表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/65

第二話:初めての依頼


 3人で異世界に飛ばされた翌日、俺たちは朝に市場で少し買い物を

して、こちらの世界の相場と文化レベルを検証して

今は市場で評判の食堂で絶賛食事中だ。


「おばさま、ステーキのお替わりをお願いします」

「私は照り焼きをお願いします」

「俺は生牡蠣のお替わりをお願いします」


「あんた達、よく食べるわね」

「「「育ち盛りですから」」」


 俺と真理は15才で絵理ちゃんが12才だ

3人とも小学校にしか行った事がないが、院内教室で毎日2時間程度

だが勉強もしたし、こちらの世界なら問題ないだろう。



「お姉ちゃん、もう食べれない」

「私も、こんなに食べたのは4年ぶり位ね」

「俺も入院してからは、こういう濃い味付けの料理はなかったな」


 特別に美味いという程ではないが、長い闘病生活のせいで満足のいく食事

が取れなかったせいか、食べるのが楽しい。

  


「女将さん、お勘定は?」

「全部で1万2千アルトだけど、初めてのお客さんだし小金貨1枚で良いわよ」

「ありがとう」


宿代の5千アルトを5千円と考えて比較すると

これだけ食べて1万2千アルトということは食費は日本の半分以下か       しかし衣類は高かったから早く仕事を始めないといけないな。


「エリザベス、神社に行くわよ」

「マリア、エリザベスは長くないか?」

「そうね。それじゃベスにしましょう」

「ええ――、エリザベスの方がかっこいいのに」

「ゲームじゃないのよ。戦闘中は名前は短い方が良いのよ」


「そうだな、異世界に転移したんだ。心機一転だ」

「アベル、私達は元の肉体じゃないから、転移じゃなくて

異世界転生になるんじゃないかしら」

    

「それもそうだな。異世界転生か?」

 

 ◇



 お祭りか凄い人の数だな、看板があるな

左の列がクラスチェンジの列で右の列はスキル取得の列とあるな。


「俺たちも並ばないといけないのかな?」

「私たちは『女神のお守り』があるから境内の中に入れれば大丈夫だと思うわ」

「お姉ちゃん、何にクラスチェンジするの?」

「これから身分証を獲得する為に登録に行くから、弱いクラスがいいわね

ベスが槍使い、私が回復術師でアベルが呪い師といった所かしら」


「お姉ちゃん、それだとみんな中位クラスだよ」

「この年で神竜騎士と聖魔道士と暗黒魔道士だと注目を集めるでしょう」


「行くぞ、【シェルシェ・クラスチェンジ】」


「ス、ステータスが8割減少しちゃったよ」

「上位クラスになる為に適当に上げたんでしょう。中位クラスでも

積み重ねが大事だって、何度も言ったはずよ」

     

 CBOの下位、中位クラスは熟練度が規定の半分に到達して

レベルが上限になれば、その上のクラスにクラスチェンジ出来る        だから、ほとんどのプレイヤーは一気に駆け上がる。


 ◇



「ここが冒険者ギルドか? 洒落た感じの建物だな」

「そうね、CBOには生産者ギルドしかなかったものね」


 建物は4階建てのレンガ造りで、1フロアーに10人程度の職員がいる

みんな書類の束と格闘している様子だ、どうやら紙は高価ではないらしい。


「すいません、冒険者の登録をお願いしたいのですが?」

「3名様ですね、他のギルドに登録していますか?」

「いえ、していません」

「ではこちらの用紙に必要事項をご記入下さい、登録料は小金貨2枚です」


 優しそうなお姉さんに声をかけたが、手数料が2万アルトとは

少々お高い値段設定だ。



「お姉ちゃん、本当の事を書くの?」

「スキル欄は今のクラスで使える弱い物を4つほど書けばいいわ」


 俺は炎魔法に風魔法の2つでいいか。


 

