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森へ

スペランツァとしてこの世界に生まれて6年。友達と一緒なら村の外に出てもいい年になった。

初めは戸惑ったこっちの常識にも慣れた。赤ちゃんから記憶があるのと急に思い出すのとではやっぱり対応とかが違うと思うんだよね。植物が動き回るなんてこっちでは当たり前のことだし。


「父さん、母さん、行ってきます!」

「スペラ、薬の材料も頼むぞ」

「分かってるよ。じゃあ、行ってきます!」


父さんからいつものように必要な薬の材料を忘れないように念を押される。

自分がうっかり忘れて後で苦労する大変さを一番よく知っている父さんは私には口うるさく言ってくる。私に大変な材量集めを任せてしまっているため、負担を少なくしようとする親心からくるものだってことも私は理解している。

前世で看護師を目指していた私からしたら村医者の父さんは憧れの存在だ。そんな父さんの手伝いができるのならば材量集めなんて苦じゃない。それに、父さんから薬の作り方を教えてもらえるのも今の私にとってはとても楽しみなこと。咲の時は勉強苦手で全然覚えられなかったのに。


「スペラ、早く来いよ!」

「おはよう。スペラ」

「ノンノ、カイル、おはよう」


村の井戸で私を待っていてくれたのは幼馴染のノンノとカイル。この村で私と同い年なのはこの二人だけ。

だから一緒にいる時間は誰よりも長い。森で食料とかを集めるのに半日かかるから。


「遅くなってごめんね」

「いい。どうせおじさんにまた色々と頼まれたんだろ?」

「うん。正解」

「今日は何を頼まれたの?」

「ウォリネア、カンフィオ、メッシリーヌ。あと、可能だったら春の女神の涙」


カイルの問いに答えるとカイルもノンノも苦笑した。

見た目は大根だけど、すばしっこく走り回るウォリネアは子どもの足ではなかなか追いつけない。終わりの見えない追いかけっこになる可能性が高い。

小さな白い毛玉のカンフィオはなかなか見つけるのが大変。粉雪が1つで舞っているようなもの。もう少し大きいカリファナは見つけやすいが質がいいのはカンフィオだから大変だろうがやるしかない。

メッシリーヌはよく木に絡まっている蔦で探すのも採るのも簡単。食料としても使える万能物。

一番大変なのは春の女神の涙。春の女神は気まぐれで気に入った人間にしか涙を与えない。涙と言っても薄紅色の小さな石。それを探す人間は多いけど、女神の気に入った人間にしか見つけられないから高級な材量。私は2回しか見たことがない。


「また大変なの頼まれたね」

「いいの。父さんのお手伝いできるの嬉しいし。春の女神の涙は母さんのためにもなるから」

「一人でやろうとするなよ。俺やノンノもいる。俺たちも協力するからな」

「そうだよ!三人でやれば早く終わるよ!」

「ありがとう!」


私の髪をぐしゃぐしゃと撫でまわすカイルとふんわりとした笑顔を私に向けてくれるノンノ。

いつも私を手伝ってくれる大好きな幼馴染。

今生でも友人には恵まれた私はきっと幸せ者だと思う。







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