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第三話:ここは危険!街を出よう


 3人で異世界に来てから6日、八角牛を狩りに行ったが

2日目が9匹、3日目が6匹と好調だったが4日目以降は見つける事

さえ出来ず、今は今後について話し合いの最中だ。


「街を出ましょう」

   

マリアの決意に満ちた発言に誰も文句を言えない。


「あの噂を信じるのか?」

「そうよ。東から既に軍隊がこちらへ向かっているというのは

たぶん真実だと思うわ」


「そうだな。神社では戦闘クラスへのクラス替えが盛んに行われているし

物価がこの1週間だけでも3割近く上がっているからな」


「でも宿代は上げるとは言ってこないよ」

「戦闘に関わる物だけ上がるのよ」


 9才で入院生活に入ったベスには物価の上昇が戦争の前触れと言っても

わからないだろう。


         

「たぶん攻めてくるのは東京があった場所の国だとすると

横浜まで10倍にして250キロ程度か?」


「道が整備されていないから、300キロはあるわね

歩兵部隊で9日といった感じじゃないかしら」

    

「つまり先発の騎馬部隊がいれば、もう着いていても

可笑しくないわけか」


「それに転移者は多分、東京に集まると思うの?」

「何故そう思うんだ?」

「アベル兄さんは東京暮らしだったからわからないんだよ」


「そうね。東京という響きは地方に住んでいる人間にはとても

インパクトがあるのよ」


「それで転移者も東京に集まると?」

「東京か大阪ね。神様の口ぶりだと殺し合いをさせたいご様子だから

人を探すなら大都市の方が良いと考えると思うの」


 殺し合いか、確かに553人から8人に人を減らすには殺し合うのが

一番の近道だろうな。


「俺たちはどこへ行くんだ?」

「西の養老山の麓にミーティア王国という大国があるそうよ」


「西っていうと名古屋か?」

                

「大きな湖の東側だというから、静岡県だと思うわ」  


「神の余興で国土10倍ということは東西1500キロ以上あるのか

確かに大国だ」

 

「それに暖かいし、雪がほとんど降らないから住みやすいと思うの」

「わたし、鰻食べたい!」

「そうだな、気候がいいから特産品もおすすめかもな」


「そうね、桜エビとか」

「俺が王様になったらエビに5百パーセントの関税をかけるけどな」

「アベル兄さんは、本当にエビがダメなのね」


 病院食の最大のメリットはエビが出なかった事だと信じている。


「どうする明後日辺りに出発するか?」

「ごめんなさい。もう1馬引きの馬車の予約が済ませちゃってあるの」

「なんだ。決定事項だったのか」


「お姉ちゃん、いつ出発するの?」

  

    

 馬車だと、あまり道が整備されていない上に冬だから時速4キロ程度だと

すると、1日に良くて50キロ程度か?


「1馬引き!?」

「訳ありの馬車なのよ。ミーティアで借りた馬車でこの街に行商に来た

らしいけど、行商人の方が怪我をして困っていたの」


「つまり馬車を返してくる見返りで、タダで借りれるという事か」

「それがね、いい馬らしくて、報酬に金貨4枚くれるそうよ」


「お姉ちゃん、()()!」

「先方が言い出した条件なのよ。それに保証金として金貨10枚

払ってあるんだから」

   

 実は死ぬ寸前の駄馬で、100万アルトせしめる為の罠じゃないだろうな?


「お姉ちゃん、お馬さんはどこ?」

「宿の厩舎よ」

「それなら、すぐに出発するか?」


「そうね、全財産が575万アルトだから、節約しないといけないわね」

「どうせ準備も出来てるんだろう?」

「勿論」


 ◇



 雲がゆっくり流れているな、ちょっと肌寒いがいい眺めだ。


「マリアは馬術まで出来るとは、さすがお嬢様だな」

「馬は乗ったことがあるけど、馬車はさすがに初めてよ」

「前に向かって走れば十分さ」


 俺たちは朝の内に街を出て、西に向かってのんびり馬車の旅だ

マリアの言った事は本当で鑑定で見てみると名馬と表示されたし

馬車の方も、折りたたみ式の幌が付いていて乗り心地も悪くない。


    

「お姉ちゃん、何日くらいで着くの?」

「街の名前はアルマ。大河の東で海に面した場所だと言ってたから

静岡市か焼津市辺りだとすると、180キロ位かな?」


「10倍で1800キロだとして、1ヶ月ちょっとか?」

「そんなにかかるの?」

  

 駅馬車にしなくて正解だったかも知れないな、宿泊費が大変そうだ

3人なら気を遣う必要もないし、気楽だな。


「この森を抜けたら野営にしましょう」

「お姉様、お聞きしますが今夜の献立は?」


「勿論、栄養たっぷりの野菜とお肉よ」

「まだ萎れた野菜と肉があるのか?」

「あと100キロ位だから、すぐ食べ終わるわ」

 

 俺たちは稼げなくなった4日目から萎れた野菜と肉を食べている

魚は少なかったので破棄してくれたので多少マシなのだが

さすがに煮ると時間がかかるし、火を通さないと危ないので毎日肉野菜炒めだ

少々飽きてきた所だ。



「ルーク、今日も頑張って食べてね」

 ルークとは神竜騎士の使い魔のドラゴンの名前で体長50センチ程の大きさの

ベスのお気に入りだ。


「本当に盾になるクラスを選ばなくて良かったのか?」

「大丈夫よ。まずは得意なクラスのレベルを上げておいた方がいいと思ったの」

  

 ベスが神竜騎士でマリアが夢魔道士、そして俺が爆裂魔道士の編成だ

爆裂魔道士はスタン技が数多く使えるので、相手が多くなければ

盾としても機能するのだが、基本は攻撃役(アタッカー)だ。

 

