サクラかアオイにリーダーをやって貰いましょうか」

「長くやって頂けるのでしょうか?」

「それも問題なんだよな。あいつらいつまで勤めるつもりなんだ?」

「行く当てもないし、当分の間はいるんじゃありませんか」

    

「いない人間の話をしても仕方ないわ

明日の月末の定例会議で話しましょう」


  



 昨日は色々話し合ったが、猫族と狐族の本隊の話が出なかったな。

 

「リキマル達は昼は食べないで2回目の休憩で食べるんだな」

「猫族みたいに食欲旺盛という訳じゃないですからね

それに休憩を2回もらえるなんて今まで無かったですからね」

  

「商会で働いていた事があったのか?」

「稼げるようになる前は何でもしないと生きていけませんでしたからね

農家や商会の手伝いとかは頻繁にやりましたよ」


 楽天的な割には苦労してるんだな

それだけ獣人が差別されてるのか?


  


「今日はお給料ね」

「やっと仕送りできるわ」

「毎日、お腹いっぱい食べれて仕送りまで出来るとは思わなかったわ」

「お肉も新鮮ですね」


 自分の身の回りの物より仕送りを優先するのか?


「それでは月末の定例会議を始めます

進行は副会長のシータが務めます」

            

「まず、報告ですが1週間後に温泉施設の開業、10日後には西地区支店

の営業開始です。東地区支店の建設は半分程度が完成しており5月には

人員さえ確保できれば営業を開始できます」


「牧場の人員が少々足りませんが?」

「明日、猫族と狐族の本隊がくる予定なので、それ次第で人員を回します」

   

「お給料は?」

「まず会長が決めた人事案だけ発表します

牧場経営は今まで代理でしたが正式にハイネが経営者に

そして南地区の支店長にビアンカ、西地区をバルバラに決定します」



「ビアンカは狩猟班のリーダーですよ」

「ノーラが抜けるのでビアンカ以外にすると猫族の方からの支店長

がいなくなりますよ、いいんですか?」

  

「「ビアンカでいいです」」

   

「東地区の支店長と温泉の経営者と狩猟班のリーダーを残りのメンバーで

補わなければなりません。だれか立候補したい人はいる?」


         

「あたいでよければ温泉の経営をやりたいわ」

「それじゃ温泉はハマーンで決定ね」

  

「僭越ながら東地区の支店長がやりたいです」

「それじゃルイーゼが東地区の支店長で狩猟班は誰かいない?」

  

「アミさんでは?」

「ハンスとアミは外商担当なのよ」

  


「残りはグラン・シャリオのメンバーの方と……」


「え、あたいらかい」

「サクラ、冒険者をやるにも武器さえ買う金がないんだろう」

「そうなんだけどね」

「私が貸してあげたいんだけど立場的に、……無理ね」

     

「このまま行くと借金を返すだけでも来年になりますよ」

「商会立ち上げメンバーは1か月働けば奴隷から解放だろう」

 

「サクラさん達は2人で星金貨5枚ですから……

お友達で失踪したユキさんの分も入れると7枚以上ですよ」


「……そんな、サクラちゃんどうしよう」


 さくら達は友好的な転移者として留まってもらいたいから

これで当分の間は様子を見れるな。

   

   

「わかったよ。やらせて頂きます」

 

「狩猟班のリーダー役は週に4回でいいわ

特別に武器と装備品を貸してあげるから、仕事の合間に

冒険者で稼ぐと良いわ」


「さくらちゃん、私たち休みなしだよ」

     

「各チームのリーダーは昇給で月に黒金貨5枚で副官を2名

決めてもらいます。その人は黒金貨3枚です」

     

「どうしよう?」

「副官の選考基準はありますか?」

 

「皆さんは各チームの責任者ですが皆さんが休暇の時は副官の方に

指揮をとってもらいますが副官の失敗は責任者の評価に影響します」   


「わかりました、責任を持って決めます」

「他の方は?」

  

「「わかりました」」

 


「それでは特別に責任者の方には王級の魔法鞄(マジックバック)を関与します

そして年末まで勤めてくれた方には、そのまま差し上げます」

  

「星金貨千枚の商品を頂けるんですか?」

 

「はい、鷹族の方達は特殊級の魔法鞄(マジックバック)を配ってすぐに

店の金と商品と鞄を持ち逃げして、翌日に討伐されましたので

そのような事がない事を願います」

   

 猫族と狐族は問題ないが、他の種族は怪しいが8ヶ月も働けば

一生遊んで暮らせると考えれば大丈夫かな?


「そして、いいお知らせです。年末まで真面目に勤めてくれた方には

特別支給金としてリーダー格の方には星金貨3枚

その他の方は一律で黒金貨5枚を贈呈します」


 

「俺からは責任者の中で売り上げではなく、一番アスター商会の為に

貢献した上位2人に伝説級の魔法鞄(マジックバック)を進呈して、副官の中からは

上位5名に王級の魔法鞄(マジックバック)を進呈しよう」

       


「で、でんせつ級ですか……」

「オークションで星金貨7千5百枚以上した物だが人の和を

優先してくれた人に贈りたいと思う」


 これでアスター商会の店員にはもう作り方は言えないな。


「以上、質問はありますか?」

       

「無いようですので、会議は終了です

明日は猫族と狐族の方が来るので当番の方以外は部屋の片付けと清掃を

行って気持ちよく歓迎してあげましょう。では解散です」

  

   

 明日から4月か転移して1年3か月だな。

 

お読み頂きありがとうございます。


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