どうやら転生したそうです。
本の虫、一途、負けず嫌い、努力家、ちょっとズレてる、面倒見がいい、お人好し。
それが私の友人が口を揃えて言うこと。確かに私は読書が好きだし、ダンス部に入っていたからセンターを実力で奪い合う戦いもしてきた。何より、厳しいと有名なダンス部で中高6年間辞めずに続けて来たのだから負けず嫌いだし、努力家なのだろう。自覚は無いが、たまに会話が噛み合わない時もあるからズレていると思う。困っている人がいると放っておけない性分で、直ぐに声をかけていた。そのお陰か友人にも先輩にも後輩にも恵まれたと思っている。
そんな性格の私だからだろう。
もし、轢かれそうになった子供がいたらどうする?
そんな在り来りな質問に何もできないとか、救急車呼ぶとかと答えていたけど、私だけは自分で助けるっと答えた。やらなかったらきっと後悔すると思って私はそう答えていた。そして、それは現実になった。
子供にかなりのスピードで向かっているトラック。運転手は意識がない。子供は恐怖の余り固まっている。私は迷わず子供を突き飛ばした。
その時に感じた重い衝撃。
叩きつけられる体。
息が詰まって呼吸さえままならない。
私は遠くで聞こえる声を聞きながら意識を手放した。
目を覚ますと安心したように微笑む男性と今にも泣きそうな女性が目の前にいた。
「よかった!スペランツァ、目を覚ましたのね」
「ルイメリア、ありがとう。俺にこんなに可愛いお姫様をくれて」
テンション高めで話す二人に置いて行かれる私。
誰!?私には椎名咲って名前があるんだけど!?間違っても外人には見えないし。
「うー、あー!」
反論しようと思い声を出したけど、明らかに言葉として成り立っていない。声も高いし、赤ちゃんの喃語みたい。
私が考え事をしていたらルイメリアと呼ばれていた女性に抱き上げられた。
「どうしたの?スペランツァ、お腹すいたの?」
「いや、君の美しさに見とれたんじゃないか?」
「マタハリのかっこよさかもしれないわよ?」
ごめんなさい。どれでもないです。自分の現状を把握できずに混乱してます。赤ちゃんだってこととあなた方が今の私の両親だということまでは把握しました。・・・頭は追い付きませんけども。
赤ちゃんの私の言葉なんて理解されるわけもなく、二人は談笑という名のいちゃつきを娘の前で披露している。仲が悪いよりは数倍もましだと思うし、いい人たちなのだろう。
私に親を選ぶ権利なんてないし。二度目の人生、気長に生きようと思う。