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第二十二話:魔法の鞄


 眠り羊の狩りは思ったよりも、多くの群れがいたようで

俺達以外に捕獲を成功させるパーティが存在しなかった事もあり

2週間でかなりの数の捕獲に成功

そして、5頭で星金貨1枚のままで納品を続ける事ができた。


「やりました。パーティ資金が星金貨10枚を超えました」

「でも最終日は、本当に5頭しか捕まえられませんでしたね」

「眠り羊の群れは狩りつくしたみたいね」

「アベル、何頭持っているの?」

「えっと、174頭いるぞ」

「納品した分が、70頭だから

合計で244頭も狩ったことになるのね」   

      

「みなさん、お金の分配方法を変更しませんか?」

「ミリアが変更したいなら、構わないぞ」

「何か案があるの?」

   

「明日から5月ですし、パーティ資金で全てのやり繰りをしては

どうかと思うんです」

「それで本音は?」

「パーティ資金の……一部をお小遣いに」

    

「ミリア、お小遣いを全部使っちゃったのね」

「まだ、5千イリス残ってます」

「それだと、高級店で食事もできないじゃない」

   

「マリア、今はどうやって管理してるんだ?」

「アベルが前に言ったとおりに稼ぎの8割をパーティ資金に充当して

残りのお金で家の管理費や小物などの買い物は済ませているわ」


 今のやり方の方がみんなお得なハズなんだが、マリアの頭の中で

計算しているやり繰りだから、不信感を持たれる可能性もあるか?


「わかった。依頼で得た金額は明日から全額をパーティ資金にしよう」

「アベル、それでいいの?」

「その方がマリアも楽だろう」

「それはそうだけど」


「月の終わりに翌月の食費と家の管理費と装備の費用を差し引いて

残った資金の3割を6人のお小遣いとして分配するという案でどうだ?」


「そんなに渡して良いんですか?」

「不満をそのままにしておくと、不信に繋がるし

依頼中に言い争いになったら、命に関わるからな」

         

「それでいいです」

「それだと、食費と管理費はいくらになる?」

「概算だけど、食費は1日に小金貨7枚位で1か月で金貨30枚位ね

管理費はその時になってみないと判らないわね」


「しかし、自炊しているのに1ヶ月で金貨30枚は使いすぎですね」

「ミリアと猫族のみんなが食べるからね」


「ニーナ達への給料はどうなってるんだ?」

「渡していませんね」

「奴隷だが、一生懸命に働いてくれてるんだ。出すべきじゃないか」

「普通は支払いませんが。住み込みの職人見習いで、月に小金貨3枚程ですね」

            

「みんなは職人じゃないし、ニーナとノーラは月に金貨1枚で

家族には1人小金貨6枚でいいんじゃないか?」


「住み込みで月に44万イリスですか?」

「ミリアが不満を言うくらいだ、猫族でも不満が出ると思うぞ」


 この辺は奴隷制度に慣れているか、慣れていないかの差が出るな。

       

「そうね、元値は金貨2枚だし、やはりお給料は出すべきね」

「ニーナさんの料理は美味しいですしね」

  

「では食費に金貨40枚、管理費に金貨20枚の合計で黒金貨6枚を

パーティ資金から月末に出そう」


「ミリアの装備はどうします」

「もう修復は出来ないと言われたんだろう」

「そうですね。勧められた力の鎧は黒金貨8枚で剣が黒金貨3枚で

盾が黒金貨4枚だそうです」


「本当に盾役の装備は高いわね」

「防御力が生命線だからな」

「合計で星金貨1枚と黒金貨5枚か」

「仕方ないわね」

         


「ではミリアの提案のお小遣い争奪戦だな。マリアいくらある?」

「パーティ資金は1億1千2百万イリスね」

    

「そうなると、……1人金貨45枚と小金貨5枚だな」

「ではみんな、お金を渡すわね」

「家族でも貸し借りする場合はみんなに相談する事。外食する時も

自分の分は自分で出す事になるから、管理はしっかりしてくれよ」


 誰が一番始めに、元に戻してくれと言い出すかな?


      

「金の問題も解決したし、魔法鞄(マジックバック)の製作をしよう」

「アベル、その事だけど、私も図書館で本を読んだんだけど

最終的には裁縫師と時魔道士がいれば、作れるんじゃないかしら」  

 


「……そうだな、サポートクラスについては記載されていなかったし

クラスチェンジにも触れてなかったな」


 本に書いてある事を鵜呑みにしてはいけないという事だな。

  

「もう細工道具も材料の眠り羊の羊毛にガマ蛙の血に白金に虹糸もあるのよね」

「よし、俺とマリアで作ってみるか?」

「それが良いと思うわ」

「ではみんな解散。買い物するなり、遊びに行くなり、好きに過ごしてくれ」


「ミリア姉様、装備を注文にいきましょう」

  

「マリア、作業室に行くぞ」


  

 ガマ蛙の血は新鮮な方がいいから、後回しだとすると

先に白金を鞄に含ませるか。


 錬金窯に鞄と白金を入れて5分、取り出して色が変色する前に

鞄にしないといけないのか。


「マリアはサポートクラスを聖魔道士にしてくれ」

「「【シェルシェ・クラスチェンジ】」」


 よし3分経ったな。


「マリア、早めにこの血をつけた針で虹糸で鞄に模様を縫い込んでくれ

この針は折れやすいから、気をつけてくれ」 

「わかったわ、【セイクリッドクリス】」

「【ダークネスアビス】、【時間逆行波】」

「【5連縫い】」



   