 サポートクラスがベスが革命家でマリアが召喚士で俺が剣聖の攻撃重視の

編成になった。

 

革命家は数分間隔で大技を発動する事が可能なスキルを持っているので

前衛職のサポートクラスとしては優秀だ。

  

 マリアの召喚士は俺たちが3人しかいない為に多数に囲まれた場合に

召喚獣で戦ってもらう為だ

一時的に人数差を軽減する為の選択で、俺の剣聖は剣速を最速にして

スタン効果のあるスキルに加えて、一定確率でスタンが発生する剣を撃ち込み

追加スタンを狙う為の選択だ。

   

    

「今日は昼間に採取したキノコもあるから美味しいわよ」

「ピーマンと人参が沢山入ってるよ……」

「俺が食べてやるよ」

「ありがと!」


「アベル、あまりベスを甘やかしちゃダメよ」

「エビが出たときは食べてあげるからね」

「頼むよ」


 そもそもエビエキスが入っている段階で食べないと思うが

俺のエビセンサーは超一流だ。


 


 街を出てから1週間が過ぎたが、街道周辺が整備されているせいなのか

魔物はほとんど出てこない、退屈だが馬車を操作出来るのはマリアだけなので

昼寝する事もできずに昔話をしながら西へ向かっている。


「マリアは乗馬はどの位やっていたんだ?」

「1年ちょっとね」

「さすがだな。その他の習い事は?」

「ピアノと社交ダンスに日本舞踊だけよ」


 小学生に勉強以外に4つも習い事をさせるとは、スパルタな親だな

俺は趣味で将棋をやった位で習い事は剣道が習い事に入るのかも知れないな。


「ベスは?」

「バイオリンと歌かな?」

「凄いじゃないか」

「へへ、そうでもあるかな」


 何か前方に見えるな、この体は本当にスペックが高いな。

「あれは何かな?」

「盗賊だと思うわ」

「お姉ちゃん、助けに行かないと」


「その必要はないわ。戦っているのは双方共に盗賊よ」


 夢魔道士は強い感情を読み取る事が出来るので

善悪の区別程度なら一発だ

テンプレのお姫様イベントではなかったようだ。



「一旦、道を外れて迂回するか?」

「いい考えがあるわ、いい馬がいるし私たちが頂きましょう」

「お姉ちゃん、()()

「転移者の可能性はないのか?」

                  

「私たちはCBOのゲームのキャラメイクで作った姿だから、欧米風の

見た目だけど、転移者は見た目も名前も日本人よ、すぐに判別がつくわ」


 よく観察しているな、俺なんてスキルの事しか覚えてないぞ。



「ベス、顔をスカーフで隠して戦うぞ」

「どうして」

「正義の味方は正体を明かさない物なのさ」

「了解であります」



 盗賊は全部で14人か、6人のグループと8人のグループだな。


「私達は正義の味方スターライト。おとなしく引かないなら

痛い目に遭いますよ」


 ベスは乗ってるな、俺はとても恥ずかしくて言えないな。


「なんだこのチビは?」

「面白い可愛がってやるよ」


「いいでしょう。亜高速神剣」

 そんなスキルはないですので、勘違いされないように。

 

ベスの棍棒での3連突きで盗賊2人が一瞬で戦線離脱

俺も襲いかかってきた大男を右に躱して峰打ちで腹に一撃を入れる。


「たいした事はありませんね」


 ベスは更に盗賊を挑発する

そこでマリアの魔法スキル『デジールリリース』が発動する

これは理性を吹き飛ばし、悪人はより凶悪に善人は聖職者のように変える

心をコントロールする魔法だ。


「ガナン、この前はよくもやってくれたな、死ね」

「お前もだ」


 盗賊なんてやってるとフラストレーションが溜まるだろう

これは後は同士討ちを見物して終わりかな?


「私たちの出番はもう終わり?」

「そうみたいだな」


            

 15分で終わったか、意外に早かったな

元々揉めていたんだ、魔法の効き目も大きい

3人死んでしまったか、自分達が直接手を下していないのが救いだな。


「アベル、右の端で倒れている大男がお金を持っているようです」

 これはスキルなんかじゃない、マリアの観察力から来る物だ。


 す、凄いじゃないか、盗賊の分際で金貨188枚も持っているなんて

「模様が違うな、それになんだこの3枚は? 見たことのない硬貨だぞ」

                

「金貨の上の通貨でしょうか?」


「【幸福貯蓄】」

 貯金したら3000万イリスと表示された、イリスって単位か?

こういう時は換金先生に働いてもらおう


『(イリス)本日の為替レート:対アルト:0.95』

 ほぼ同レートの通貨か?


「マリアどうやらこいつらが持っていたのは違う通貨のようだ」

「すでにミーティア王国の勢力圏という事でしょうか?」


 地球と同じく国ごとに通貨が違うのか?

馬が6頭に馬車が1台と全部で4880万イリスか

随分裕福な盗賊だったな。

    

「マリア、次の街で通貨の情報を仕入れていこう」

「わかったわ」

「盗賊さん、お金を沢山ありがとうございました」


 

 ベス、神社じゃないから祈らなくていいんだぞ。

俺も祈っておくか

また裕福な盗賊に出会えますようにお願いします。


  


 それから4日で小さめの街へついた、城壁も無くほとんど村に近いが

3千人程度は住んでいそうだ。


「キャァー」

 どうした?


「お前ら、何やってるんだ?」

「なんだあんちゃん、この獣人の知り合いか?」


 獣人さん居たんだな、見かけないからいないと思っていたのに

それも美女? 違うな、美少女と美幼女?


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