青空の少女
やっとスタートラインです。これから景気良く走り出したいので応援よろしくお願いします。
草木が青く茂っている。草原を駆け抜けた風が太郎をすり抜けていく。
(あぁ、きもちいい。春の風が心地良い。春はいい。春も、草木も風や天気までもがみんな友達だ。)
と幼い太郎は地べたに寝転がりながら、空を見上げ、村の人たちを思い出した。
(村に帰っても、子供は僕一人だしなぁ。)
そんな時だった。耳を疑うような言葉が太郎のところに飛び込んできたのは。
「ねぇ、そこでなにしてるの?」
大人にしてはだいぶ幼かった。声のトーンや言葉遣いが。
太郎は、ハッとなって声の主の方に顔を向けた。
見えたのは、一人の少女だった。顔立ちも姿もやはり幼い。
(僕と一緒くらいかなぁ)
そう思い、太郎は恐る恐る尋ねた。
「君は、誰?」
「私は、サキ。今日、パパについて来たの。それで、パパはお仕事があるから、一緒にいられないって。でも向こうは大人しかいなかったから。」
だから彼女はここに来た。太郎はそれが自分にすごく似ているような気がした。
それが原因なのか、二人は短い時間で驚くほど、仲良くなっていて、日が暮れる頃には、もうお互いに遠慮なんて言葉はなかった。
それから、先にの父さんの仕事でうちに来る日は、毎回二人は最初に出会った草原に日が暮れるまで遊んだ。クサカンムリを作ったりして。
ある日、太郎はサキに随分会ってないことに気づいた。だから、サキの父さんと一緒に話しをしていた太郎の父さんに聞いた。
「いつ、サキは来るのかなぁ」
太郎はもう楽しみで仕方なかった。いつなのか、いつなのかと、楽しみと期待しか、頭の中になくて、見るからにそわそわしていた。
だから、耐えられなかった。いつの間にか、家を飛び出してしまっていた。どこかにこのやり場のない気持ちをぶつけたくて、走った。走った。走った。
「サキィ!サキィ!どこにいるの?ねぇ、ねぇ、ねぇってば」
疲れ果て、足が止まり、誰もいない黒い空に向けて叫ぶ。肩で呼吸している間をもって。
太郎はしばらく立ち尽くし、やがて膝が折れ、地面に手をついて、どす黒い空から放たれる雨にまるで捨てられた子犬の様に打たれていた。
それから太郎は家に帰っても、父にサキのことは聞かなかった。それが伝播する様に村の人たちも何も言わなかった。
あの日から少したった日、雨はもう止み、今日は雲一つない青空だった。
周りは草原ばかりで、ここには、太郎の友達がたくさんいる。
花や木、過ぎていく風と友人と会話するように戯れている、そんな時だった。
「ねぇ、そこでなにしてるの?」
懐かしき声、もう二度と現れる筈の無い人声を聞き、振り向いた。
そこに立っていたのは、暗い暗い絶望を明るい希望に変えるような眩しい少女だった。
応援よろしくお願いします。