「出来たわね」

「成功が12個に失敗が10個か。初めてにしてはこんなもんだろう」

「どうも、血が固まるのが早かった気がするの

ベスにも手伝ってもらえば、かなり失敗を減らせると思うわ」


「これでも6つは伝説級だからな。いくらになるんだろうな?」

「初めは王級の鞄から売らない?」

「その方が安全かも知れないな」


 ベスを加えれば神話級の鞄も出来るかも知れないな。


「それなら、売りに行きましょう。相手は決まっているんでしょう?」

「マリン商会だな。ラズベリー伯が子爵時代から付き合いがあるらしい」

         

          


 中央エリアの教会の側だから、あの赤い屋根の店か。


「すいません、ラズベリー伯の専属冒険者ですが、商品を売りたいんですが」

「商品な何ですか?」

魔法鞄(マジックバック)を6個ですが」


「しばらくお待ちください」

「いい感じのお店ね」

「そうだな、店員は若い人が多いし活気もあるな」

    

    

「お待たせしました、この店の店主のエマと申します」

「初めまして」

 店主は女性だったか、女性相手に商談なんてできるかな?


「応接室へどうぞ」

  

「いい部屋ですね」

「お褒めにあずかり光栄ですわ」

「(生け花よ)」

「(珍しいな)」


「良い品ですね。『物品査定』のスキルを使っても宜しいでしょうか?」

「何か問題があるんですか?」

「製作してからの年数や制作者の名前と現在の所有者等が判明してしまいます」

「それなら、今日つくったばかりですから問題ありませんよ」


「では、【物品査定】」


「本当に製作日は今日ですね。制作者はアベルさんとマリアさんで

所有権はアベルさんとなっていますね。そして品質は王級ですか……」            

 物に関しては鑑定様の同等以上か、そういえばスキル授与というのを

神社でやっていたな。


「どうでしょうか?」

   

「試させて頂いて宜しいでしょうか?」

「どうぞ」

  


「水をいれてもこぼれない、氷を入れても溶けない、重さも感じない

肝心の容量は……」


 研究熱心な人だな、もう30分もやってるぞ。

  

「どうですか?」

「これは素晴らしい。私の持っている鞄の40倍以上の容量とかなり強力な

魔法効果がかかっていますね」

   

「ご納得頂けて幸いです」

 

「そうですね、1つ星金貨で240枚で如何でしょう?」

「えーと……」

  

「やはり安かったですか? それなら星金貨300枚では」

「売ります」

「マリア」

「ありがとうございます」


 良かったんだろうか、合計で180億イリスか。

     

「今は手持ちが800枚分しかないので、ギルドの手形で宜しいでしょうか?」

「手形ですか?」

  

「そういうことでしたか。確かにこれほど大きな金額では目を付けられますね

2週間程度で捌けると思うので現金でお支払い致しますわ」 


 税金対策をしてくれるようだな、18億も取られたらたまったもんじゃない

さすがに貴族の出入り商人だけはあるな。


「ありがとうございます。出来れば通貨はレオンでお願いしたいのですが」

「構いませんよ」


 よし、今はレートが1.2だから36億イリスも増えるな。

    

「ありがとうございます」

「こちらが代金になります。ご入り用の物がございましたら

ぜひ当店にお越し下さい。勉強させて頂きます」  

「その時はおねがいします。それでは失礼致します」




 見事に売れたな、たとえ商会が3倍以上で売っても

これだけ手に入れば十分だな。


「アベル、あれの原価はいくら位なの」

「そうだな、20個分で眠り羊を抜くと金貨10枚程度だな」

「そうなの、1万8千倍なのね」

「でも眠り羊と労力を考えれば900倍程度だぞ」

        

「みんなには言えないわね」

「そうだな、言えば労働意欲を失うだろうな」


 

 家に明かりがついていないな。

「みなさん、お帰りなさいませ」

「何故、明かりを付けていないんだ」

「節約の為ですが」

「そこまで節約しないでいいぞ。目がいいのが魅力なんだからな」

「かしこまりました」

「それと話し合った結果、みなさんにお給金を出すことになりました

金額はニーナとノーラが金貨1枚で4人が小金貨6枚ね」

「ちょっと安かったか?」

           

「いえ、お給金を頂けるとは思っていなかったので」

「頑張ってくれれば、増やすから」

「忘れておりました。昼間ラズベリー伯の使者の方がおいでになって

お手紙を預かっております」

「ありがとう」

  

 

  

 みんな帰って来たようだな。

「ただいま」

「楽しめたか?」

「沢山、買い物したよ」

 400万イリス以上あるんだから、なくならないとは思うが。


「ラズベリー伯から手紙が来たわ」

「今度はどんな依頼ですか?」

「それが、竜の肝を取ってきて欲しいそうよ」

「秘薬でも作るんでしょうか?」

「命令みたいなもんだから、行かない訳にはいかないな」


「場所は北西に馬で5日位の山らしいわ」

「そうなると馬がいりますね」

「馬はいくら位なのかしら?」

「そうですね、金貨8枚位からで、良い馬は黒金貨3枚程ですね」

「ちょっと馬車を安く売っちゃったわね」

「あの時は、置き場所が無かったんだ」


「どうする、借りるという方法もあるけど」

「借りるにしても、1日で小金貨5枚程度は取られますよ」

「4頭で金貨2枚は高いわね」

 

「今後も使う事になりそうだし、借りるより買った方がいいわね」

 

 今度は厩舎もあるし、馬と馬車のどちらがいいかな?


お読み頂きありがとうございます。


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