「記入が終わりました」

「問題ないようね。ここでランクアップチャンスよ!」

「どういう事ですか?」


「本日中にギルドの指定するクエストを達成すると、本来ならHランクから

スタートするのをFランクから始められるのよ」


 なんかカードの勧誘のような文句だな。


「それで、どんなクエストですか?」

「八角牛を1頭捕獲してきて欲しいの」


「それって角が8本あって、すぐに逃げ出す魔物ですよね」

「そうなのよ、だから危険はないわ。東の林の周りにかなりいるはずよ」

「どうする?」

「壁の依頼票を見たけど、どこにもHランクの仕事なんて載ってないし

やるしかないんじゃないかしら」


「わかりました、行ってきます」

「ありがとう。行く前にこの水晶に手をのせていってね」


 これはステータスチェックをする為の水晶かな?


       

 街を出て東に向かう、街から3キロも離れると既に平原が広がっていて

遠くに街が見えるだけだ、冬だから畑にも何も実ってないし本当に牛がいるのか

心配になってくる。


「お姉ちゃん、私たちが来たときに見た牛だよね」

「そうね。急いでいたから早足で駆け抜けたけど、八角牛が必要になるとはね」

「たしか調理スキルで『八角ステーキ』にすると力にプラス補正がかかって

角は錬金術で中級のHP回復薬(ヒールポーション)の材料になるんだよな」          

  

「そうなのよ。八角牛が街の近辺にいる事自体が不思議なのよ」

「何か訳ありといった感じだな」


 前方に見えるあの林がギルド嬢の言っていた林だな

    

「いたわ」

「捕獲というのが辛い所だな」

「そうね、この距離なら一撃で倒せるんだけど」

「ベス、俺が風魔法で吹き飛ばすから、上手く捕まえてくれ」

「了解」


「【ウインドブロー】」

「ベス、走って」


 ベスはまるでオートバイのような加速で八角牛に近づき

頭を棍棒で殴り一撃で気絶させた。


「凄まじいな神様からもらったスキルの威力は」

「そうね、チートスキルを選んだ人とは戦いたくないと

はっきり自覚したわ」

                

「お姉ちゃん、やっぱり凄いスキルを取るべきだったんじゃないの?」

「でも説明文に使い方によっては死亡すると書いてあったわよ」


 そうなんだ、死亡すると書いてあったが条件が書いてなかった

失敗とはどのような場合にそう判定されるのかがわからない。


「とりあえずあと2頭捕まえてしまいましょう」

          


「【フラッシュ】」

「【ウインドブロー】」

「あとはお任せ」


 

「コンプリート!」

「ベスはその言葉が気に入ったみたいね」

「凄い速さだな。俺が暗殺者のクラスになって

やっと追いつける位だな」

「その時は、わたしも暗殺者になるわ」

「ベスは気配の管理がちゃんと出来ないじゃないか」

「勇者になった私はひと味違うのよ」

「それは良かったよ」


 ベスは本当に速い、敵がこれと同等もしくはそれ以上のスキルを

持っていたら対処出来るか不安がよぎる。


     

「た、大変よ」

「どうした」

「アイテムボックスに入れておいた野菜がちょっと萎れてしまっているわ」

「ゲームの時みたいに時間停止とは行かないか」


「お姉ちゃん、次元倉庫の方はあんまり変わってないよ」

「きっとアイテムボックスは時間遅延に変わって、次元倉庫は時間停止

の仕様が変わってないんじゃ無いかな?」


 

「アイスクリームが溶けちゃってる、これも移しておかないと」

 俺の話は耳に入っていないか? 八角牛はどうやって運ぶかな。


「アベル兄さん、神様にもらった『機動馬車倉庫』に入れておいてくれない」

「これか、入るかな?」


「入った!」

「やっぱり、神様のスキルはCBOのスキルの上を行っているのね」


 生き物がそのまま入るとは、確かに素晴らしいスキルだな

ギルドハウスの倉庫の代わりにと思って取得したんだが。


「マリア、帰るぞ」

「ちょっと待って、まだ整理が出来てないのよ」

 どれだけ、生ものをアイテムボックスに入れてたんだよ。


 ◇



 街へ戻るとすでに夕方になっていたが、『機動馬車倉庫』の存在を

知られるわけにはいかないので、街の手前で外に出してギルドへ向かった。


「この牛、この期に及んでまだ逃げようとするよ」

「普通、人に捕まったら逃げようとするから」


 マリアはまだ食材が傷んだショックから立ち直れないようだ。


「ジャジャーン、ギルドに到着」

「ベス、気分が良さそうだな」

「だって、林の中を全力で走ったから、楽しくて」


 そうだったな、俺より早く入院していたんだから、9才で既に闘病生活

なら逃げる牛を捕まえるのは、楽しい遊びに見えるかも知れない。


「お嬢ちゃん達、八角牛の捕獲依頼だったのかい?」

「ええ、そうよ」

「こっちの厩舎で預かろう。これが預かり証だよ」

「ありがとう」



 二階の受付に着くとかなりの人が酒を飲んでいた。


「お姉さん、八角牛3頭捕まえてきました。これが預かり証です」

「本当に生け捕りにしてきたのね」

「もしかして、出来ないと思っていましたか?」

「ごめんなさい、貴族様の急な依頼でね、冒険者全員に声をかけていたのよ」

「ではランクの方のお話は……」


「問題ないわ、八角牛を数時間で3頭生け捕りに出来る実力があるなら合格よ

今日からランクFの冒険者ね」

                

「お酒を飲んでいる方も捕まえてきたんですか?」

「あれはやけ酒ね。捕まえられたのは貴方たちを含めて3パーティね

今回は依頼主がお金持ちだから、報酬は金貨6枚出せるわ

依頼はあと3日あるから、良かったら明日以降も頑張ってね」


「やった!」

 小金貨が1万アルトだから、60万アルトといった所かな?

 さすが貴族様といった感じだ、この価格が通常の買い取り価格なら

八角牛をメインに生計を立てる事も可能なのだが?

   

                

「報酬の金貨6枚とギルドカードね。これは魔力認証のカードだから

本人とギルド職員以外は1分以上持つことが出来ないわ。ギルド提携のお店で

買い物をする時に使ってね。各店舗独自の割引きがあるから」


「「「ありがとうございます」」」    

                 

 さすが、2万アルトするだけはあるな、認証システムがあるのか?



 帰り際に日本なら1万円程度で買える服を2着購入したが、俺が7万アルトで

マリアとベスが合計で25万アルトかかった、やはり服は高い。



俺たちは久しぶりに丸1日外で過ごして、お腹も減った状態で宿屋の

食堂に来たのだが。


「お姉ちゃん、病院の食事と同じ感じだよ」

「市場の食堂は小学生の頃に行ったファミレスにちょっと劣る程度

だったんだが」

「パンは良いとして、お肉とスープも冷めているわね」


 これで大銅貨4枚(800アルト)は高いな、外れっていうやつか。


「食費は3日分払ってしまったが、明日からは夕飯だけでも外で取るか?」

「それがいいよ!」

「明日からの報酬次第という事にしましょう」

「わたし、頑張る」


 部屋に戻ってベスはすぐに就寝、長い病院生活のお陰で9時には熟睡状態だ

マリアは習慣になっている日記付け、俺はスキルのチェックだ。


「マリア、いま気がついたんだが、俺のレベルが1になってるんだが?」

「今頃気がついたの」

「知っていたのか?」

「ステータスはレベル上限の100の時と変わってないわ。レベルだけ

強制的にレベル1にされたみたいね」

   

 レベル制限のあるスキルは使えるし

ステータスも変わりが無いがレベル1か?


「もしかして、レベルを上げれば更にステータスが向上するのかな?」

「私はここへ来る途中にゴブリンを20体倒した時にレベル2に上がって

HPが200,MPが100加算されて、各パラメーターも上がったわ」


「その上がり方はCBOの10倍じゃないか

つまりレベル100になればステータスが今の10倍になるという事か?」


「この世界のレベルの上限は100と決まっている訳じゃないけどね」


 確かに運営は神様だ、上限を設けるとは思えないな

力が均等になったら争いが起きにくくなるからな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